ファインチューニング!~マリアにお願い 15 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「わ、私はどうしてしまったのでしょう?
お嬢様の制止を振り切るなどと、何たる暴挙…。」

沸き上がる衝動を抑えられなかった山際佳澄。
周(あまね)お嬢様の言葉以上に、目の前で甲子園のスターを見たかったのだ。
スターというほどでもない。
確かに徳川実業はこの夏の甲子園で準優勝したが、スター扱いされたのはバッテリーの牧野と千石に集中していた。
だが、山際はセンターを守る氏家の堅実な守備と、接戦をモノにした粘り強い打撃を鮮明に憶えていた。
地元から甲子園に出たこともあり、聖バーバラ女学院にも徳川実業ナインを応援する生徒はたくさん居たが、テレビで氏家の地味なプレイに釘付けになったのは、学院内に山際の他は居なかっただろう。
そして今は、その氏家と加納弥生の会話に釘付けになろうとしていた。

「何故、加納グループの令嬢が徳川実業の氏家さんと?
中学が同じ?
お屋敷に出入りしてた建設会社?
いや、過去の馴れ初めよりも…あの親しさは何だ?」

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「や、やっぱり専門家の方が見たらわかってしまうものなのですね…。」

「あぁ、力任せにアンテナを掴んで曲げたんだな、てのが地面のヒビ割れから想像つくよ。
なるほど、これなら強い風が吹く度に画像が乱れそうだな。
大丈夫、ちゃんと溝にセメント流せば直るよ。」

「よかったです…。でも、何故直ぐに真理亜の仕業だと?」

「こんな人間離れした怪力業は、三好さんしか居ねえだろ?
あの練習試合(前作オーバーフェンス)で、野球はド素人なのに、エース牧野の球を打った身体能力…。忘れるわけねぇよ…。
何か…このヒビ割れ直すの勿体無いねえな。」

「真理亜の事はよく憶えているんですね。
文化祭の招待状も、真理亜から頂きたいんじゃないですか?」

「何だよそれ?あれから俺は加納さんとだけ、手紙と電話のやり取りして来ただろう?俺も寮だから、牧野や千石達の仲間からのやっかみと冷やかしが大変だったんだぜ?」

「おい、慎吾!口はいいから手ぇ動かせ!セメントは時間との戦いだっていつも言ってんだろ?」

「も、申し訳ございません、お父様。私が余計な…。」

「お父様か、いいねぇ~。これで俺の老後も安泰か?」

「親父!加納グループのお嬢様と会話してるだけで奇跡なんだぞ!」

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「す、既に親の紹介が…!いや、そこじゃない!あの三好真理亜がアンテナを破壊?これはお嬢様の耳に入れるべきか?理事長に報告か?」続