6、動脈硬化の危険因子


3)糖尿病・耐糖能異常


●糖尿病って尿に糖が出る病気?

「インスリンというホルモンの働きが悪くなって、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が異常に高くなる病気」ですね。

尿に糖がでない人もいますから、痛くもかゆくもないうちに病状が進んで、毛細血管が傷ついたり全身の細胞の働きが低下したりしておこる「合併症」が怖いのです。

目(糖尿病性網膜症)、腎臓(糖尿病性腎症)、神経(糖尿病性神経障害)が糖尿病の三大合併症といわれ、動脈硬化も心配です。

糖尿病予備軍である耐糖能異常の患者さんも動脈硬化のリスクが高いので治療します。


<糖尿病の診断基準>

糖尿病は2回にわけて検査し、診断します。

随時血糖値 200mg/dl以上 → 糖尿病の可能性あり

空腹時血糖値126mg/dl以上 → 糖尿病の可能性あり

75g経口ブドウ糖負荷試験200mg/dl以上 → 糖尿病の可能性あり

以上の検査を別の日にもう一度行い、再び該当したら糖尿病と診断します。

※日本糖尿病学会の診断基準


●心筋梗塞や狭心症になる率が26倍、脳卒中が約2

心筋梗塞や狭心症になる率が26倍、脳卒中が約2倍です。

糖尿病があるだけで、心臓病をおこす危険が一番高い「高リスク群」になります。

糖尿病は心臓病・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症などの引きがねになります。


動脈硬化をおこした血管を古いひび割れたホースだと想像してください。

その古ホースの中を脂肪と糖でドロドロの血液が流れたら、やがてホースの内側にお粥(かゆ)のようにこびりつき、血栓を作ったりします。

これを気づかずに放っておくと、心臓や脳や大動脈などで、血液の通り道が狭くなったところの血流が詰まったり、血管の傷ついたところが破裂したりするのです。


●早期発見・早期治療が大切

いま、糖尿病が増えています。

糖尿病あるいは糖尿病予備軍は6人に1人といわれ、糖尿病だけでも平成16年の男性の死因の10位、女性の死因の9位です。

糖尿病は早期発見・早期治療が大切な病気です。

日本人のほとんどは体質に加えて、生活習慣の影響で発症した2型糖尿病です。

食事や運動に気をつければかなり改善できます。ただ、自分で気がつかないうちに合併症が始まっている場合もありますから、かかりつけ医と二人三脚で健康管理していきましょう。


4)高血圧


●心筋梗塞のリスクが23

高血圧になると血管を傷つけやすくなるため、高血圧の人が心筋梗塞をおこすリスクは普通の人の23倍です。

日本高血圧学会でも血圧を正常値に近くまで下げた方が心臓病や脳卒中になりにくいとしています。


血圧というのは、心臓から全身に血液が送り出されるときに動脈の血管の壁にかかる圧力のことで、心臓が収縮して力を入れた時に動脈の壁にかかる圧力を「収縮期血圧」、拡張した時に動脈の壁にかかる圧力を「拡張期血圧」といいます。


<高血圧の診断基準>

成人における血圧値の分類に成人における血圧値の分類

(日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2004より)

分類  収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)

至適血圧   <120  かつ 80

正常血圧   <130   かつ 85

正常高値血圧 130139  または 8589

軽症高血圧 140159  または 9099

中等度高血圧 160179  または 100109

重症高血圧  >=180 または >=110

収縮期高血圧  >=140  かつ 90


高齢者は14090mmHg未満

若年•中年者は13085mmHg未満

糖尿病患者•腎障害患者は13080mmHg未満


●高血圧が動脈硬化をおこすしくみ

年をとると血管も老化して、血圧を高くしないと、若い頃と同じように全身に血液をめぐらせることができなくなります。

あなたの血管がひびの入ってきた固く古いホースだとすると、ポンプである心臓は、ギュッと力を入れなければ、スムーズに血液を循環できません。


高血圧はナトリウムを薄めるために血液の量も増やしますから、こうして高い圧力がかかり続ける古いホースはますます固く傷だらけになり、内側の薄い膜にも傷がつき、血栓ができやすくなって、血液の通り道がさらに狭くなっていきます。


●特に注意が必要な人は?

若い頃から血圧が高い人、タバコを吸う人、脂質異常症や糖尿病を合併している人、内臓肥満を伴っている人。


これらの症状が同時におこると、相乗効果で動脈硬化を進め、特に脳や心臓の血管壁の薄い血管が詰まりやすく、破れやすくなるからです。

腎臓の病気や心肥大、脳血管障害や網膜症などの臓器障害のある患者さんも心筋梗塞や脳梗塞をおこすリスクが高いので、それに応じた治療が必要です。