AMHの遺伝的因子 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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小児癌女性の治療後の最大の問題は卵巣毒性による早発閉経です。もちろん使用された抗癌剤の種類にもよりますが、個人差も大きくあります。これまでに早発閉経に関連していると報告されている遺伝子群が7種類あります。本論文では、小児癌治療に成功した女性でこれらの遺伝子を検査したところ、1つの遺伝子の多形性がAMH低下および閉経年齢低下との関連を示しました。

Hum Reprod 2013; 28: 1069(オランダ)
要約:18歳以下で癌と診断され、治療が奏功し、治療終了後少なくとも5年以上が経過した176名の白人女性を対象とし、早発閉経に関連していると報告されている7種類の遺伝子群の多形性とAMHを検査し、4年~41年経過観察しました。BRSK1領域のrs1172822の多形性がAMH低下および閉経年齢低下と相関しました。また、放射線治療とアルキル化剤使用がAMH低下と相関しました。

解説:早発閉経に関連していると報告されている7種類の遺伝子群は、ARHGEF7、BRSK1、MCM8、SRD5A1、PCSK1、IGF2R、TNFです。このうちBRSK1が小児癌治療に成功した女性の卵巣予備能に関連していました。このような方については、治療前の卵子凍結や卵巣凍結などを積極的に考慮する必要があるかもしれません。

また、2013.3.15「癌の治療による卵子のダメージ」では、アルキル化剤の抗癌剤を用いた場合が最も卵巣のダメージが大きいことを示しました。2013.3.21「抗がん剤の影響(卵巣毒性)」では、アルキル化剤を含めた抗癌剤の種類を紹介しました。卵巣予備能にはアルキル化剤がやはりキーポイントになります。