repentanceⅢ 「作られた英雄」


敵軍に、特殊能力を持った兵士で組織された部隊があったとしても


人間の持つ能力は万能では無いと思われる


人間である限り、必ず弱点も存在する


どうやら、特殊能力には適正が存在していて


例えばテレパスは念動力が使えない、念動力者は瞬間移動が出来ない


適正は一人に一つが殆どらしい


これは言わば持って生まれた才能に等しいものだと認識出来た


その才能は訓練する事で更に磨きがかかり武器として使えるようになるまで


相当の期間が必要になる事も判ってきた


これは向き不向きのモノだろうか


だとすれば、訓練次第では他の能力も身につくかも知れない


実際二つ以上の能力を有する存在もいるらしい


しかし、そういう特異な者達は、寿命が異常に短くて


殆どが三十代まで生きた者はいないと言われている


ここまでは、前回の戦闘でただ一人生き残った能力者の捕虜から聞き出せた


「しかし、一体どんなマジックを使われたのですか」


将軍ミッフェは21歳という若さで将軍となっている


私が見る限り軍人としては将来有望な逸材だ


私は彼を抜擢して自分の補佐をさせている


そのミッフェにも、今回何故彼女が祖国を危険にさせてしまう程の機密情報を


私に漏らしたか判らないらしい


「敵軍にしては死活問題となる情報です、拷問も自白剤の投与もされていないと聞きましたが」


「兵士であっても、彼女も人間であるという事だろう、彼女の家族の事を調べ上げて、親族もろとも根絶やしにすると彼女の親族の写真を見せながら言ったら、そこまでは話してくれた」


ミッフェは最初驚きの余りフリーズしていた様子だ


有能とは言え彼も、人間である事を考慮にいれるべきであった


「人道的な問題はありますが、効果的な方法ですね、しかし頭では理解しても、私の心は複雑で葛藤が起きてしまいます」


「たかが一民間人を暗殺する為に軍事予算を割くつもりは無い、つまりハッタリだ」


私がそういうと、まるでホッとしたような顔を覗かせた


どうやら、彼は私を尊敬する人物という偶像の対象にしているようだ


人道的な問題を気にするのは人間としては美徳と言える長所かもしれないが


軍人としては、弱点として彼を窮地に立たせるかもしれない


捕虜となっている彼女はミラネー・エグゼンスト少佐


瞬間移動の能力を保有する、特殊能力者部隊の一員だが


彼女は能力だけに頼らず体も鍛え抜いていた


軍人としては当然のことかも知れないが


特殊な才能がある場合そればかり鍛えて他の所が疎かになる事も少なくない


上官に恵まれたのか、それとも彼女が努力家なのかは


今の所判らない


ただ、家族を愛する心は強いようだ


家族と呼べる存在のいない私には理解出来ない感情ではあるが


それが強みにも弱点にもなる事は認識している


今回は弱点として利用させて貰った、


その為、こうして私が傍を離れても逃げていない


しかしそれでも、特異体質に関しては依然として黙秘を続けている


黙秘ではなく、彼女自身もあまり知らない可能性を感じてきた


能力者の力を武器として頼りにしているグパザルーン共和国にとって


私のような特異体質の存在は脅威となるから


特殊能力者部隊の兵士にすらその全容は知らせていないのだろうか


或いは、軍上層部ですら、


特異体質の存在の全容は把握し切れてないのかもしれない


いずれにせよ、私のこの体質は武器として使える事は理解出来た


それに


持って生まれた才能が大きく作用する能力者が


それを武器として使えるようになるまで訓練を受け


兵士として使い物になるまでの年月を考えると


グパザルーン共和国でもそんなにいるとは思えない


まず第一に能力者の絶対数は少ないだろう


しかし、たった12人で三つの基地を占拠出来るのだから


人数が少ないといえど、侮ることは出来ない



私は決して好戦的な性質を持っている訳では無い


物心つく前から軍人として訓練され、


戦う事が全てだと植え付けられてはいるが


生まれ持った体質までは、改善できなかったようだ


戦地に向かえば勝つ事にのみ集中するが


戦地を離れると、戦争を回避して自国を守る方法を考えている


まったく矛楯すると自分でも自覚しているが


もしかすると私は戦術よりも戦略の方に嗜好が傾いているのかも知れない


戦略の適正があるのかは、試す機会がないので未知数だけれど


そこで、グパザルーン共和国とは


全面戦争になる前に、講和する道が無いか無意識に模索している


元帥といえど一軍人が考える事では無い


私は首を横に振った


軍人が決して国の政治に関与してはならない


私は任務を果たす事が全てである


この原則は自分に課している


しかし、道を示す事は出来る


それが今回のグパザルーン共和国侵攻である


「今回の作戦は、迅速さが鍵となる、疾風のごとく敵陣に斬り込み、三つの基地を占拠する」


私は異例のテレビ放送を前に兵士達に檄を飛ばした


特殊能力者の侵攻は隠されているものの


たった数時間で三つの基地を占拠された事は


非戦闘員である国民にとって、恐怖を感じるのに充分な出来事だから


こうして私を英雄に祭り上げる事で、国民に安心感と希望を与え


恐怖による暴動の危険を回避する方策に出たのだ


だから、わざと大袈裟に英雄らしい演出を試みた


実に短絡的でクダラナイ方策であったとしても


今の所、現実的で有効な手段が他には見つからないのだから


このハッタリに乗る事にした


「私は奪われたものは取り返せと軍事訓練校で教えられた、三つの基地を奪われたのなら、敵国の三つの基地を占拠する事で、この屈辱を取り返す」


兵士達は歓喜の声をあげた


まったく滑稽な演出だと自分でも思うが


どうやら私の演説紛いの決意表明は功を奏したようで


国民の殆どが歓喜の声を上げたらしい


こうして国民の歓喜の声に見送られ、


グパザルーン共和国侵攻部隊は祖国を後にした



つづく


repentanceⅡ 「モンスターの影」


repentanceⅠ「frozen spiritを持つ者」


第二十七話 「革命児の心」



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ヾ( ̄o ̄;)いやいや


ちょっと中途半端で話が途切れそうなので


少し短めに斬ってしまいました


次回はかなり、過激な表現になりますので


不快に思われる方は是非スルーして下さいね


もちろん、ご存知と思いますが


出てくる国も出来事も、全てフィクションでございます


現実の何者とも関係ありません(--。。


まる☆


追記、


友人に大笑いされながらのご指摘がありました


字の間違いなどが、宝探しゲームのようにあったとΣ( ̄ロ ̄lll)


修正しましたが・・・ボロボロですね(--。。


慌てて書くのは、止めようとおもいました(゚ω゚;A)


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