「君、朝鮮で色々な珍しいもの見てきたんでしょ?お話してよ」
「そうね、いろいろあるけど、玄界灘を船で渡って、釜山に着いた時はね、モッコを担いだ朝鮮人が、船から降りた人達のあとを追いかけて来て『荷物を持たせて』としつこく云うの。荷物を持ってお金をもらいたいのよ。
でもお父様が、決して荷物を渡してはいけないと云っていたから、だれも渡さなかったの。
渡すと荷物を持って行ってしまうと云うの。釜山の宿屋に二、三泊してから汽車で京城へ行ったのよ。
京城の町では、白いヒゲを生やしたおじいさんが仔馬に乗って、長い長いキセルをくわえて、ゆったりと町を歩いているし、女の人は、赤ちゃんを背中の下の方におんぶしているのよ。支那人もたくさん見たけど、纏足(てんそく)をした女の人を良く見たわ。」
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