ASRM(米国生殖医学会)からPGS(着床前スクリーニング)に関する特集が掲載されました。第1弾は、モザイクの取り扱いについてです。
Fertil Steril 2017; 107: 6(米国)
要約:従来のCGH法と比べ、NGS法では染色体の細かい部分の異常が明らかにされるようになりました。そのため「モザイク(正常と異常の混在)」検出頻度が高くなり、正常、異常、モザイクの3つのパターンに分類されることになりました。分割胚(初期胚)の段階でもモザイクが多いことは知られていますが、およそ50%は自己修復機構が働き、胚盤胞の段階で正常化する(異常細胞が淘汰される)ことがわかっています。また、胚盤胞のNGSでモザイクと判断された場合でも、2回目の細胞採取ではおよそ半数は正常の結果が出ます。これにはサンプル採取のエラーの関与もあり得るでしょう。一方で、モザイク胚から健常児の出産は数多く存在します。したがって、モザイク胚の取り扱いには、慎重にならざるを得ません。国際PGD協会(PGDIS)が2016年夏にまとめた報告書では、下記の取り扱いを推奨しています。
モザイクモノソミー:移植可能(X以外)
モザイクトリソミー(1,3,4,5,6,8,9,10,11,12,17,19,20,22,X,Y):移植可能
モザイクトリソミー(2,7,13,14,15,16,18,21):移植保留(優先順位低下)
解説:モザイク胚の取り扱いは、悩ましいところだと思います。PGS自体が発展途上にあることもその一因でしょう。PGDISが示した取り扱いの根幹は、生存可能なものを排除するという方針です。モザイクの場合には、正常と異常のどちらに転ぶかわかりません。おそらく、多くの場合は正常化すると推察されますが、万一異常だったとしても大丈夫なように、生存不可能なものは移植するというスタンスに立っています。X染色体のモノソミー以外のモノソミーは着床しません。トリソミーは着床しますが、生存する可能性のあるもの(2,7,13,14,15,16,18,21)を排除しています。あくまでもひとつの指針ですが、かなり参考になると思います。
なお、部分的異常の取り扱いについては、次回の記事に記載します。