- ソウォン/願い [DVD]/ソル・ギョング,オム・ジウォン,イ・レ
- ¥4,104
- Amazon.co.jp
色んな物を奪われてしまった少女とその家族の、
再生の物語。
文房具屋を営む母親と、
工場勤務の父親。
そして明るく優しいソウォンは、
極普通の日々を暮らしていました。
お金に苦労することはあっても、
そんなことは子供には関係のないこと。
お母さんは、第二子を妊娠していますが、
旦那さんにはまだ告げていません。
ソウォンは、近所のわるがきたちと、ちょっぴり喧嘩したりしながらも楽しく過ごしています。
ある大雨の日。
母親は送って行けず、ソウォンは一人で学校に。
そこで悲劇が彼女に牙を向きます。
男に暴行されたソウォンは、瀕死になりながら警察に自分で連絡。
血塗れの手が携帯を探すシーンは、
直接的な描写はないものの、その凄惨さはしっかり伝わり、ざわつく心を抑えられません。
警察から連絡をもらった父。
知人から「学校に警察が来てる」と連絡をもらった母。
病院に駆けつけると、
ひどい有様で死の淵にいるソウォンがいました。
狂乱する母親。
父は医師から、
「大腸やらの内蔵が破損され、このままでは命が危ないので、
人工肛門を付けなくては助からない」
と言われます。
嫌と言えますか?
こんな小さい子にそんなもん付けられるか!
そう言えますか?
そしてこの事実が、
ソウォンがどれほどの目にあったのかを想像させ、
暗澹とした気持ちに…。
一命を取り留めたソウォンですが、
病院代は容赦なく家計を襲い、
飛ぶようにお金が消えていきます。
そして、韓国のあの容赦無いマスコミが、
「暴行された少女」ソウォンの取材合戦に血道を上げて行くのです。
ソウォンを抱きかかえ逃げるように病室に戻る父。
しかし彼女の人工肛門から溢れ出る排泄物が、
パジャマやシーツを汚していきます。
父は、ソウォンを綺麗にしたいがために無理やりパジャマを脱がせ、
あふれる汚物を拭こうとするのですが、
その必死さがソウォンに「あのこと」を思い出させ、
ショック状態に。
それ以来ソウォンは、父親のことも怖がるようになってしまうのでした。
ケアセンターの女性は、子供が性的暴行の被害者になった時、
本人だけではなく、家族もケアしなくてはならないと言い切ります。
近寄らせてすらもらえない父親は、
娘の好きなキャラクター、ココモンの着ぐるみを借り、その姿で娘に会いに行こうとしますが、レンタル費用も馬鹿になりません。
…が、レンタル会社の人から「型落ち商品だから無料でいいです」という温かい申し出が!
ソウォンに暴行した犯人が見つかります。
指紋や血液などの証拠も出てきますが、
監視カメラに写ってないとか、証言がいるとか(セカンドレイプを8歳の子供に対してさせろと言うのか!)。
挙句の果てには犯人は酔っ払っていたから…ということで10年かそこらの懲役になります。
ソウォンが二十歳になる前に、
犯人が世間に放たれる…。
思わず犯人に暴力をふるおうとした父親に、
ソウォンがしがみつき制止します。
人前に姿を表して、父を止めるのです。
経済的にも精神的にも苦しむ一家のために、
近所の人達は募金を募ったりします。
正直、放っといてほしいと日本人なら思うかもしれません。
それでも、ソウォンの友人だった男の子が、
「あの日自分は迎えに来た。なのに、つい照れくさくて先に行ってしまった、
あの時自分が一緒に行っていたら…」と号泣するシーンは、
こちらも同じように声を上げて泣いてしまうほどでした。
ソウォンは学校に通えるまでに回復しますが、
彼女の心の中には、
あのことを皆が知っている、そして人工肛門をつけていなくてはならない事、などで不安がいっぱい。
そんな彼女をそっと励ますココモン。
ソウォンは、ココモンがお父さんだと知っていました。
父親に触れられるようになったソウォン。
死んでしまったほうがもしかしたら幸せだったんではないか?と思われるような痛ましい現実。
それでも少女は、前を向いて歩いていきます。
恐ろしくて身体がすくむあの現場も、
他の子達の何も知らないがゆえの素直で残酷な質問も、
ソウォンは、彼女なりにクリアしていくのです。
母親は第二子である弟を出産し。
ソウォンは弟と一緒に笑顔を見せるのでした。
家族の再生の物語は、
まだ始まったばかり…。
彼女の名前は「願い(ソウォン)」
弟の名前は「望み(ソマン)」
願いと望み…それは、かすかな希望の光…。
おしまい
自分の娘が、暴行され一生抱えていかねばならない障害を背負わされたら、
あなたならどうしますか。
この映画、どこにも「実話です」とは書いてない。
けど、実話。
映画のセリフの中で、
「下腹部に酷い損傷があり」
「内蔵が壊死し」
「人工肛門になる」
そんな状態に、どうすればなってしまうのか。
大人ならその凄まじい暴行っぷりに鳥肌が立つのではないでしょうか。
映画では、頭部にも激しい怪我をしてるようでしたが、
実情はもっとひどかったようです。
とてもここには書けない。書きたくない。
韓国映画はキレイ事だけではなく、シビアな現実も描きます。
何をするにもお金がかかる生活。
カウンセラーも無料じゃありません。
人工肛門が溢れて汚してしまうシーンも、
一生それを付けて生きていかなくちゃならない生活も、
わずか8歳の女の子に、神はなんと無情な試練を与えたのでしょうか。
ソウォンが、チャラチャラしてお金や物品欲しさに男について行ったのではなく、
雨に濡れた男を気の毒に思って傘をさしかけた…、
その善意を粉々に砕いた犯人。
そして彼女の善意を誰も認めてくれない…なんでついていった?とすら思われてしまう。
韓国映画の、性的被害の犠牲者が、
ホント~~~~~~~に低く軽く扱われているのがもう、嫌になるくらい腹立たしいです。
ただ、他の映画に比べ、警察官の中にも優しい人がいたり、
周囲の人が温かく見守ってくれたり、
ある意味ファンタジーな人間関係も垣間見えます。
本当はいろいろ苦労したようです。
こんなキレイ事では済まない現実があったようです。
ソウォンが、健気で、痛々しくて切なくて、
抱きしめてあげたいくらい可愛くて。
周囲の人も、韓国なのにみんなキャンキャン吠えなくて、
悲しみや怒りを内部に秘めて行くような…そんな感じ。
障害のある子供に対しての暴行を描いた、
『トガニ 幼き瞳の告発』→■
も。
未成年者の娘を暴行の果てに自殺に追い込まれた母親の悲哀を描いた、
『母なる復讐』→■
も。
何で、卑劣な犯人が軽い刑で終わってしまうねん、と怒りにフルフルしちゃう映画なのですが、
この映画は怒りにフルフルしながらも、
それでも生きていくんだというソウォンの心構えに、
滂沱の涙です。
多くの人に観て頂きたいような、
でもかなりしんどい映画かもしれないなぁと。
「トガニ」ほどではないですけど。
実在のソウォンちゃんは、何度かの手術がうまくいき、
かなり回復しているという話を漏れ聞きましたが、
それが事実かどうかはわかりません。
死んでしまったほうが楽だった…と思ったことも、一度や二度ではないでしょう。
世間の人全員が善意の人ではないでしょう。
それでも、
明日を信じて生きていく彼女の身の上に、
幸多きことを願わずにはいられない。
女として。
母として。
思わぬ傑作でした、韓国映画…すごいっす。ポチっとプリーズ
↓
にほんブログ村