2009年最後の日は、恋人の仕事場で目覚めた。

(進行形というテーマ設定なのに1カ月も前の話でスミマセン。旅行 の話もまだ先になります)


「今日やけどさ、ちょっと友達のところへ寄ってから行くわ」

「あー、そうなんや」


その日は、彼が仕事(当直、2つ目の仕事)を終えてから、ウチに来ることになっていた。


「いつも車停めさせてもらってて世話になってるし、年末の挨拶ぐらいしとかんとな。30分か、話が盛り上がってしまったら1時間くらいかかるかもしれんけど」

「うん、ゆっくりしてきてくれていいよ。つもる話もあるやろし」


アタシは、自分自身に友達づきあいがあまりないせいか、彼の友達の多さに憧れのようなものを抱いていた。

だから、彼にはむしろ、アタシより友達を優先してくれるぐらいのほうがいいとすら思っていた。


ところがここ最近、彼は頻繁にウチにやってくる。

友達と会う時間も大して取れていないんじゃないかと、少し心配だったのだ。


「じゃあさ、ゆ~っくりして、そっち行くのが夜になったらどうする?」

「えー、夜!? それはちょっと困るなぁ、実家帰らんとアカンし」

「そやろ。んじゃ、アカンやん(笑)」


もう、極端すぎるって!


「ていうか、夜は帰って仕事(本業)せんとアカンのちゃうの?」

「んーまぁ、ほとんど終わらせてはきたんやけど、どうしても最終日にせなアカン作業があるから、それをちょこちょこっとな」

「じゃあ、どっちにしても夜までには帰らんとアカンやん」

「せやな(笑) おかんからも、今日は早く帰ってこいって言われてるし。ま、適度にってことやな」

「そやね(笑)」


彼に抱きしめられた。


「……今日こそは、今世紀最大の謎を明かさんと。年を越せへんからな」


耳元でささやかれた。

前の晩のこと が思い出され、恥ずかしくなる。


「もう!」


彼の背中を叩く。

すると彼は、フフッと笑い、なだめるようにアタシの頭をなでたのだった。





――それから約5時間後、11時前。


マンションの共同玄関のチャイムが鳴らされた。

インターフォンをとると、


「着いたよー。下りてきて」


と、彼の声。


「わかった。すぐ行きます」


急いでコートを着て、部屋を出る。

これから彼の希望で、隣の市(アタシが生まれた市でもある)の大型スポーツショップへ行くことになっていた。


「ゴメン、お待たせ」


待っていた彼に一声かける。


「おう、久しぶり!」

「なんでやねん。ついさっきまで会ってたやん!」

「うん、知ってる(笑)」

「知ってんと困るわぁ。じゃあさっきの誰やねんってことになるやん!」

「せやな(笑)」


そんな冗談を交わしながら、マンション下の駐車場へ向かう。

彼は途中で寄った友達の家に車を置かせてもらっているので、アタシの車で行くことになるのだ。

「安全運転で行ってや? 年越す前に死にたくないで」


そんな失礼なことを横から言われながら、いざスポーツショップへ。


1カ月ほど前の12月2日にも 、そこへは来ていた。

冬は、彼の唯一の趣味であるスノーボードのシーズン、彼にとって待ちに待った季節なのだ。


「今、ほしいウェアがあってさ。でもたぶん、それは入荷数が多くないから店にはないと思うねん。そやさかい、そのメーカーのサイズだけみようと思って。去年買ったのはL(サイズ)なんやけど、今回ほしいのは外国のメーカーやし、M(サイズ)でもいいかもなと思うねんなー」


ボードのことを話す彼は、すごく生き生きとしている。

よっぽど好きらしい。


アタシは1度しかやったことがないので(スキーは結構経験あるのだけど)、専門的なことを言われてもわからないのだけれど、その彼の生き生きとした表情や熱い語りが好きで、よくボード話をしてもらう。


