「亜由美さんでしたっけ?
刑事の宇都宮さんを警戒するのは当然でしょうが、私は探偵です。
良かったら話を聞きますよ?」
グラシャ=ラボラスさんの連れの女性が、ソロモンNo.72のアンドロマリウスと知り驚いた私。
しかも近藤くんを拘束した能代王明の愛人だったなんて!
確かに彼女の盗品奪還能力や裏取引の看破は、探偵として優秀だし、公安の助手なら最適だ。
いや、私が真利子さんを助手に雇いたいくらいだ。
逐一私を監視する史香や、この亜由美って女子高生にデレる近藤くんや、一々正論を私に言ってくる弟より遥かに好印象だ。
今もわざと私が威圧的に詰め寄る態度に比して、真利子さんはやんわりと峰山亜由美の心に入り込むことに成功した。
「ウソ?探偵?
じゃあさ、ママの浮気調査してくれる?
パパの浮気が原因で今は別居してんのに、ママまで浮気なんて、娘はいい迷惑よ~。
ねぇ、お姉さんも結婚してる人に手を出すなんて最低と思わない?
このコンテストはどうせ私達が優勝するんだし、その賞金でお姉さんを雇えるかな?」
亜由美という女の子は目を輝かせて真利子さんにマシンガンの様に話しかけた。
近藤くん情報だと、イジメが原因で学校に馴染めず、無認可保育所「ネイチャーハウス」でバイトしながら、元教師や保育士から勉強を習ってるそうだ。
近藤くんもあんな風に話しかけられたのかなぁ…?
駄目よ、女の「寂しさ」と「恋心」をちゃんと見分けないと…。
「亜由美さん、その『出来レース』が問題なのよ…。
芸能事務所から何か見返りを言われなかった?」
「ううん、マネージャーからは、この収録が終わったら、番組のディレクターさんが晩御飯をご馳走してくれるって。
金欠だからラッキーでしょう?
保育所は、好い人に囲まれて楽しいけど、時給は文句言えないからさ~。」
亜由美ちゃんからの衝撃の告白。
悪魔アンドロマリウスじゃなくても、その怪しさくらいわかるわよ!
「ねぇ、その食事ってディレクターさんと二人?敬くんと一緒じゃないの?」
「あぁ、あいつは撮影の仕事あるとかで私だけよ。」
「亜由美さん、それ絶対食事だけですまないから…。
大丈夫よ、そんなディレクターが制作する番組は、私達の彼氏がブチ壊してあげる。
大騒ぎになったら、貴女は一人で逃げなさい。
大丈夫、私達の仲間が貴女を守るわ。」
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番組は、大魔王サタンこと、佐田星明のパフォーマンスタイムだ。