みなさんは、猿夢という都市伝説をご存じでしょうか? こちらに詳細がまとめられていますが、簡単に言うと眠る度に同じような内容の悪夢が襲ってくるというものです。なんでも、読んだ人の中には実際に猿夢を見る人もいるとか……。
そんなバカな、とお思いですか? ところがですね、そうでもないんです。僕が猿夢を読んだのは10年くらい前の話ですが、つい最近ですね、やってきたんですよ。何がって? 決まっているじゃないですか。猿夢ですよ! 細部こそ違うものの、今回は私が体験した猿夢を、お届けしたいと思います。
たまに、「あぁ、これは夢の中だな」と思うことって、ありますよね? その日体験したのも、そんな夢でした。僕は、夜の歓楽街に一人でいます。まったく見覚えのない土地なのですが、なぜか僕は、そこが六本木だと知っています。
目の前には、華やかな周囲とは裏腹に、うす暗く、閑散としたビルが佇んでいます。外観は、旧ラジオ会館に瓜二つ。そこから活気を取り除き、3階建てにすれば、まさしくあのビルそのものです。1階は空きテナントになっており、道路に面した2階へと続く階段への入り口は、シャッターが半開きになっています。
僕は、なぜかその入り口から目が離せません。この先には、何があるのだろう? そんな思いが、僕の心を捉えて離さないのです。好奇心は、猫をも殺す。そんな言葉さえ忘れてしまうほどに、魅入られて……。
古いビルにありがちな急な階段を、ゆっくりと歩いていきます。物音を立てないように、ゆっくりと。でも、歩みは止めません。2階に到着しましたが、ここにも何もありません。殺風景なフロアーに、外からネオンの灯りが飛び込んでくるだけです。
続けて、3階の探索へと向かいます。3階の階段の出口には、防音性とおぼしき重厚なドアがありました。軽く体重をかけて、静かにドアを押し開けます。隙間からは、ほとんど灯りは漏れてきません。どうやらドアの向こうも、うす暗い様子。自然と鼓動が早まります。すうっと軽く息を飲み、覚悟を決めて一気にドアを開け放ちました。
「いらっしゃいませー」
目の前には、黒服の男が待ち構えていました。満面の笑みを浮かべ、顔をこちらに向けながら会釈をしています。
「どうぞ、こちらへ!」
差し出された手の先には、ソファーとテーブルが並び、ミラーボールがせわしなく回ったスペースが広がっていました。これは、もしかして……。
おっパブやん!
なぜ、僕は
「はじめましてー」
(お? ついに来たか)
(ん?)
(ええと……)
(寄生獣?)
僕の目の前に佇んでいる嬢は、どう贔屓目に見ても人類の規格から外れた、なかなかにパンチの効いたルックスの持ち主でした。えぇい、さっきの美女を出せ!
「あ、ごめん。予定思い出したから帰るね」
そそくさと帰ろうと決心した僕は、出口に早足で向かいます。
「えぇ~? 待ってくださいよ~」
ソファーの隙間から、ぞろぞろと黒い影が! その様子、まさしく……
「あ? 腐った死体さん、こんばんは」
なんて会話をする余裕があるはずもなく、僕は逃げるようにその場を後にするのでした。
このナイトメアを皮切りに、以降3回、僕の夢にこのビルが現れているのです。念願の美女に出会うために果敢にチャレンジするものの、当然のように玉砕。最初は夢だし、ハズレでもいいやと思っていたのですが、さすがに精神的にこたえるので、3回目は傍観を決め込むことにしました。が、今度は奴ら、階段を下りてくる始末。「外まで来るのは反則だろ!」と文句を垂れながらエスケープしたのを最後に、この夢を見ていません
幸いと言うか何というか、僕はまだそのお店でのご奉仕は受けておりません。が、次にあの夢を見た時には、いったいどうなってしまうのか……。正直、もう逃げ切れる自信がありません。
あ! 最初に言いましたが、猿夢は読んだ人にも訪れるものだとか。というわけで、みなさんの夢にモンスターハウスが出てきたらごめんなさいね! このブログの読者のみなさまが、最上級のB専であることを願っております……。