彼が楽しそうだとアタシも幸せで、例えばそれで会える時間が減ったとしても、アタシとしては満足だった。


仕事、友達、趣味、そして休養、それらにしっかりと時間を割いて、余った時間でアタシと会ってくれれば充分。

アタシのせいで、それらがなおざりにされるのは耐えられない。

彼の負担になりたくなかった。


ただでさえ、こんな遠いところを会いにきてくれているのに……。




スポーツショップへ到着。


まだ開店間もない時間だからか、それとも大晦日だからなのか、車は20台ほどしか停まっていなかった。


店内に入ると、彼はお目当てのウェアがある2階へ上るため、エスカレーターへ向かっていった。

アタシもあわててついていく。


彼曰く、今は派手色のウェアがブームなのだとか。

確かに、在庫処分品(昨年以前のもの)と比べて、蛍光色のウェアがとても多い。


いかついお兄さんが着ていそうなものもあったりで、見ているだけで楽しい。


お目当てのメーカーのエリアで立ち止まった彼は、真剣に吟味を始めた。


「あー、これやっぱりMでもいいかもなぁ」


裾や袖の長さ、幅をチェックしている彼。


「ねぇねぇ、着てみてよ!」


すぐそばに試着ルームがあったので、アタシはそれを指差して言った。


「いいで、着てみよか?」

「うん!」


彼がほしいのは――つまりサイズを確かめたいのは――上だけらしく、下は買わないので、上はお目当てのメーカーのもの、下は自分が持っているものに似たのを探し、試着ルームに姿を消した。


隣の試着ルームでは、中学生ぐらいの女の子が試着をしていて、お父さん、お母さんが、ああだこうだと意見を述べていた。

おそらく、ボードが家族共通の趣味なのだろう。


「こっちの黄緑のほうがいいんじゃない?」


お母さんが差し出すウェアを受け取り、扉を閉める女の子。

しかし、足の部分が挟まっていて、一生懸命、中から引っ張るものの、抜けない。


それを見て、お父さんが大爆笑。

アタシもつられて笑ってしまった。


なんだか平和だなぁ、と思う。



そんなことをしていると、彼が試着ルームの扉を開けた。


「どう?」

「おー! なんかボーダーって感じ!」

「ボーダーやもん(笑)」

「あ、そっか(笑) でも、なんかすごーい!!」

「何がやねん(笑)」


普段、目にすることのない格好なだけに、ちょっとドキドキしてしまう。


「俺がほしいのは、紫と黒のチェックっていうのかな、なんかそんなやつやねん」

「形はこんな感じなん?」

「そやなぁ。型的にはこんな感じやな。うん、やっぱMでいいわ」


彼はウェアを着たまま別のウェアを探し始める。


「あー、どっちかというと、こっちに近いかな。これも着てみるわ」


そんなふうにして、何着か試していた。


「何か試着したいのあったら取ってくるよ」


彼の役に立ちたくてそう言ったものの、「じゃあ」と頼まれて取りに行ったウェアは、かけてあるところが高すぎてハンガーに届かず、ウェアだけを引っ張って持っていったり……。

ハンガーは残ってしまっているので、結局彼に、戻しにいってもらわなければならず、大して役に立てなかったしょぼん



サイズを確認するという彼の目的が達成できたので、お店を出ることに。

駐車場に戻ると、なんと、もう8割が埋まっている!

来たときは20台ほどしか停まっていなかったというのに、たった数十分でこの違い!!


