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64、父の死(その4)



いつもの車屋さんが、ひざ掛けを手に持って私を待っていました。

私を抱いて、車に乗せてひざ掛けをかけて幌をしめて車は坂道を駆け下りました。

私は、いつもおばさんの膝の上でしか車に乗ったことがないので、一人では淋しくて車の中がとても広いような気がしました。

南大門通りに出ると、車屋さんはまっすぐに早くかけ出しました。

明り取りの窓から見える景色は、廻り灯篭のようにぐるぐる廻っていました。

門を入って内玄関に着くと、おばさんが出てきて「まさちゃん・・・」と云いました。

おばさんの目は真っ赤でした。