ヨモギ(よもぎ)


ヨモギは野山や道ばたの日当たりのいい場所にごく普通に自生するキク科ヨモギ属の総称です。約250種ほどあり、世界に広く分布し、砂漠にも生育します。多くは多年生の草本ですが、小低木もあります。葉や果実などが食用や薬用にされます。花は風媒花で、花が大きくて美しいキクの仲間から、虫のいない乾燥した地域に広がる際に風媒花になったと言われています。

春、荒れ地の枯草の中にいち早く緑色の姿をみせるのがヨモギA. princeps Pamp.やニシヨモギA. indica Willd.です。茎はよく分枝し、直立して数十センチメートルになります。葉は互生し、細かく切れ込み、裏面に灰白色の軟毛を密生します。ヨモギは本州から朝鮮半島まで、ニシヨモギはインドから中国、東南アジアを経て西日本まで分布します。

若芽は白いうぶ毛におおわれ、春が訪れるといち早く、枯れ草の中にあざやかな緑を萌えさせる草で知られています


ヨモギの語源は、お灸に使うもぐさがよく燃えることから「"よく燃える草"善燃草」とか、発育が旺盛でよく増えることから「"よく萌えでる草"善萌草」という説などの諸説ありますが本当のところは明らかではないそうです。

日本では、古くから食用や薬草など、最近脚光を浴びているハーブのひとつとして知られ、「万葉集」や「枕草子」などにも詠まれており、「平家物語」には安徳天皇が生まれた時、「桑の弓、蓬の矢にて、天地四方を射て」と輝く未来を願ったことが書かれています。


1. 食用


ヨモギは濃緑色の葉菜類に似て、ビタミンやカルシウムを豊富に含んでいます。春先になるとヨモギの新芽を摘みお餅につき込んで、美しい緑色と清々とした香りを楽しむ草餅(くさもち)は、まさに春の味わいがあります。

草餅やお団子にしてヨモギを食べる風習は、優れた薬効にあやかり健康を願う昔の人たちの智恵でもあったようです。このためモチグサの別名で広く親しまれています。

若葉はゆでてあくを抜いてから、ひたし物や汁の実とし、また飯に混ぜてよもぎ飯にします。葉は土瓶で煎(せん)じて塩味をつけて飲用します。これをよもぎ茶とよび、淡緑色で香気が好まれます。


2. 薬用


ヨモギは色や香りが良いだけではなく、薬効成分が豊富な生薬としても知られています。

子供の頃、ヨモギの草をもんで切り傷などにつけたことのある方は多いと思います。

また、五月の節句にはよもぎの香気が病気を防ぐなどの力があると考えられて、菖蒲湯のショウブと共にお風呂に入れて使われていました。

ヨモギの漢方名は、艾葉(がいよう)と呼ばれています。中国の文献によると、艾とは「疾(やまい)を艾する(止める)」の意味とされています。


止血、鎮痛、強壮剤として冷えによる子宮出血、月経不順、月経痛、痔(じ)出血などの治療に用います。

特に女性に対しては、下焦(下腹部)の経脈(経絡の事で気の巡る道すじです)を温めるという性質があるからで、経脈を温めることにより下腹部の気と血を温め、調経(月経を調節して安定させます)・止血・安胎(流産の防止など)に有効で下腹部の冷えや痛み・月経不順・月経痛・不妊などを治すとされています。(ヨモギにはカロチン・クロロフィル・ビタミン・鉄分・カルシウムなど栄養分が多く含まれていることも大きな理由でしょう。)


また、胃腸や循環器の疾患によいとされ、最近はアレルギー疾患への効果も注目されています。

主な薬効成分は、葉緑素、タンニン、シオネールや精油などがあります。葉緑素は傷を癒し、からだの細胞組織を再生する働きがあります。胃腸の粘膜の傷やただれを改善するので、潰瘍を治したり、出血をともなう症状を抑えます。

ヨモギのタンニンは解毒作用があり、体内の有害物質を排泄する働きがあります。吐き気や下痢にもよいそうです。また、ヨモギの薬効成分には血液を浄化する作用があり、葉緑素やタンニンのほかに十種類以上の酵素を含んでいて、それらの相乗作用で血液中の不要な物質である脂質や化学物質等を体外へ排出してくれます。血液が浄化されるので高血圧や動脈硬化など循環器系の生活習慣病の予防にも役立つとされています。


