6、動脈硬化の危険因子
1)脂質異常
●脂質異常症が動脈硬化性疾患をひきおこす
「脂質(血清脂質)」というのは血液に溶けているコレステロールや中性脂肪などの脂肪分のことです。
これらが増えすぎると心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患をひきおこします。
脂質の異常だと診断されるのは、
○悪玉コレステロールが多すぎる場合
○善玉コレステロールが少なすぎる場合
○中性脂肪(トリグリセライド)が多すぎる場合
の三つです。
<脂質異常症の診断基準>
血清脂質の検査値がこのいずれかだと脂質異常症です。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)
----------140mg/dl以上
善玉コレステロール(HDLコレステロール)
----------40mg/dl未満
中性脂肪(トリグリセライド)
----------------------150mg/dl以上
※空腹時採血
増えすぎた悪玉コレステロールは、動脈の血管の内側にこぶ(プラーク)を作って血流を悪くして、ある日突然、血液が詰まり、最悪の場合には血管を破裂させます。
血管の状態を悪化させるのは、高血圧、タバコ、糖尿病、男性45歳以上または女性55歳以上、心臓病を起こした家族がいる、善玉コレステロールが少ない----この6つの条件(危険因子)にあてはまる数が多いほど、心筋梗塞などをおこす危険が高まります。
●悪玉コレステロールに基準を変更
以前は総コレステロール値を基準に診断していましたが、現在は動脈硬化性疾患により影響の大きい悪玉コレステロールの値を基準とします。
病名も、善玉コレステロールは値が高い方がいいので「脂質異常症」に変更しました。
ただし、診断名や薬が出るときには、これまで使ってきた「高脂血症」の名称も使います。
●どうして病気になってしまったの?
男女とも中年以降におこりやすくなります。
遺伝が原因の人はごくわずかで、ほとんどは長年の食事内容などが原因ですから、日常の生活習慣(食生活、運動不足解消、禁煙、飲酒の制限、ストレス解消、睡眠時間の確保など)を改善すれば管理できる病気です。
若い人たちの予防も大切です。
2)原発性高脂血症
●日本人の500人に1人は家族性高コレステロール血症の遺伝子異常を受け継ぐ
「原発性高脂血症」とは、遺伝子の異常が原因で、血液中の悪玉コレステロールをうまく細胞の中にとりこめず、血液中のコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう体質のことです。
中でも多いのは、家族性高コレステロール血症です。
両親のどちらかからその遺伝子を受け継いでいる患者さん(ヘテロ型)は500人に1人、両親から受け継いでいる患者さん(ホモ型)は約100万人に1人といわれます。
こういう体質の人は子どもの頃から悪玉コレステロール値が高く、放っておくとヘテロ型では30代、ホモ型では10代で心筋梗塞をおこすケースもありますから、ご注意をお願いします。
●家族性高コレステロール血症とは
ご両親やご兄弟に、とびぬけて悪玉コレステロール値の高い人や、50歳にならないのに心筋梗塞や狭心症をおこした人はいませんか?
アキレス腱・ひじ・ひざ・おしりなどの皮膚にコレステロールのかたまりができる「黄色腫※」という症状はありませんか?
お子さんが小学生なのに総コレステロール値が250~300mg/dl(普通は高くても170~200mg/dl)などという場合、すぐに専門医に診断を受け、治療について相談してください。
ご家族のだれかが医師にこの病気を診断されたときは、お子さんも含めてご家族全員で血液検査することをおすすめします。
※幼いお子さんから大人まで、アキレス腱・ひじ・ひざ・おしりなどの皮膚に「黄色腫」がよく現れます。
特にアキレス腱肥厚(アキレス腱黄色腫)・目の縁(眼瞼黄色腫)、目の縁に白い輪ができる(角膜輪)は特徴的です。
●遺伝性の場合の治療って?
薬物治療と生活療法で治療します。
遺伝性かどうか不明でも、家族は食生活や嗜好を共有しています。
遺伝性の場合は専門医のもとで、家族とともに健康管理をすることが重要です。両親から受け継いでいる人は片親だけの遺伝より重くなりがちなので、発見されたらすぐ、できれば子どもの頃から治療します。
片親の遺伝子からだけなら、男性はおよそ20歳から、女性は出産・授乳終了後できるだけ早く、薬物療法を開始します。