repentanceⅠ「frozen spiritを持つ者」




いつの頃からだろう


自分が人間では無いと自覚し始めたのは


物心ついた頃にはすでに戦闘訓練を強いられ


特に頭脳面で優秀な成績を収めた為に


特別戦術参謀コースを定められた


もちろん、兵士としての戦闘技術も同時に訓練されて


私は文武両方に長けた特異な戦士となった


それから16歳で前戦に出兵する事になる


作戦参謀として21歳になるまで友軍に39も戦勝へ導いた功績から


最年少で准将になった


更に25歳には、レムリアン国との激戦で壊滅寸前まで追い込まれた我が軍を


逆転勝利に導いた功績により


これも史上最年少の元帥になったが


我が国の国民で私を本心から賞賛する者は


百人にも満たない現実を知る事になる


私がどんなに戦績を重ねたとしても


この国の英雄にはなり得ない


その根拠は、私の出生に起因する


私は本来奴隷として売られた日本人が生んだ子供だったからだ


DNA鑑定から


私は純粋の日本人であると判明した


私の生物学的な親はどのような経路でこの国に売られて来たのかは


他界した彼女に聞くすべは無い


ただ彼女は私の家系に関する情報が書き込まれた書物を遺品として残した


けれど日本語が判らないため


私はそれを形見として持っているだけだ


物心つく前から引き離されて、軍事訓練をさせられていたため


彼女に関する記憶がない


元々人間では無い私には


親に対する気持ちなど微塵もなかったので


自分のルーツなどに興味などなかった


ただ、如何に戦いに勝つか


その事のみが私の全てだと自覚していた


特別に争いが好きなわけでは無い


しかし、よそ者である私が戦績をあげ続けていれば


よからぬ摩擦は自然と生じるもので


私は幾度も窮地に立たされた


部下が思い通り動いてくれないのは日常で


私はそれを考慮に入れて作戦を練らねばならなかった


それでも、常勝無敗を繰り返していると


次第に人々の嫌悪は驚異に変わっていく


次第に私を恐れて誰も近づいて来なくなった


恐怖で支配する者で、恒久的に栄えた者はいない


しかし、私は永遠というものを信じてはいないから


その恐怖のイメージを利用する事にした


私はただ、任務を果たすマシンになりきる事にした


一切の感情も必要ない


僅かに揺らぎのような人間の起伏も


論理的にコントロールする事が出来たので


勝つためには手段を選ばなくなった


人間では無い私にとって


人間の感情は理解は出来るが


共感する事は一度も無かった


時として感情は爆発的な力を発揮するが


作戦を立案する者にとって邪魔な存在になる


冷静な判断が出来なくなる可能性があるからだ


私にはそんな人間の感情が認められないため


現地で仲間の兵士が目の前でバラバラになったとしても


冷静に対処する事が出来た


そんな戦い方を繰り返していくうちに


いつしか兵士達の間で私の事をfrozen spiritを持つ者と呼ばれるようになる


作戦に支障が無ければ問題無い


むしろこれは喜ばしいイメージとして利用する事にした


そんなある日、


隣国であるグパザルーン共和国との戦争が勃発した


国力も乏しい半島の小さな国だと我が国の上層部の者達は侮っていたため


連戦連敗をしてしまい


7000人の兵士達が消えていった


いずれの戦いも相手の三倍の兵力で戦い壊滅的な大敗を期したのだ


私は他の任務をしていたが


本国に呼び戻された


敗戦が続くと兵士の士気も落ちる上に


国民が不安に駆られて行く


そこで、兵士達の士気を高め国民に勝利の希望を与える


英雄の存在が必要になってくるのだ


その栄誉ある任務を与えられたのは


事実上常勝無敗である私だった


大半の国民は納得していない招かれざる作られた英雄でも


今の恐怖の状況下では、私の恐怖が返って頼もしく感じるらしい


私は今まで感じた事の無いくらい歓待された


もちろん、奴らの心の根底は違う方向を向いている事は認識している


毒をもって毒を制す


この際その感情も利用させて貰う事にした


本国に帰還して最初に行ったのは


グパザルーン共和国の情報である


今までの戦跡を辿る事をするのは当然のことなのだが


敗戦を調べても


まるで我が軍の作戦をあらかじめ知っていて


それを逆手に取られるものばかりだったから