「これ、昼から来てたら入れへんかったかもね」

「そやなぁ。みんな大晦日やのによく来るよなぁ」

「人のこと言えんやん(笑)」


それだけウィンタースポーツ人口が多いということ、それから、この店は関西では一番有名なので、大阪や神戸からも人がやってくる。

停まっている車のナンバーもいろいろな府県のもので、となると、朝一から入れるのは近隣の者に限られる。

だから、年賀状書きや大掃除もひと段落ついたこの大晦日に、少し頑張ってやってくるのかもしれない。

最も混むのは14時から15時ごろだろうか。



車に乗り込むと、あと15分ほどで12時だった。


「お昼、どうする? 何が食べたい?」


アタシが答えられないとわかっていても、一応は訊いてくれる彼。


「うーん、どうしよ。何か食べたいものある?」


逆に返す。


「そやなぁ、俺も何でもいいけどなぁ。お腹すいてる?」

「んー、まぁまぁ」

「まぁまぁか。そやなぁ……。前に一緒に行ったラーメンもいいなぁって思ったんやけど」

「あぁ、いいよ、それで」

「いいのか、そんなんで?」

「うん、いいよ!」


アタシは基本的に、彼が食べたいものであればなんでもいい。


「ただ、問題は大晦日に開いてるのかってところなんやけど……」

「あー、そっか。年末年始はそれがあるんや」

「そう。まぁ、開いてなかったらまた別のところ探せばいいか」

「そやね」


ということで、以前に彼と行ったラーメン屋 を目指して車を走らせた。



それから5分ほど経ったころだった。


「あ、こんなところに『すき家』あるんや」

「あー、ホンマやねー」


目の前の交差点を渡った右側に、「すき家」 の看板が出ていた。


「うーん、『すき家』でもいいなぁ」

「そうする? 私はどっちでもいいよ」


信号は青。


「早く決めんと通過しちゃうでー」

「わかった、決めた! 『すき家』にする!」

「おっけ~」


交差点を渡り、直進の車を待って右折した。


「アタシ『すき家』入るの初めてやわ」

「俺も1回ぐらいしかなかった気がする。ていうかさ、大晦日に『すき家』でいいの? 俺と一緒にいると、こういうジャンキーなものばっかりになるけど、いいの?」

「うん、いいよ。だって、一緒のときじゃないと食べる機会もないし。いろいろ初体験できて楽しいよ」

「そっか。ならいいけど」

駐車場に車を停め、店に入った。


まだ12時前だからか、半分ほどしかお客さんが入っていない。

一番奥のテーブル席に案内され、席についた。


「お、炭火とりマヨ丼やって」

「うん、おいしそう! これにするの?」

「いやいや、俺はもう豚とろ角煮丼に決めてるから。じゃなくて、あなたが好きそうやなって思って」

「バレた? 実はこれにかなり惹かれてたねん。すご~い!」

「そりゃわかるよ。これだけ一緒にいたら(笑)」


最近、彼からこういうセリフが出ることが多い。

アタシのことは、もうだいたいわかるらしい。


それにひきかえアタシはというと、そういうふうに言える自信がない……。


「すごいね、これ! サイズがいろいろ(なんと6種類!)選べるんやね~」

「メガとかありえんで。誰が食べるねんって。セットメニューはどうする?」

「うーん、そやねぇ。寒いから、とん汁頼もっかな」

「俺も頼も」


ということで、アタシは炭火とりマヨ丼+とん汁おしんこセット、彼は豚とろ角煮丼+とん汁サラダセットを注文した。


このとん汁を頼んだのは大正解で、すごくおいしくて温まった。

好き嫌いの多い彼も、「いわゆる家庭の味に近くておいしいわぁ」と大絶賛だった。



しばらくすると、店内はかなり混み始めた。


「混んできたね」

「ホンマやな。さっきは空いてたのに、待ってる人いるやん。やっぱり俺の(交差点での)とっさの判断は間違ってなかったってことやな! 何せブームの最先端をいく男やでなぁ。さっきのスポーツショップにしても、ここにしても、俺が行くところはたちまち混雑するねん」


得意気な彼。


「ていうか、12時過ぎたからやろ。あと、大晦日で開いてるお店が少ないんちゃう?」


バッサリ切ってさしあげた(笑)

