『スターシップ・トルーパーズ ~インベイジョン』感想という名のプロパガンダ | まじさんの映画自由研究帳

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日本人は『宇宙の戦士』が好きである。
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こと、ロバート・A・ハイラインの原作小説を読んだ事のある者には、特別の思いがある。コレには理由がある。原作に登場する機動歩兵が纏うパワードスーツ。ハヤカワ版の挿絵が余りにカッコ良く、当時のSFファンに衝撃を与えた。小説の挿絵からプラモデル化され、パワードスーツは独自の世界観に発展するまでに至る。機械を纏って戦う戦争と言うコンセプトは、その後『機動戦士ガンダム』のモビルスーツに引き継がれ、日本のロボットアニメに大きな影響を与えた。未熟な青年が戦争の中で戦士として成長して行く物語は、現在においても描かれる、普遍のテーマである。その原典とも言える『宇宙の戦士』は、我国にとって、特別な作品なのだ。
ハリウッドに先駆けて、アニメで映像化したのも我国、日本である。
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1988年『ガンダム』でおなじみのサンライズがOVAとして、全3話を製作している事を、我々日本人は忘れてはいけない。勿論作中では、小説版と同じデザインのパワードスーツを纏って戦う姿が描かれており、主人公の若きジョニー・リコが纏い「缶詰めの中に押し込まれたような閉塞感」を味わう。

1997年、ついに鬼才ポール・バーホーベンの手によりハリウッドで映画化!
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タイトルも原題『スターシップ・トルーパーズ』そのまま!主人公もジョニー・リコ!やはり彼の入隊から描かれている。バグとの苛酷な戦闘を描いたこの作品は、大きな話題になった。押し寄せる不快な姿をした大量のバグたちとの血みどろの戦闘、プロパガンダのブラックユーモアあふれる演出。その全てが『宇宙の戦士』だった。が!しかし…ない!ないのだ!神器とも言えるパワードスーツがっ!!この大胆なテキストレディには驚愕した!なぜカットしたのかという問いに、監督はあっさりと「予算だ」と我らを一刀両断にした。しかし、続編の製作が発表されると、次作への期待が膨らんだ。しかし…

2003年に、バグのデザインをした特殊効果担当だったフィル・ティペットが、超低予算(前作の1/10以下)で、駄作と悪名高い『スターシップ・トルーパーズ2』を撮った。
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続編と謳っているが、前作との繋がりはなく、同じ世界観だが、別の戦場での戦闘を描いている。予算もない訳だからして、当然、パワードスーツなんか出てこない。この映像作品はアメリカでは劇場公開されず、テレビ作品として放送され…多くのファンを失望させた。だが、そんな作品でさえ我国は、翌2004年、日本はこの作品を劇場公開した。なんと涙ぐましい話。このシリーズを少しでも盛り上げようとする熱い魂まで感じられる。勿論、この作品が劇場公開されたのは、我が日本のみであると云う事は、むしろ誇るべき事実である。

2008年、前作の失敗を省みず、前2作品で脚本を書いたエド・ニューマイヤーが、自らメガホンを取り『スターシップ・トルーパーズ3』を撮った。
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しかも予算はなんと『~2』の3倍!(でも1作目の半分以下)そんな中で、今度は制作総指揮にポール・バーホーベンを再び迎え、主人公はすっかり成長して大佐となったジョニー・リコに戻った。彼はもう、戦場の英雄である。ブラックユーモア溢れるプロパガンダも戻り、全宇宙規模でヒットしているという戦意高揚の歌まで披露してくれる。そして、満を持して、ついに!ぼくらのパワードスーツ「マローダー」が登場するのだ!!カッコ悪いけどw。アメリカ人のイメージなんだと思うけど、厚い装甲、重量感、武器満載ってのが、彼らの強さのイメージなんだね。ちっとも動きそうな感じがしない。でも勿論、作中はマローダー小隊とバグどもをコテンパンにする戦闘シーンもある。短いけどw。それでもパワードスーツが登場した事で、ファンは狂喜したのだ。

そして、2012年。再び日本人スタッフの手によって、フルCGアニメとして製作された。
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『スターシップ・トルーパーズ インベイジョン』である。えぇ~?CGアニメ~?と思ったが、ファンとしては、骨を拾ってやらねばならない。よし、観よう。監督は『アップルシード』シリーズの荒牧伸志。メカデザイナー出身の監督で高い映像技術を駆使した作品に定評がある。彼だけに、やはり、ダサかったマローダーは、軽量化とか高機動化なんかを盛り込んで、飛躍的にカッコよくなりMkⅡとして登場!もう、前作の面影はありません!あの小説版のデザインにも遠いけど、そこは日本のアニメーション。ちゃんと動きを想定したデザインなのである。だから、動く!早い!強い!やっぱりメカは日本製だね!
また、キャラクター設定も日本らしく個性豊かだ。伝説的英雄だったジョニー・リコはついに将軍として登場する。そして同期の優等生型女艦長。同じく同期生の自信過剰なエリート。反逆罪に問われて逮捕された英雄。暗い過去を持つ女スナイパー。怪力自慢。物静かな哲学家。カンフー野郎。などなど…脇役まで、個性に溢れて実に日本のアニメらしくて面白い。
そして、美しい女戦士は、ちゃんとおっぱい出す辺りもこのシリーズを周到している。CGだけどねw そんな彼らが闘い、みんな、ちゃんと死亡フラグをたてて死んで行く。故郷の話をした奴、大丈夫って言った奴、人の命を救った奴、セックスした奴…。もう、それを追ってるだけで楽しいw
この作品の楽しさはそこにある。
大切なのは、作り手が持つシリーズへの愛だ。この作品にはそれがあった。過去の続編全てを肯定した上で続編を作っている。それが素晴らしい。今回は戦記色を強く出した作品になっており、皮肉を含んだプロパガンダなどは出てこない。それは、我ら日本人にはできない表現だからであろう。ならば、戦記を魅せると言う、得意のジャンルを選んだに違いない。それは正しい選択だ。だが、残念ながらバグへの愛は足りなかったようだ。バグの表現は1,2作目の方が圧倒的に高い。見せ場と恐ろしさがよく出ている。だが『~インベイジョン』のバグは、恐いと言うより、硬い。ゲーム的な表現でしかない。その点が残念だった。
だが、メカと戦記を楽しめる宇宙戦記の正史である事は間違いない。
そして戦いは続く。今も、遠い星々で英雄たちの伝説が生まれている!明日の英雄は君かもしれない!さあ、君も地球連邦軍に入隊して市民権をGETしよう!