市場が見えていない故の迷走なのか | 係争中

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前回「サムライ」について述べさせて頂いたものの


まだこれの市場について触れていなかったので


市場原理の観点から述べさせて頂く。


「剣劇」や「チャンバラ」「武士」などの漫画市場で


現在唯一気を吐いているのは


「バガボンド」ぐらいなものだが


俺が指摘するのは漫画市場の作品での優位性や


付加価値についてである。


「バガボンド」の場合


吉川英治先生が原作という点でも


通常の時代劇漫画よりも優れている。


前回も述べたが本来「サムライ」と云っても


武家社会の時代、日本人口の約九割が農民であり


昔話が根強い人気なのは


ここに由来しているとも云える。


「サムライ」をテーマにするとなると


国民のごく一部に過ぎない特権階級の物語となり


これゆえ庶民の味方


あるいは勧善懲悪でなければ


結局は一部の特権階級層の世界を描写するしかない。


ここで現在の日本経済と市場を鑑みるに


現代人の九割は中間以下の階級層である事から


「サムライ」は結局、特権階級なので


どうしても同じ階級が抱える葛藤や苦悩ではなく


消費者心理的に共感を得る事が困難になる。


感動はしても共感が得られない場合は


その商品は希少的に見えても


大市場に広く知れ渡る事が難しい。


分かり易く云えば20世紀の喜劇王チャップリンになるが


彼の作品に登場する主人公はほとんど貧困層である。


チャップリンの持つ市場は


サムライにおける「エリートの殺し合い」などよりも


市場がはるかに大きい。


また小池一夫氏の作品は劇画ではよく映えるものの


劇画市場そのものが衰退しており


増してや小池一夫氏の「往年のファン」と云えば


やはり主に六十歳からそれ以降の年代になる。


とすれば、それらの年代の人々が


劇画とは云えコミック本を手にして喜ぶ姿が


思い浮かぶだろうか?


ここに市場の把握という致命的な欠陥があると思われる。


増してや全盛期の小島剛夕先生のような敏腕の


作画担当と出会える機会はそうそう無い。


小池一夫氏は故小島剛夕先生と組んでこそ


はじめて時代劇画に於いて


その力を発揮出来るように思えてならない。


この点で、時間を掛けてでも


第二の小島剛夕先生を見つけるまでは


下手にイノベーションのノウハウの無い人間が


相性の合わない作画と組まない方がいいと思う。


往年のファンが望むものを描きたいのか。


新規イノベーションを試みたいのか。


たぶん小池一夫氏はこの点で


葛藤しているのでは無いだろうか。


魔法少女 三満月美々


マジョンナ


ストレンジャーソレントZAN


木偶


これらにはイノベーションが無く


事実話題性も人気も無い。


かと云ってうかつに時代劇画に戻ろうとしても


消費者の市場が見えていない限り


成功は約束されていないのだ。