「でも……なんか申し訳ないわ。待ってる人いるのにずっと座ってて」

「しゃあないやん。まだ食べてるんやし」

「うん、そやけど……。ゴメンね、いつも食べるの遅くて」


待っているお客さんに対してはもちろん、つきあってくれている彼にも、毎度、居心地の悪い思いをさせていると思うと申し訳なかった。


「いいよ、気にせんとゆっくり食べな」

「うん、ありがと」

「でも確かに、隣の客、もう2回入れ替わってるな(笑)」

「そうやねん……。アタシ、遅すぎやな……」

「まぁ、いいんちゃう。それも含めて栞なんやから」


彼がこう言ってくれる人でホントよかったと思った。


アタシがかつて食べることがあまり好きじゃなかったのは、食べるのが早い母親からいつも「早く食べなさい!」と怒られていたからだった。

食べることが苦痛でしかたなかった。


ありのままを受け入れてもらえることほど幸せなことはないなと、最近つくづく思う。



ようやく食べ終わり、マンションへ戻る。

2009年最後のおうちデート。


アタシが手洗い、うがいをしていると、彼はレースのカーテンを開けて、窓の外を見ていた。


「ホンマ今日は天気がいいなぁ。今晩から冷え込むって信じられへんわ」

「そやねぇ」


彼が言うように、その大晦日の夜からかなり冷え込み、翌元旦には、雪がチラついていた。

今シーズン初の雪。

だけど、それ以来、今(1月30日)に至るまで、まだ1度も降っていないという危機的暖冬……。



「あ、ねぇ、窓、綺麗になったやろ!?」


前の晩「明日見てみて!!」と言っておいたので、さっそくそう言ってみる。


「うん、めっちゃ綺麗になってるなと思ってびっくりした」

「そやろ~!! 今日来たら絶対自慢しようと思ってたねん♪」

「ううん、全然綺麗になってないで」

「え~~~~~~」

「うそうそ(笑)」

「もぉ~~~」


彼は可笑しそうに笑いながら、「じゃあ、来てすぐで悪いけど、シャワー行っていい?」と言った。


「うん、ちょっと待ってね」


スウェットとバスタオルを準備する。

そして、彼がシャワーを浴びにいった――。





「あー、やっぱり脚触るのきもちい」


彼と交代でシャワーを浴び、ベッドに入ると、早々にパジャマを脱がされた。

脚を触るのが、最近の彼のお気に入りらしい。


「昨日も言ったけどな、こうやって脚を触ってるだけでめっちゃ落ち着くねん」

「うん」

「――極端な例で言うと、●漢とかあるやん。男って、少なからずやっぱり、そういう触りたいという願望があるというかさ。でもまぁ、普通の人は、そういうことはしたらアカン、犯罪やっていう理性が働いて、抑えられてるわけよ。だけどこうやって、彼女に好きなだけ触れて満たされてると、電車で可愛い子とか見かけても、まったくそういうことを思わへんというか。俺の犯罪防止にもなってるわけやな(笑)」

