64、父の死(その3)


一時間目の事業が終わると先生は

 「二時間目は外に出て体操しよう」と云いました。

 みんな、喜んで外に出ました。

二列に並んで運動場を何回も走りました。

 何回目か走ったと時、校舎の方から小遣いさんが小走りにこちらへ来るのが見えました。

 先生のそばに走り寄って、何か云いました。

 先生が大きい声で

 「千田さん」と呼びました。

 私は、

 「ハイ」と返事をして、なぜか胸がドキッとしました。

 先生は未だ来たばかりで、生徒の名前がわからなかったのでしょう。

 返事をした私を見て私のそばに来ました。

「お父さんが病気だからすぐ家に帰りなさい。門のところに車(人力車)が迎えに来ているから。」と云いました。

 私は急いで校庭を横切って門のところへ行きました。