芸術の秋 | Paris暮らし
超一流の方達の仕事の仕方は、時間がぴしっと正確ですね。
大演奏家の方の自宅に6名マスタークラス形式のレッスンで14hに集合と言われて、
生徒達は、15分くらい前から何度も呼び鈴を鳴らしたり、
携帯を鳴らしたりしてしまったらしいのですが。

14時ぴったりに教授の自宅マンションの扉が開き、
「15分前から私の邪魔をしていた方は誰でしょうか。
 14時と言ったら、必ず14時にここに立っていて下さい。
 私には5分と無駄な時間はありません。」と叱られてしまいました。
日本式に、前もっての訪問は、かえって失礼になる場合があるので、
注意が必要です。

そして、レッスンが始まったら、
先生の携帯電話は鳴りっぱなしでしたが、
緊急の相手以外は、マナーモードのまま、
ちらっと確認して、そのままレッスンに集中されていらっしゃいました。
緊急の国際電話やどうしても出なければならない時は、
申し訳ない緊急の用件で。と言って席を立たれましたが。

あたりまえといえば、あたりまえの話ですが、
多忙の方の5分が、どこまで貴重かを目の当たりにして、
なるほど・・・・・この集中力で、音楽に向かわれているのだな。と、
感銘を受けました。

音楽に集中していらっしゃる最中は、
音楽以外のことは、一切入り込めない空間・・・。
頭も体も音楽だけに集中している時間は、神聖さを感じるほどです。

エッフェル塔の見える美しいマンション。
大きなピアノが向かい合わせに置かれ、
落ち着いた絵画と、美しい芸術書だけが並び、
居心地の良いソファーだけのある広いサロンでの
音楽だけに満たされた空間に身をおき、
身が引き締まる思いでした。
言ってみれば、ここにいるだけで、
心が音楽で満たされていくような空間。

大演奏家の近くにいて一番感じるのは、
この人は、人類の宝だなということです。

この体と頭から、これだけ美しい音楽が
滝のように降り注ぐのですから。
全てのレパートリーを暗譜されていて、
「あれはやった?この曲は?」と、どんどん曲の冒頭部分を演奏しながら、
生徒に宿題を指定している様子は、
もう、本当に神々しく。

この人がこの世からいなくなったら、
この音楽が聞けなくなってしまうのかあ。
この手が音楽を奏でる時間は限られているなんて、
なんだか信じられないし、もったいない。
と、ふと、不思議な気持ちになってしまったほど。
人間は永遠には生きられませんから、
どんな天才もいつかは、人生を閉じるわけで。
だからこそ、後進の指導に力を注いでいらっしゃるのでしょう。

世間一般では、有名であること、
成功していることに注目されてしまう傾向があるかもしれませんが、
何が一番すごいのかというと、
一人の人間の中に、これだけすごい才能、能力があるということでしょう。
まるで、エベレストや、巨大な湖が
一人の人間の中に入っているようなもので、
いくらでも音楽が溢れて来るのですから。

さ、私も毎日2時間でいいから、先生みたいに
音楽だけに満たされるひとりきりの
時間と空間を絶対絶対にとろう。
忙しいというのは、ただの言い訳。
やる気さえあれば、どこかで1時間くらい捻出できるはず。
楽器をさらう時間がとれなければ、
移動中に楽譜を集中して読むだけでもいいのだから。

そして、今回のレッスンで19歳の青年に、
「君は、古い小説を読んだ事があるかい?
 ないだろう。ないというのが、演奏にでてしまっている。
 ショパンのこの曲を弾きたかったら、少なくとも
 バルザックの数冊、オスカーワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」
 くらいは読んでおかなくてはだめ。
 世界中の言葉に訳されているんだから、まずは、日本人は日本語でいいから、
 今すぐに読みなさい!来週までに!
 音楽というのは、心の中に描いた感情を表現するためにあるんだ。
 どんな気持ちを表現するのか想像がつかないのなら、
 小説を読んで、少なくとも想像できるようにしておかなければ。」と言われていました。

大変大変。私もちゃんと読んだことがない!
と、慌てて、メモしました。

生徒さんが出された来週までにさらわなければいけないリストは、
ショパンのエチュード、バッハ、ロマンチックの時代から1曲、
ベートーベンのソナタ、現代曲と5曲!
しかも、全部新曲のみ。
今までにやったことのある曲はだめ。
嘘はつかないこと!(笑)と言われていました。
留学生は、楽譜が日本からまだついていないから
明日の朝楽譜やに走らなければ!と慌てていました。
(先生に、まだ楽譜が届いていませんなんて、言い訳は、絶対に言えませんからね。
 やる気がないなら、来なくてよろしいと追い返されてしまいます!)

音楽学生は、優雅でいいですねー。なんて、
なんとなく思われる事が多いですが、
とんでもない!
皆、寝る間を惜しんで、練習しています。
生活もあるし、語学もやらなければいけないし!
新学期、皆本当に必死なので、
みんな、頑張れ~!と見守っています。
そして、私もまけずに頑張ります。

年を重ねると、なかなかこんな風に
人からおしかりを受ける事が少なくなるので、
そうだ!どんどん古い小説を読んで、絵画を見て、映画を見て、音楽を聴いて、
感性の引き出しを増やさなければ。と、思ったのでした。
芸術の秋ですから。

皆様も落ち着いて、良い音楽に耳を傾けながら、
バルザックなんて、いかがでしょう。
良い夜をお過ごし下さい。
バルザックが住んでいた家、記念館になっていて、16区にあるので、
興味のある方は是非。

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スザンヌの真っ白な猫、名前はTournesolトルヌソル。意味はひまわり。
めっちゃかわいい。かわいすぎる。
Paris暮らし

スザンヌの家のはなれ。
今は、アトリエになっているけど、
1階に台所、2階には、シャワールームもあって、
もともとは、別の家として売られていたのを買ったらしい。
ほとんど使っていない空間らしいけど。
すっごく素敵。このガラス張りがまたいいでしょ~。
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