「なるほど(笑)」

「まぁ、そんなことせんけどさ(笑)」


少し意外だった。

男女の性差って、こうも違うものなのかと思った。


「ん……」

「ふふふ、手が滑った(笑)」


彼の手が、下着の上から軽くなぞり、そして徐々に上に上がってきた。


「なぁ、どこがくすぐったい?」

「まだ言ってんの?(笑)」


“今世紀最大の謎を明かす”という彼の目標(?)は、まだ続いているらしい。


「いや、もう半分諦めてる。教えてくれへんし」

「だって、わからんねんもん……」

「わからんって、自分の身体やん。どうせ恥ずかしいだけやろ(笑)」

「……まぁ、それもあるけど」


どこがくすぐったいのか、どこが感じるのか、言うことが恥ずかしいというより、彼にそれを訊かれることが恥ずかしかった。


彼は呆れたと言わんばかりのため息のような笑いを漏らし、アタシの頭をなでながら口づけた。

そして、もう片方の手で、お腹のあたりをなであげる。


くすぐったい。


「お、これくすぐったそうやな!」


彼はうれしそうに何度も繰り返した。


「うーん、でも、“ややくすぐったい”ぐらいかー」


いろいろと試される。


「アカン、解明できんわ。今年中に明かしたかったんやけどなぁ」

「年越せへん?」

「そやなぁ。俺だけ2009年のままかもなぁ……てわけはなくて、12時(24時)過ぎたら皆平等に年を越すんやけどな」

「そっかぁ、もう2009年も10時間ぐらいで終わるんやね」


最後の日に、こうして彼と一緒に過ごせるのは幸せだなと思う。

ひとり暮らしをする前じゃあり得なかったことだ。


「今年はどんな年やった?」

「それ、こないだの忘年会でも、1人ずつ言わんとアカンかったんやけどさ」

「あー、忘年会は定番やな」

「アタシ、思いつかんくてさー」

「なんやそれ(笑)」

「どうやった? 今年は」


彼に振る。


「俺? 俺は……うーん、難しいな」

「そやろ!?」

「でも、いろいろあったけど、充実してたな、とは思うね」

「うん」

「最後のほうは、こうやってあなたとも頻繁に会えたし。前にも言ったけど、栞の存在の大きさをあらためて感じた1年でもあったかな」


そんなことを言われるとドキドキする。


「で、どうやった?」


再びこちらに回答権が戻ってきた。


「うーん、そやねぇ……。あ、そういえば懐かしい友達との再会が多い1年やったなぁ」

「そうなんや」

「うん。前にも話したけど、2月にSHOCK(堂本光一君主演舞台「endless SHOCK」のこと)へ行ったときに、帝劇のトイレで寮時代の友達と再会して……」

「あー、言ってたな」


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「それから8月に、MISIAのライブでこれまた寮時代の友達と8年半ぶりに再会して」

「あー、それも聞いたな」


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「で、先月、友達の結婚式で、同じく寮時代の友達と、今度は約9年ぶりに再会して」

「それも聞いたわ」


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「まぁ、みんな寮時代の友達ばっかりやけどさ、SHOCKで会った子以外は卒業以来会ってなかったから、なんかすごい年やったなぁって思うねん」

「そうかー」

「来年の3月にね、その結婚式に来てた友達のうちの1人が結婚するねんか。だから来年も懐かしい寮時代の友達に会えるかもしれんねん。その子、卒業後もいろんな子と連絡を取り合ってて、結構たくさん呼ぶみたいやし。楽しみやわ」

「ふふ、そりゃよかった」


ちょうど昨日(1月29日)、彼女から届いた結婚式の招待状の返信はがきを投函した。

彼女からメールで出席予定者を聞いたところ、かなりの懐かしい顔ぶれが揃うようだ。


「じゃあさ、来年の目標は?」

「えー、それも難しいなぁ。どうですか?」


またしても、先に彼のほうへ振ってみる。


「俺は、時間の使い方をもうちょっと考えなアカンなと思ってる。やれるときにやれることをやって、時間をつくって、そうすればこうやって、会いにもこれるしな。あと、朝もちゃんと遅れずに行くとか(笑)」


最後のは、ウチに泊まった翌朝のことを言っていた。

アラームをセットするものの、朝からそういうことをしてしまい、毎度のように予定時刻を大幅に過ぎていたのだ。


「まぁ、俺は管理者の立場やから、得意先のところを回ってから来たとか、作業があったとか、いろいろ理由はつけられるんやけど、毎回そんなことで遅れてたらアカンわな(苦笑)」


アタシも、いつも「いいのかなぁ?」と思っていたことだったので、彼の目標が聞けてよかった。


「じゃあアタシは、仕事のことでいうと、ホンマはこの1月から新企画を考えてスタートするはずやったんやけど、それができんかったから、今年はちゃんとそれをスタートできるようにしたいな。併せてプライベートでも、何か新しいことを始められるように頑張ろうかなと」

「へ~、そうなんや。どうぞ頑張ってください(笑)」

「うん、頑張ります(笑)」


お互いの2009年回顧話と2010年の目標を聞いたところで、一気に妖しいムードになる。



2009年最後の身体の触れあいを愉しんだ。





「あー、どこがいいのか訊くの忘れてた……」

「残念。もう年越しちゃうね」


というわけで、結局、彼にとっての“今世紀最大の謎”は、2010年に持ち越しとなった。



「2009年最後ということで、一緒にシャワー浴びようか? ……って、理由になってへんけど。単に一緒に浴びたいだけやろっていう(笑)」


このウチで一緒にシャワーを浴びるのは初めてだった。

というか、過去にも“一緒に”というのはほとんど経験がない。
付き合ったばかりのころ、ホテルで1度あるぐらい。

一緒にお風呂に入ったのは、約1年前の有馬温泉で のみ……。



2009年、最後の最後はドキドキで締めくくられた。