これでは我が軍の特に上層部に敵国のスパイが存在しているとしか思えない


案の定軍の上層部は疑心暗鬼に陥っていて


指揮の統率性も充分に機能していない


仮に上層部にスパイがいたとしても、私は動じることは無い


なぜなら


私を潰そうと軍上層部の何人かは敵に私の作戦を漏らした事もあったからだ


もちろん、そんな戦いも私は勝利した


部下が敵に情報を売る事も少なくなかったので


私はカリスマ的に作戦を指揮するしかなかった


「スパイがいるなら、それを前提に闘えば良いのです、全く問題はありません」


私の言葉を深く心に突き刺さる者は少なくない


なぜなら彼らは何度も私を潰すためにスパイまがいのことをしてきたからだ


だからこそ


この窮地に私を人選したのだろう


一体どうやって闘うのだという疑問の声が本来は起こるところだろうが


私の戦績はそのような過酷な状況下である事を


知らない者はこの軍上層部には一人もいなかったため


全面的に私を支持することになった


私は平静無表情だと自覚している


感情の起伏が殆ど無いため結局一貫して無表情のままだから


今の上層部達はさぞかし不気味に映った事だろう


私の戦術はすでに始まっている


私は部下も上官も誰一人信用はしていないから


信頼される事の有利性は理解しているが


敢えてその有利性を無視して勝ち続けてきた


今回はそのスタイルが最大の武器となるだろう


もし本物のスパイが、ここに存在しているのなら


ただ、私はそうは思っていないのだ


敵国であるグパザルーン共和国の手際が必要以上に良すぎる


スパイがいるにしても


後半はスパイを前提に変則的な作戦を立てたに違いない


その場で作戦変更もありうるのだ


当然その作戦を敵国に漏らしたとしても


余程の頭脳の持ち主でもいない限り戦跡に粗が見えてくるはず


ところが、奴らはまるで、その作戦変更を予測していたかのように


動きに一切の無駄もためらいも無く攻め込んでいた


私は読心術やオカルト紛いな話を一切信じないが


今回の戦いを検証する度に


テレパシーのようなもので作戦を読みとって


瞬時に作戦を立案し実行したとしか見えないのだから


それを信じたくなるというものだろう


或いは天才と呼ばれる者が存在していて


相手の変更経路も全て予測した上で作戦を立案しているのかも知れない


前者であれば絶望的な戦いとなるが


もし後者であるなら


相手が人間である限りつけいる隙は見つけられる筈だ


私は当初後者だと思っていた


一番厄介な相手がいるとしたら


自分と同じ人間では無い者だ


一抹の不安は過ぎったものの、その可能性は極めて低いと判断した


ところが、その不安は意外なカタチで現実の物となった


私がこれから相手にする軍隊はある意味人間とは呼べない存在だった


私は生まれて初めて超常的な能力者の存在を認識することになる


その話は後に譲る事にしよう


グパザルーン軍との戦いは意外と早いものとなった


我が国の前線基地に侵攻してきたのだ



つづく


第二十七話 「革命児の心」



初めから読む


もっと初めから読む



**************************************************************


すみませんです(--。。


どうしても外伝を書きたくなりました


物語のクライマックスで


少し長めの外伝を書くなんてΣ(@@;)


でも、ここ暫く


今回の主人公の思いが押し寄せてきて


もの凄く切なくて辛い話なのですが


こんな深い悲しみと心の傷を背負っている人物だとは


私自身ビックリしています


ある特定のキャラの思いが強く押し寄せてきた場合


今描いているキャラ達とのコンタクトを取るのも困難になる事もあります


キャラとコンタクトを取らないでは描けない体質なので


まず、このキャラの思いの丈を描いてやらなければ


そんな衝動に駆られてしまい


今回先に書くことにしました(--。。


続きを気になる方は


許してくださいね(TωT)汗


はてなマーク


この主人公は誰なんだってΣ( ̄ロ ̄lll)あせる


勘の良い方はもう判っていると思います


そんな難しい人ではありませんよ


なので敢えて今回本編の誰なのかは描きませんね


ってかチョンバレかΣ( ̄ロ ̄lll)


まる☆


ペタしてね