8、洋服(その6)
おばあさんは、「これは、色が薄くて汚れ目が目立っていかん。それに、少々大きくてもアゲをすればよか。」と云って、黒っぽい地に白いカスリのような模様の服、おばあさんが今着ている着物の柄とそっくりのを選んでいるのです。
私は、がっかりしました。もうどうでもいい。
こんな、おばあさんの着物を縫い直したような洋服ならいらない。
それに、縁日で買うなんて恥ずかしい。
おばあさんは、一人で決めてお金を払うときは「ちとまけなさい。」と値切りました。
おじさんは、「それは、儲けも何もない目一杯の品だから」と云うのに、おばあさんは、「十銭くらい、引いてもよかろ」と云いました。
「まあ、仕方がない、くちあけだから」と云って十銭引いてくれました。
私は、買ってもらった洋服を持って、おばあさんのあとについて歩きました。
帰りは何も見ないで、急ぎ足で歩きました。
おいしそうなアメも、赤えんどうの塩ゆでも、、ただ見るだけでした。