実録女鑑別所 性地獄 | 映画、その支配の虚しい栄光

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または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

「実録女鑑別所 性地獄」 (1975/日活/72分)
監督・脚本/小原宏裕、脚本/桃井章、撮影/前田米造
出演/梢ひとみ、芹明香、ひろみ麻耶、青木真知子、高橋明、八代康二、浜口竜哉

小原宏裕だし、女囚ものだし、無理して行かなくてもいっか、でも時間も余ったし的な気分で行ったら、やはり、皆さん同じ風に思ってるようで、前回、曽根中生の名作は20人以上入ってた客が半分以下に減っていて、だるだるな雰囲気(私が思ってただけだけどね)の中で観た。

ら、これが傑作。これは嬉しい驚き。

ダウンタウンブギウギバンドの演歌みたいなロックバラードにのって、手錠でつながれた女囚たちの手のアップと、護送車から見える新宿の風景がカットバックされるタイトルバックがやけにかっこいい。
荒っぽいカッティングで実にいい加減、何でもないシーンなのだが、それが、例えばジョン・フリンとか「バッジ373」とか、まるで根拠はないが、70年代の作家的ではないアクション映画みたいで、そしてこのテンションは本編に入っても、えんえんと続く。

梢ひとみ、芹明香、ひろみ麻耶、三人のキャラを時に不鮮明にし、あるいは1シーンで確立させ、彼女たちのあれこれを的確に物語っていく。三人のキャラはしっかりと立ち、それらが物語を作っていく。

リンチ、レズビアン、看守からの暴行など、女囚ものにお馴染みのネタを扇情的に、あるいは商売上の配慮から並べるのではなく、それらが物語に寄与するものとなっているのも素晴らしい。

その中で、いいショットが不意に現れ、しかもそれは、決めます!みたいな意識のない、物語に即した中で自然に出てきた風なのだ。
梢ひとみが下半身をシャツで隠し、すっくと立ち上がるアクション、格子越しに芹明香が指をそっと差し出すアップ、映画(「キューポラのある街」)上映中のレズシーンと視線の交錯。
そしてクライマックスの盛り上がりと飛躍。

また、三人の女優すべてが素晴らしい。梢ひとみの無表情、怒りのひろみ麻耶、そして関西弁、いつもよりナチュラルメイクの芹明香。愛しの芹明香は、女囚のリーダーであるひろみ麻耶を「いかせたげよか」と誘惑し、たらしこみ、鑑別所をしたたかに生き抜くのだ。