日本の未来へのストーリーを考える。松田まなぶの論考が新政界往来誌に掲載。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 新政界往来誌の本年2月号に松田まなぶの論考が掲載されました。
 題して、「日本の未来へのストーリーを考える」。
 シリーズもの「-日本新秩序へ-松田まなぶの国力倍増論」の第5弾です。

 新しい国際経済秩序形成への動きが急速に展開する中で、日本が世界の中でめざす自国の姿は何なのかを論じてみました。
 日本は世界の課題解決を先導することで、21世紀をリードする国になれる。特に、健康、食、環境(新エネルギー)の3つは、日本が生み出す新しい価値創造の分野だと思います。
 自国の未来を語る政治を実現したいものです。

以下は、この記事の全文です。

―日本新秩序へ― 松田まなぶの国力倍増論
第5回 日本の未来へのストーリーを考える

松田政策研究所代表 東京大学大学院客員教授 前衆議院議員 松田まなぶ


 昨年は、国際経済秩序の再編に向けた具体的な動きが注目された一年だった。
 太平洋地域ではTPPが大筋合意されたが、ユーラシアには一帯一路構想を、太平洋には米国との「新型の大国関係」を提唱する中国は、欧州主要国を巻き込んでAIIBを設立、人民元のSDR入りも話題を呼んだ。
 人口減少に直面する日本が活路を求めるべきアジア太平洋地域にも、中国が主宰する秩序が形成されかねない勢いだ 。

 中国は今は経済的に苦しくても、世界の人口の5分の1を擁する大国である。
 消費経済化、サービス経済化が進み、やがて米国を経済規模で追い抜くとき、中国がそのマネーパワーと相まって世界の価値形成を主導する時代が来るかもしれない。
 その中にあって、日本は何を売り物に国際社会でいかなる存在を築いていくのか。新年を迎え、日本の「新しい国づくり」を考えてみたい。

世界でめざす自国の姿は何か

 実は、このテーマは、自主憲法の制定にも国家戦略の構築にも共通するテーマだ。いずれもが、日本が目指す国家アイデンティティーとは何かを考える営みにほかならない。
 国の全体設計について「戦後レジームからの脱却」を果たし、日本の潜在力を引き出す新たな「設計」を考える。その設計思想を有権者を前に競い合うのが本来の政治の役割だろう 。

 筆者はかつて国家戦略形成の方法論に従って日本の将来像を考える議論づくりを、言論NPOで行ったことがある。
 それは国内外の中長期的潮流と日本の強さに立脚して「可能な限り理想に近く、かつ現実的」な日本国のアイデンティティーを描き、それと現実とのギャップを日本の強さの徹底活用で埋めるための選択肢を見極めようとする議論だった。
 そこでは各界の有識者の見方を集約し、日本が戦略的に活用すべき自国の強さとして、日本経済の強靭性(潜在力)、大衆文化の国際的影響力、科学技術や環境分野での先進度が抽出された 。

 そして、これら強さの根本にある日本の本質的な強さについて、筆者は、「層が厚く均質で勤労を価値とする中間層」、「質の高い巨大マーケット」、日本が人類共通の課題に世界で最初に直面する「課題先進国」になったこと、そして日本人の「課題解決力」の4つであると考えた。
 これらの徹底活用で、日本は人類社会の課題解決を先導する「世界のソリューションセンター」を目指すことで「経済成長革命」を起こす。これまでの「大国」の如く軍事力や経済力などの覇権的パワーではない、独自の形の影響力を日本は構築する 。

 それは第一に、人類共通課題は何かを定義する「アジェンダシェイピング」であり、第二に、世界が参考にしようと思うような課題解決モデルを構築する「モデルビルディング」であり、第三に、各国の人々と同じ目線で課題に向き合うことで、そのモデルが世界に伝播する「コラボレーション」である。
 これら3つを冠した新しいタイプのリーダーシップを世界で行使する国を日本は目指すべきだと考えた 。

 歴史を振り返ってみても、日本は持ち前の「課題解決力」を発揮して眼前の危機をチャンスに変えることで、世界一を達成してきた国である。
 敗戦後の危機と戦後復興という課題を世界一の高度経済成長の実現で乗り超え、公害問題への対処で世界一の環境技術を誇る国になり、石油ショックを克服することで世界一エネルギー効率の高い国を実現した 。

