ひとめぼれのふしぎ。

じっくりと考えて、そうそうあれと合わせて・・とか、こんな料理を、とか概ねの目安をつけて、うんうん、使える使える、と、買うものも多いのですが、

一目見て、あぁ！と・・瞬時に連れて帰る！と決めることが、たまにあります。

器のこと。

正真正銘のひとめぼれってやつです。

そこで、はたと・・このひとめぼれとは？と考えてみました。たとえば洋服やアクセサリーでもたまーにあるわけのですが、それは、わ！かわいいっ！というモノそのものへのときめき。あくまでもそこがスタート。

しかし、こちらはいかんせん、私の側の問題で似合わない、ということがあったりします（増えてるし、泣）。それでも若い時は無理やり連れ帰ったりしていましたが、

今は、もっと似合う人と出会う方がいいよね、自分に言い聞かせ、潔く諦めるようにしています。

ただ、器の場合は、ちょっと違う気がするのです。

それもふたつの大きな違いがある！

一つは、まず、ひとめぼれしたら、万難を排して、必ず連れて帰るということ、笑。

それはなんでかな？と考えてみると、一目ぼれが、モノそのものへのときめきとはちょっと違うからだな、と、気づきました。ふたつめの違いです。

器のひとめぼれの正体は、とりもなほさず、ああ、この器に、料理を盛りたいっ！という、ムラムラとわきあがる強烈な欲求なのであります。

だから一刻も早く連れ帰りたい。

もしそこに、キッチンやらあったら、すぐに作って盛りたい、盛りたい、そうそう、

あんな料理を、こんな料理を・・・と、たったひとつの器が、いろんな、時にはまったく新しいレシピまで連れてきてくれる、そんなすごいパワーにひきつけられる、それがひとめぼれ。しかも瞬時に。

むろん、だから、そうそうしょっちゅうあるものではありません。好きな器にはよく出会っても、ひとめぼれは、なかなかない。それに、そもそも可及的速やかに料理を盛りたいという欲求は、いわゆる作品的、装飾的な器にはわきません。

今年に入ってからは、1度。

見た瞬間、ほんとに目の端に入った瞬間と言ってもいいくらいのとこで、わ！何か作って盛りたい・・と。それから、にじりよって、じっくりと見て、触って・・・お店の方が話かけてきましたが、シカトです、もう私はＭＹ台所へ。

まず、牛肉のたたきに、こんもりの夏の薬味をたーーーっぷりのせたいな、ラタトウユもいいな、たけのこを炙ってシンプル（その時、春だった）に横に真っ白な塩をそえよう、夏野菜の焼きびたしを、あえて万願寺だけにして・・・、イカとアボカドのフリットを真ん中でぱっきりわけて盛るのももいいな、食感がちがって楽しいな、そうそう冬はブリのうーりゅうを・・・と。

しばし妄想の果て、やっとこさ、作家さんのお名前や、説明や、そして肝心なお値段を。ちょっと現実にひき戻されましたが、靴やバッグを思えば、ね？！

それは八木橋昇さんという方の器でした。何とも言えない美しい色、肌の具合です。台座？に特徴があります。それにしても信楽に一目ぼれしたのははじめて。

よく作家さんが、料理をのせて欲しい・・と話されるのを聞きます。それはなんだかうれしい言葉。私の方は、おいしい料理を生み出す器があるんだよな、と思います。器にインスピレーションをもらう、無性に料理したくなる、そんな器。

そして出会った時のことを絶対に忘れない、そんな器。

いつか、我が家は、ひとめぼれの器だけ！しかない、そんな風にしよう、と決めています。ぜんぶばらばらでも、まったく問題なし、です。

さて、八木橋さんのその器。さっそく、暮しの手帖の撮影で、最初に思いついた牛肉のたたき、夏の薬味こんもり・・に使いました。出会いの日、わくわくと一人で盛りあがった通り、いい感じ。カメラマンさんも編集者さんも、そんな風に思ってくださったみたいです。

来週あたり、　~~でぶの~~太った入梅いわしが入ったら、カリッと香ばしく、フレッシュのタラゴンやタイムで焼いて、モダ～ンないわしにして盛りたいな、と思っています。