ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法 | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

ジョン・ラセターとともにピクサーを共同設立し、

ディズニー・アニメーションの再建をも託された

エド・キャットムル氏が2年の歳月をかけて自らの

ビジネスパーソンとしてのキャリアを振り返った

一冊です。





『トイ・ストーリー』 『ファインディング・ニモ』

 『カールじいさんの空飛ぶ家』…。長編CGアニメーションを

ことごとく大ヒットさせ、2005年にディズニー社によって買収され、

その傘下となるも、彼らの持つクリエイティビティーは本家

ディズニーをも上回り、不振にあえいでいた

ディズニー・アニメーションの再建も、『塔の上のラプンツェル』や

『アナと雪の女王』の世界的な大ヒットによって

果たされるのです。

本書はその立役者の一人であり、アルヴィ・レイ・スミス。

ジョン・ラセターらと共にピクサー・アニメーションスタジオ

(以下ピクサー)を共同設立し、現在はピクサーの社長を勤めると

同時に、ディズニー・アニメーションの社長をも兼務する

エド・キャットムル氏が、ジャーナリストのワイミー・エラス氏と共に、

2年の歳月をかけて自らの経営哲学をまとめたものであります。

キャットムル氏のことは以前、デイヴィッド・A・プライス著、

櫻井祐子翻訳による

『メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々』(早川書房)を

読んでいたこともあり、その流れで本書を読んだわけでありますが、

質、量共に圧倒的なものがあり、とても読み応えが

あるものでした。

キャットムル氏はもともと、アニメーターを志望していたそうですが、

絵が描けなかったので

「だったらCGなら!」

と言うことでユタ大学にてCGの博士号を取得しており、そのせいか、

ピクサー作品のDVDに収録されている映像得点のひとつでメ

イキングやインタビュー集があるわけですが、その中で淡々とした

口調で静かに自説を語る姿がとても印象的でありました。

そんな彼が、科学者ならではの冷静なまなざしと高度な

分析力を用いて、本書では自らの歩みを語り、そこには

世界最先端のクリエイティブ集団を2つも率いると言う重責であり、

その過程の中でたっぷりとあった成功。失敗。苦悩。反省。

そこから得た「気づき」がつづられておりました。

さらに、キャットムル氏がディズニー・アニメーションの指揮を

執るにあたって、『塔の上のラプンツェル』や『アナと雪の女王』が

世界的な大ヒットを記録したその裏には、澱んでいた社内体制を

大鉈をふるって刷新したからであるというくだりがあり、そこには

流石だなと、つくづく感じ入ってしまいました。

キャットムル氏は常日頃から

「私は自分よりも優秀な人間を雇う。」

とおっしゃっていて、氏と創業時から二人三脚で歩んできた

ジョン・ラセター氏をはじめ、彼の周辺に集うのは個性と創造性に

溢れた人ばかりなのであります。

そして、本書を語る上で欠かせない存在は、ジョージ・ルーカスから

ピクサーの前身となる会社を買い取り、自らの私財を

なげうってまでピクサーを支えたことをはじめ、陰に陽に彼らと

深く関わってきた故・スティーブ・ジョブズ氏のことでありまして、

彼に対する深い思いは本書を読む人間を感動させることで

ありましょう。

仮にピクサーやディズニーの映画をあまり見たことがない方でも、

本書は一読に値するものでしょう。個人的にはピクサー映画は

本編同様にメイキングやインタビュー集も見所が多いと思って

おりますので、改めて一連の作品群を見直してみたくなりました。





ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法/エド・キャットムル 著
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