 その日本は、いま、人類が初めて経験する未曾有の超高齢社会という危機に直面している。
 21世紀を通して、いずれ世界中が高齢化する。日本が世界に先駆けて、世界がうらやむ先駆的な「活力ある超高齢社会の運営モデル」を生み出せば、日本は世界の課題解決を先導することで、21世紀をリードする国になれる。

日本「三種の神器」に特別な使命

 もちろん、高齢化以外にもこうした課題は数多い。
 例えば、世界有数の地震大国であることが突きつける防災、復興という課題もそうだ。東日本大震災の直後に被災地を訪れ、その惨憺たる文明破壊の様相に愕然とした筆者は、日本民族は人類の長い歴史の中に独自の位置づけを有する特別な使命を帯びた民族なのではないか、とすら感じたものだった 。

 21世紀に入った人類社会は、これまで世界を主導してきた西洋文明が行き詰まり、20世紀の右肩上がりの成長が世界に投げかけた「人類社会は存続可能なのか」という問いに肯定的な答をどう出すのか、地球と共存する文明のあり方は何なのかというテーマを突き付けられ、大きな曲がり角に直面している 。

 人類の諸課題に対して日本ならではの解決を示す日本民族の創造的な営みを、世界が求める時代になっているのではないか。これを「日本新秩序」と名付けたい。
 アメリカン・ウェイ・オブ・ライフで世界のアメリカ化が進んだ20世紀という、モノの大量消費が価値だった時代から、今度は日本が21世紀型の価値を創出する時代に入り、それが「世界新秩序」の形成に向かう。
 そのような価値として次の3つを、日本が生み出す「三種の神器」として提案したい 。

 第一に、「不老長寿の国」。
 「健康」という価値を軸に生涯現役、年齢不詳社会を築く。超高齢社会の経営の答は、高齢世代を責任感を持った活動的な人口層にすることにある。技術面でも社会の仕組みの面でも、様々な創意工夫やイノベーションがこれを支える。水素の活用に一つの答を見出した某実業家は、健康テクノロジーは日本人こそが最先端を担える分野だと言う 。

 第二に、「豊芦原(とよあしはら)瑞穂(みずほ)の国」。
 「食」の価値を軸に、大地、水、空気や生活の質まで包摂する。例えば、土壌の質の改善で美味しく健康に良い食材を大量供給する技術や仕組みが生まれようとしているが、これは世界的に類まれな豊かな土壌が農を育んできた日本でこそ可能な「新結合」であろう 。

 第三に、「日(ひ)出(いずる)国(くに)」。
 「環境」という価値を軸に、日本は循環型の新エネルギー体系の構築で世界をリードし、聖徳太子以来の独立自尊の国を目指す。日出ずるところの東方に広大な海洋の恵みがある日本だからこそ、可能性がある。

自国の未来を語る政治を

 かつて、日本は「黄金の国ジパング」と呼ばれた。それが大航海時代を生み、世界で最初のグローバリゼーションをもたらした。
 いま日本は、世界のグローバリゼーション秩序の扇の要の位置にいる。
 TPP、RCEP(ASEAN+中国を含む6か国)、日・EU間のEPA、いずれの巨大経済圏にも属するのは日本だけだ。これは世界新秩序の形成に向けた日本のチャンスでもある 。

 しかも日本は、14年末で三六七兆円もの世界ダントツ一位の対外純資産国だ。
 これは、日本が潜在力を国内で発揮し切れず、世界の金融市場に莫大な貯金が溢れ出ている国であることを示す。
 おカネはある。日本の三千三百兆円の金融資産ストックを、「三種の神器」をもって国内での有用なマネーフローへと蘇生し、資産を単なる債権(財産に対する請求権)から資本(財産そのもの)へと転換することで、真の豊かさ、本物の「黄金の国」を実現する 。

 以上は、日本のストーリーについて筆者が試みた仮説的提案であるが、多くの国民が自ら、日本の未来への道行きを考え、夢を語る国であってこそ、自主憲法制定と持続成長可能な国づくりが実現すると思う。そのための創造的な選択肢を有権者に示すことができる政治を創ることも、日本の課題であろう。