さる8月1日付で産経新聞に出していた質問に対する答えが、9月19日、同社広報部からありました。1ヶ月と19日も待ちつづけた回答ですから、さぞ内容の濃いものかと期待したのですが、一読してがっかりです。

「個別の記事に関することはお答えできません」

 ただそう書かれていただけでした。

 いきさつは「産経新聞への質問状」 をお読みいただきたいのですが、筆者の目からみれば、朝日の誤報などとは次元の違う悪質な記事です。加害責任を薄めるような日本政府の「矛盾した態度」に「懸念を表明する」--と
国連人権規約委員会が報告で述べたことについて、産経新聞7月25日付紙面は次のように報道しました。

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「国連委/『慰安婦』日本に矛盾/ヘイトスピーチ禁止要求」

 ・・・見解は慰安婦問題について、日本政府が「慰安婦の強制連行はなかった」と主張しながら、平成5年の河野洋平官房長官談話が、慰安婦募集には「甘言、強圧によるなど、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くある」としているのは、「立場に矛盾がある』と指摘した。
 強制連行を示す資料が発見されていないにもかかわらず、河野談話が慰安婦募集の強制制を認めたことが突かれた形だ。・・・


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 まるで国連が日本政府に同情したかのような印象を与える記事です。現にこれを読んだ杉並区の吉田あい区議は、

強制連行を示す資料が発見されていないにもかかわらず、河野談話が慰安婦の強制性を認めたことが矛盾している…と言うのです。

 と完全に意味を取り違えた記事をブログに書き、「政府として 正式に河野談話を破棄すべきでしょう」と述べています。http://yoshida-ai.com/index.php?itemid=2134

 「従軍慰安婦に日本政府の責任はあると言ってきたはずなのに、一方で軍の強制はないといっている。こういう矛盾した態度に国連人権規約委は懸念を表明する」と厳しく日本政府を批判しているのです。

 ところが記事をみると、肝心の「懸念」をすっとばして「矛盾」だけを見出しにとり、「強制連行を示す資料が発見されていないにもかかわらず、河野談話が慰安婦募集の強制制を認めたことが突かれた形だ。・・・」という独自の解釈をとってつけたように付け加えています。

 どうみても意図的な歪曲記事です。誤報よりもはるかに悪質です。そして、読者の疑問に対してだんまりという態度も、謝罪会見をして批判を浴びている朝日新聞などよりはるかに卑劣ではないでしょうか。

 産経新聞は、かつて2007年と2011年の統一地方選の際、杉並区議候補の安斉あきら氏の肩書きを元東電社員と誤って報じました。じつは現職東電社員だったのですが、筆者が指摘した後も訂正はありません。

 間違いをただす新聞と、間違いや捏造に口をつぐむ新聞と、どちらが信用できるかは論をまたないと思います。