「寺院」の壁張りも表具屋の仕事の一つです。 | 三重中勢の旬便り・・第二章・・ (津の表具師がお届けするARTなお話)

三重中勢の旬便り・・第二章・・ (津の表具師がお届けするARTなお話)

三重中勢地区(津市)にて、表具師を生業としています。地元に生かされている管理人の視点が捉えた、「旬」の話題をお伝えします。 ☆コメントは内容を確認後に公開させていただきます。

弊店が手がけている主な表具屋としての仕事は「ふすまの新調・張替え」「障子の張替え」と「掛軸・屏風などの表装」「各種額装」などですが、時には寺院などの「和紙」を壁に貼る場合も表具屋が代々伝えられた技によって施工させていただいてます。


<施工前の状態です・・>


工程①

下地のシナベニアの継ぎ目や周囲部分に「鳥の子紙」で目張りを施しウケ紙と呼ばれる薄い紙の周囲3ミリほどに薄い糊をつけて壁に張っていきます。

効果としては、下地のアクの影響を防止し、下地との間に空気層を設けることにより保湿性や調湿性が期待できます。


<30cm×45cmほどの大きさに切ったウケ紙を約260枚ほど張りました。>


工程②

一度目のウケが仕上がってから一日おいて2度目のウケを張ります。

2回目にはより上質な和紙を使い、断面に「喰い裂き」という技法を施し紙の継ぎ目が目立たないように注意して作業を行います

効果としては、更に保湿性、調湿性に優れた風合いのある仕上がりが期待できます。



<25cm×40㎝ほどの大きさに切った和紙を約300枚ほど張りました>


工程③

2度目のウケが仕上がってから更に一日おいて本紙の金紙を張ります。

壁の寸法に合わせて一枚ずつ裁断した和紙を湿らせ、周囲に濃い糊をつけて(全体には薄い水糊をつけます)張って行きます。

継ぎ目部分は約1㎝ほど「重ね張り」にし、重なる部分の段差を目立たないように重ね部分を紙やすりで薄くします。

作業中、もっとも神経を使う工程で高度な技術と息のあった作業が要求されます。


<今回は「洋金平押し紙」を使用、「箔目」があるので継ぎ目が目立たないように作業します>


画像をご覧いただいてもお分かりの通り、今回のような作業の場合は弊店一軒だけでは施工が困難なため、組合のネットワークを通じ、近くの同業者の力を借りています。

(ちなみに、1度目・2度目のウケ張りも一日で仕上げないといけないので手伝っていただきました)


<綺麗に張りあがりました>


工程④

最終工程です。

充分に金が落ち着いた頃(今回は4日おきました)に「四分一」と呼ばれる木を壁の回り部分に打ち込んでいきます。

効果としては、壁面部分に緊張感を持たせることと共に壁紙の剥れ防止の役割が期待できます。


<艶のある黒い「四分一」でグッと引き締まった空間が出来ました>

<完成です。>


和紙による壁貼りは熟練の技能が要求され、手間も掛かり、金額的にも一般のクロス張りに比べて割高にはなりますが、何層もの和紙を貼り重ねることで日本の四季の気温(湿度)変化にも順応し、呼吸する壁が精神にも肉体にも優しい効能を与え、落ち着きのある空間を創りあげます。


今回のような寺院の壁張りにはもちろん、一般のご家庭の壁に施工することも可能ですので、和紙による壁紙に関心がある方はお近くの表具師にお問い合わせを!