瀬戸はよいとこ 花嫁観光船 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

1976年(S51)/松竹/カラー/93分
■監督:瀬川昌治/脚本:瀬川昌治、大川久男/撮影:丸山恵司/美術:佐藤之俊/音楽:いずみたく 
■出演:フランキー堺、山城新伍、財津一郎、朝丘雪路、日色ともゑ、田坂都、村地弘美、ミヤコ蝶々、春川ますみ

村地弘美が出てるってだけで燃えるのだが、いや、これはかなりな傑作であった。

役者たちがノリにノリ、いい芝居を引き出せれば、普通に撮っときゃいいじゃん、カメラは丸山さんだし、変なこともすまい、とりあえずの画面は撮ってくれんだし、私は役者と楽しむ、と瀬川昌治が言ったかどうかは知らないが、そんな感じ。

その普通さが後半、どんどこどんどこ画面を占めていき、最早、何でもいい状態になっていく。
役者たちは爆発したように喋り、カメラはその様をえんえん捉え続ける。
こういうこと言いたかないが、いや、ほんと、ホークスのコメディってこんなだぜ、と。

とりわけフランキーと朝丘雪路が素晴らしく、日色ともゑは下着姿になるサービスぶり。財津一郎のもっともらしいふて腐れ顔も良く、もちろん村地弘美はとても可愛い。

そしてクライマックスはほとんどセリフの無い阿波踊りのシーン。
役者たちが踊っているのを手持ちで撮る、そして、ロングショットになると、主演俳優たちがどこにいるのかわからないような画面を平気でつなぐ。
メチャクチャだから凄いのではなく、それでいいのだ、というあっけらかんとした確信、その確信のもとで、いかにも幸せに踊りまくる役者たちの姿が感動的だ。

しかもその後、誰も予想もしなかった怒濤のクライマックスがやってくるのに唖然とした。

信頼すべき某知人によれば「乾杯!ごきげん野郎」ってのがかなりめちゃくちゃに凄く、プレストン・スタージェスだぜ、これは、と興奮しておりました。しかし、私は観る機会を逃してしまった…。

とにかく、瀬川昌治、恐るべし。
ただし、一日前に観た「喜劇 頑張らなくっちゃ!」は冒頭のドタバタを除いては、かなり凡庸な出来。そのあたりも含め、ううむ、瀬川昌治、侮れぬ。