沖縄に出発する日。
家族全員で飛行機で沖縄に向かった。
初日は新郎新婦だけで、打ち合わせも兼ねて先に式場に向かった。
那覇空港でレンタカーを借りて、二人きりで一時間半かけて式場に向かう。
沖縄の景色も良くて、デートでドライブをしているかのようだった。
式場に着いた。
海岸の目の前の式場で、撮影用のプライベートビーチもありロケーションはとても良かった。
11月だけど、結構暑かったのを覚えている。
受付に行くと、担当の方が出てきて自分達の部屋で打ち合わせることになった。
式場内の施設に、新郎新婦専用のコテージが用意されていて、そこまでカートで送ってくれた。
部屋の冷蔵庫の中にウエルカムドリンクがあると聞いていたので、明けてみるとワインが入っていた。
琉球ガラスでできたグラスに注いで、海に沈む夕日を見ながらベランダでワインを飲んだ。
彼女はシークァーサージュースを飲んでいた。
結婚式を行うにあたり、彼女は障害を持つ故に色々課題があった。
まず今回の3泊4日の日程にあたり
①生理日を絶対避ける事。
②ヒールがある靴は履けない。
③ドレスのスカート幅の関係で、杖がつけない。
①については、私には詳しく言わなかったけど、生理日だけは避けないといけないと必死だった。
多分、重なると相当大変な事になるんだろう。
これは彼女が婦人科に相談して、ピルを飲んで日にちをずらす事により解決した。
②下肢障害のため、ヒールを履くと100%転ぶ、というか歩けない。
ペタッとしたシューズ系のものを履いていたような気がする。
またドレスの丈は、普通ヒールを履いた状態にあわせているので、丈を調整してもらった。
③これが一番大変だった。
指輪交換など、完全に両手が離れた状態になる場合は、目立たないようスタッフの人に支えてもらう事にした。
それ以外の場合、私の片腕のみで支える事になった。
止まっている状態なら大丈夫だけど、歩く時、片腕だけで支えられるのかな、、、。
夕食が終わったら練習するか。
夕食も式場内にあるレストランまで、カートで送ってくれる。
レストランに入れるのは、ここで式を挙げる新郎新婦のみ。
私たちの他にあと二組食事していた。
食事は沖縄の特産物を使った創作料理ばかりで、オードブルも20種類くらいあり、全部おいしくてつい食べ過ぎた。
結婚を控えたカップルだけの場所。
幸せに包まれたとても心地のいい場所だった。
食事を終えて部屋に送ってもらった。
「さあ、明日のために杖なしで歩く練習をしようか」
私はそう言って、彼女の手を取り歩いてみた。
1、2歩あるいただけで、バランスを崩してしまう。
難しいな。
彼女の腰を支えて歩いてみたらどうかな?
あるけるけど、怪我人を引きずっているようで凄くぎこちない。
こんなんじゃダメだな。
歩き方かな?
一歩あるいたら、一旦両足をそろえて、また一歩出して両足をそろえる。
多少ぎこちないけど、大分歩けるようになった。
あとは支える力かな。
俺が手すりの代わりになればいいんだな多分。
腕をLの字にして、いつもの3倍くらいの力で腕を固定する。
彼女に腕を持ってもらい、右足一歩、停止、左足一歩、停止、とゆっくりと前に進んだ。
歩みは遅いけど、バランスも一切崩さす歩く事が出来た。
「やったよ!杖なしで歩けたよ!」
私がそういって喜ぶと、彼女は満面の笑みで答えてくれた。
思わず彼女を抱きしめた。
「明日はもっと長い距離を歩く事になる。もう少し練習しよう」
そうやって、彼女とゆっくり一歩、また一歩と時間を掛けて歩いたんだ。
二人で一体になれたような、とても幸せな時間だった。
次の日は朝起きてから、すぐ衣装を着る準備に入った。
彼女は緊張のため、ほとんど寝れなかったらしい。
私は15分くらいで着替えを終えた。
サプライズのため、隣の部屋で用意をする彼女の用意が終わるまで一切見なかった。
「ご主人、奥様のご用意が出来ましたよ」
一時間半くらい掛かって呼ばれた。
彼女の姿を見た。
いつもと違う雰囲気の彼女を見て、思わず声が止まってしまった。
「ご主人、何か言ってあげて下さい」
係りの人にそう言われて我に返った。
「ああ、あみちゃん。今日は凄く綺麗だよ」
「本当?嬉しい!ありがとう!」
式場に入る前、昨晩歩く練習をした部屋で、二人の写真を撮ってもらった。
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さあ、会場に向かおうか!