☆妊娠中のビタミン摂取 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

妊娠中のビタミン摂取は、欧米では積極的に勧められています。本論文は、妊娠中の総合微量栄養素摂取(ビタミンA, B1, B6, 葉酸、鉄、銅、亜鉛など十数種類)は胎児の体重増加につながることを示したメタアナリシスです。

CMAJ 2009; 180: E99
要約:2008年までに掲載された論文から、妊娠中のビタミン摂取についてデータが正確に取られている13編がメタアナリシスの対象となりました。総合微量栄養素摂取群(ビタミンA, B1, B6, 葉酸、鉄、銅、亜鉛など十数種類)とプラセボ群(偽薬群)あるいは鉄&葉酸摂取群を比較しました。低出生体重児の出生頻度は、総合微量栄養素摂取群で、プラセボ群と比較して0.81倍、鉄&葉酸摂取群と比較して0.83倍でした。出生児の体重は、鉄&葉酸摂取群と比べ、総合微量栄養素摂取群で54g大きい結果でした。早産の頻度では3群間に有意差は認められませんでした。

解説:本論文がまとめた13編の論文は、アフリカ、東南アジアからの報告が多く、栄養状況は日本とは異なる可能性があります。しかし、だからこそ逆に妊娠中の総合微量栄養素摂取は大切であることがわかります。アメリカでは妊娠がわかるとすぐに大量のビタミン剤が処方されます。私は留学中にその光景を見て、アメリカ人の食生活ではビタミン不足になるから致し方ないと思っていました。現在の日本の食生活も欧米化していますので、満足のいくビタミン類が摂取できているかというと疑問です。最近、出生児の体重低下が日本の統計でも示されています。鉄&葉酸だけでは不充分ですので、その他の総合微量栄養素も何らかの形で摂取する必要がありそうです。