刑事ものは難しい | 星詩-ほしうた-暮らし

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星占いと詩作(ことば)のコラボ生活...およびいわゆる占いウォッチャー(笑)+「占星音楽-ほしうたうらない-」コンテンツ発信に向け、現在ゆる々絶賛奮闘中

『相棒XX・北村藍花――杉下右京が愛した少女』

『パパ』うーん……。
『お父さん』いやいや。
『親父』まさか!?

結局どう考えても、どれもしっくりこない。
『右京さん』――もう私には、これしかない。やっぱり。

本来呼び方なんてどうでもよいのだろうけど、やっぱりコトがコトだし。唐突に
先月出会ったばかりのこの人が、実は自分の実父であったということを知った。
ショックというか、そんな感情を抱く以前に、私は少し前に死んでいたはずだった。
が、今こうして私は生きている。杉下右京という、その人が自分の父であるという、
その突然ふって湧いたような明白な事実と共に。

「お嬢さん……、藍花さんは元気にしてらっしゃいますか?」

わざとらしい咳払いとともに、もう一人の特命係であり、右京の片腕でも
ある優男然とした部下の神戸尊にそう訊かれ、唐突にその背が固まる。
別に“普通は”娘の一人や二人はいたっておかしくも何ともないのだが。

杉下右京。窓際の天才と警視庁内で囁かれ、その特異なキャラクターと
どのような難事件でさえ人並み外れた明晰な頭脳と鋭い機知、洞察力とで
解決に持ち込み、そのすば抜けた実力によって庁内で一目置かれるとともに
一種毛嫌いもされている、まるで異星人(エイリアン)のような杉下右京に
まさか……。

『娘さんがいたなんて驚きました~』

ピクピク。思わずそんな驚きの声をあげる先日の神戸を思い出してか、心なしか
右京のこめかみが動く。北村藍花、17歳。彼女の育ての父と母は先月右京が
解決した連続爆弾魔事件によって亡くなっている。が、彼女はれっきとした
右京の実娘だった。血液検査のDNA鑑定によっても、それが証明された。
ただそれを肝心の父親である右京自身が真実として受け止めるかどうかだ。

「藍花さん、そうですね。彼女はもう大丈夫です」

そんな杉下さん、自分の娘さんをさんづけで呼ぶなんて……。半ばあきれながら
内心そう思いはしたが、あえて神戸は黙っていた。こういう所が右京の硬い部分
でもありらしいところだ。というか、その突然ふって湧いたような事実に単に
頭がついていけないだけなのか。

「でも、ビックリしました。彼女って熱烈な杉下さんの、」
「熱烈ななんですか?」

いえ、なんでもありません。コホン、とまたしても場を取り繕うような咳払いを
残し、神戸はパソコンに再び向き直り自分の作業に戻った。神戸にとっては
捜査段階における、今回の事件の被害者でもある彼女の右京への態度は
むしろ右京自身を翻弄するようなものに見えていたのだが……、

ツンデレ、という言葉をはたして右京は知っているのだろうか。


「こんにちは――、」

突然取り付けた約束に自分自身でも戸惑っている。
両サイドを小さなリボン型の髪留めでとめた、さらりとした長い髪を揺らして、
その人を見上げる。服装こそ普段通りの制服姿だが、それでも、らしくもなく
念入りに身だしなみを整えて。右京は律儀に約束の時間の15分前にやってきた。
でも自分はその1時間近く前から、ここでこうしてその人を待っていた。

正直、ものすごく照れくさい。というか、どんな顔をしたらよいのかわからない。
私の父と母だった人は既に亡くなってしまった。そして、これまでの自分の生活の
全てが根底から覆された。そんな混乱と戸惑いのさなか、私はこの人と出会った。
それを運命の悪戯と言うのだろうか?いや、それは私にとって単なる始まりに
過ぎなかったのだ。

この人は文字通り私の命を救ってくれた。そればかりか私の父や母の仇である
犯人を捕まえてくれた。でも私がこの人を好きになったのは、だからじゃない。
全てを失って、その代わりの気持ちの拠り所としてじゃない。決して錯覚なんか
じゃない。――そう。好きになっちゃったんだ。それは私自身が死ぬかもしれない、
そう思った、きっとその前から。

けれど、その人が自分の本当のお父さんだった……。

こんな理不尽な運命のイタズラって他にある?神様は私の命を救ってくれたのと
同時に、そんな残酷な現実を私の心に運んできた。そんな、いきなり……、色んな
気持ちの整理がつかないとか何とか言うんじゃなく、私にはその事実を受け入れられない。どうしてだよ。こんなことなら、いっそあの時死んでいればよかった。

そう――右京さん、あなたのその腕に抱かれたまま。


時折車が走り去る橋の上、静かに流れる都会の川べりの舗道を二人して並んで歩く。最初は二人とも黙ったままだったが、さすがに間が持たなくて私から声を
かける。

「あの、右京さん」
「今日はこれから、どうしましょう?」

すると間髪入れず右京がそう尋ねてくる。お父さん、とはやっぱり突然言えなくて、
まるでその戸惑いが右京にも感染したかのように感じられたのは気のせいだったのか。まるで英国紳士のような彼のエスコートは完璧だった。丸々一日を私の
ためだけに使ってくれる、その気持ちだけでもとても嬉しかったのに、でもやはり
何かがどこかでわだかまっている。

普段は冷静沈着で切れ者の有能な人材である杉下右京。正直、警察という
現場がどういうものなのか私には全く分からない。それでも確かにそんな
ただものではないこの人独特のイメージに導かれ――、雰囲気そのものが
強い存在感を放っている、もしかしたら、この人しか持ち得ないそんな
何かに惹かれたのかもしれない。

当たり前だけど、すごく大人。落ち着いていて、その癖どこか変なところがあって。
持ち前の隠されたポリシーによる所の正義感、もだがその好奇心はどこか子供のよう……変わり者、と仕事場でも揶揄されるだけあって、右京はやはり独特の人物だった。ああお父さんかぁ。やっぱりそうなのか、そうでしかありえないのか。などと
一人天を仰いでいても仕方ない。本当は私ってば、ものすごく変なのかもだけど。

そんな私自身の心を見透かしてか、右京自身も何となくこちらの気持ちを
静かに気遣ってくれているような気もした(本当のところはどうなのか
実はよくわからないのだが)。

「この間はありがとうございました」ぺこり、と唐突に頭を下げる。
「そんな改まってお礼を言うような事じゃありません」
「でも私……、」

――死ぬかもしれなかったのに。そうだ、やっぱり何だかんだで、この人は私の
心の拠り所なんだ。実際、お父さん、なんだし……そう思いつつも、やっぱり
そこに行き着くことが何だかすごく嫌な気がした。それはただ単に、誰かに
頼ってしまわなければ生きていけない自分自身を嫌うことなのかもしれなかった。
そんな弱い自分を、この人に見せたくなかった、決して。




辛島美登里といや、、、
むしろ「春は旅立ち」は鉄壁です(この話には絶対に!?)
いつのまにやら消されちゃったけどね~~なぜかこの曲だけ(涙
曲聴いたら確実に泣くレベルなのに、、、



  by.Midori Karashima

どうでもいいけど、なんだ親子か、、、
で、終わる話が実はとんでもないハナシ(近親相○)になってるなォィォィ


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