☆モザイク胚の取り扱いについて | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

NGS法になってからモザイク胚が見出されるケースが増えてきたようです。モザイク胚の取り扱いについての実際について示した論文が発表されましたので、ご紹介いたします。

 

Fertil Steril 2017; 108: 62(英国)

要約:正常胚と異常胚をミックスしたサンプルを高感度NGS法で分析したところ、0%、20%、40%、60%、80%、100%の区別はどの染色体でも可能なことが明らかとなりました。モザイク胚の移植成績から、異数性モザイク(1染色体:50%、2染色体:45%)部分的モザイク(41%)と比べ、複合型モザイク胚(3染色体以上のモザイク)の妊娠継続率(10%)が最も低くなっていました。また、40〜80%異常のモザイク胚の妊娠継続率(22%)は、40%未満の場合(56%)と比べ有意に低下していました。モノソミーvs.トリソミーのモザイクあるいは全体vs.部分モザイクには有意差を認めませんでした。モザイク胚と比べ正常胚では着床率(53% vs. 70%)と妊娠継続率(40% vs. 63%)が有意に高く、流産率(25% vs. 10%)が有意に低くなっていました。

 

解説:染色体の異数性異常(モノソミーやトリソミーなど数の異常)は減数分裂の際に生じるため女性の加齢とともに増加しますが、モザイクや3倍体や1倍体母体年齢には関与しません。初期胚の段階ではほとんどがモザイクですが胚盤胞になるとその頻度は激減します(異常な細胞群が淘汰されるため)。通常、検査の誤差を加味し、60%を超える場合を異常とし、40〜60%をモザイク40%未満を正常としています。高感度NGSになってから5〜10細胞を分析できれば、20〜80%のモザイクの検出が可能になりました。なお、高感度NGSにはIllumina's VeriseqとCNV-Seqがあり、低感度NGSにはEmbryvuがあります。しかし、低頻度モザイクは、ノイズ(エラー)の可能性もありますので、高感度になったが故に紛らわしいケースも増えているようです。CGH法で正常胚とされ高感度NGS法でモザイク胚とされた胚の38%が着床しますが29%が流産に至ります。一方、高感度NGS法で正常胚とされた胚ではわずか6%が流産に至ります。

 

本論文の結果から、モザイク胚の取り扱いとして

1 異常率40%未満のモザイク胚は正常胚と同じ扱いで良い

2 3染色体以上のモザイクは、移植の優先順位を低下させる(この場合、モノソミーとトリソミーは同様にカウントする)が、1染色体異常と2染色体異常は同じ取り扱いで良い。

 

下記の記事を参照してください。

2017.1.24「☆ASRM:PGS特集 その1 モザイクの取り扱い