また、民間では生(なま)の葉を切り傷、打ち身、腹痛、水虫、たむしなどに外用したり内服します。

灸(きゅう)に用いる熟艾(もぐさ)は乾燥した茎葉から作ります。茎葉を臼(うす)でよくつくと、葉肉と葉脈などが細粉となり、葉裏の長いT字毛がもつれて綿状の塊となります。これを篩(ふるい)にかけて毛だけを分取したものが、もぐさです。主産地は新潟県です。ヤマヨモギの葉もヨモギと同様に用います。中国ではヒメヨモギを用います。これが真正のもぐさです。


お風呂の入浴剤として使用すれば肩こり・疲労回復・冷え性・腰痛・リウマチ・痔・あせも・ひび・しもやけ・あかぎれ・手湿疹・こしけ(子宮内膜炎)・帯下(たいげ)、おりもの、デリケートゾーンのかゆみ対策など様々な効能があり、まさに万能薬といえるでしょう。


カワラヨモギには発ガン物質やカビの繁殖を抑制する、強力な坑カビ成分が含まれており(旧農林水産省発表・1993.12.27日本経済新聞) これが乾燥肌、肌荒れ、湿疹、アトピーの症状等、肌の痒みを抑えて炎症を鎮める役割を果たします。


アトピー性皮膚炎を原因とする痒みや乾燥肌、手湿疹、主婦湿疹や赤ちゃんのあせも、肌荒れ、おむつかぶれ、湿疹、乾燥、保湿などでお悩みの方から、透析患者のひどいかゆみ、黄疸によるかゆみ、老人性皮膚掻痒症(そうよう)などでお悩みの方は、是非試してみるとよいでしょう。


薬草としてのヨモギの使い方は、代表的なものとして、ヨモギ水(ヨモギローション)や飲用療法など、主に6つほどあります。

これらの療法を組合せることによって、内面と外面また内外面で相乗効果を引き出し、薬草のダイヤモンドと呼ぶにふさわしい薬効を発揮します。


①飲用療法

陰干しにしたヨモギを煎じて飲むか生の葉をよくすりつぶしてその汁を盃一杯飲むだけです。

体内の有毒物質を分解して排出するほかに、血液を浄化し、酸性に偏りがちな体質を弱アルカリ性に改善してくれます。風邪、冷え性、生理痛のほかに、下痢にもお薦めできます。

また、生のヨモギを枝ごときざみ、ガーゼの袋にいれてホワイトリカーなどに漬けると約3ヶ月でよもぎ酒の出来上がりです。これは強壮、利尿、健胃、整腸、吐血、食欲増進、鎮痛、などの効果があるといわれています。 


②薬湯療法

よく水洗いしたヨモギの葉を陰干しし、乾いてから細かく刻んで布袋に包み、お風呂にいれます。水の時から入れて沸かすと有効成分がよくしみ出るでしょう。生の葉を入れる時は、倍の分量を使って下さい。

薬効成分が皮膚を通じて全身に広がり、老廃物の排出を促進して疲労回復に役立ちます。ヨモギに含まれる精油には、温熱効果もあり、湯ざめしにくくなります。

入浴中に袋で体をこすると、腰痛、腹痛などにも効果的です。また、ショウブやニワトコを併用することで、鎮静効果も期待できます。 


③食用療法

草もち、おひたし、てんぷらにしていただきます。

ミネラルや各種酵素、ビタミン類や食物繊維の補給に効果的で「よもぎを一年中煎じて飲めば病気をしない」という言い伝えもあるくらいです。 


④エキス療法

エキスを煮出して湿布します。神経痛、腰痛、肩こり、関節炎、虫さされ、切り傷、打撲、皮膚炎、肝臓障害、などに効くと言われています。うがい薬として使えば、扁桃腺炎や咽頭炎の予防になります。 


⑤温灸療法

和紙や枇杷の葉を重ねた上から、乾燥ヨモギ葉でお灸をします。細胞を活性化し、頑固な慢性病の改善などに役立ちます。 


⑥力線療法

乾燥させた葉を枇杷の葉などとミックスし、枕、マット、座布団に入れて利用します。自律神経失調症、不眠症、頭痛、更年期障害、また痔にも効くといわれています。 


⑦燻蒸療法(煙を吸ったり当てたりする療法)


⑧芳香療法(アロマテラピー効果)

ヨモギの香で心を楽にし、皮膚からの活性化、殺菌します。目のつかれや抗偏頭痛用としても効能があります。