裏切りのサーカス | むすめの右フック

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裏切りのサーカス裏切りのサーカス (2011)

【監督】トーマス・アルフレッドソン
【出演】ゲイリー・オールドマン / キャシー・バーク / ベネディクト・カンバーバッチ / デヴィッド・デンシック / コリン・ファース / スティーブン・グレアム / トム・ハーディ / キアラン・ハインズ / ジョン・ハート / トビー・ジョーンズ / スヴェトラーナ・コドチェンコワ / サイモン・マクバーニー / マーク・ストロング


「久々に!な一本。」

イギリスの諜報機関、通称サーカス。
で、この中に、裏切りモノがいる!ってお話。

これ、お話は、とてもシンプルなんですけど
現在と過去が頻繁に切り替わるトコロ、要注意。
お話を見失っちゃう危険性、大!はっはっはっ

そのアタリ、デ・ニーロが監督したスパイ映画
グッド・シェパードに良く似てますね。
あ、地味~なトコロも良く似てる。

で、この映画、とても静かなんですが
そのアタリは、善き人のためのソナタに似てます。

で、幹部4人の中に2重スパイがってトコロは
割とあっさりしてて、ミステリーとしては弱いんですが
その見せ方が上手い。っていうか憎い。

各登場人物が抱える悩みや秘密がですね。
徐々に見えてくるトコロが面白いんですよ。
うん、人物描写が、とても素晴らしい。

これは言って良いかな?良いよね?
うん、傑作!はっはっはっ

*このあとネタバレ注意



*ここからネタバレ注意

この映画は、とてもリアル。ま、本物、知らないけど、あははっ
ソ連の諜報機関KGBとしのぎを削る英国諜報機関MI6ってお話で
派手なアクションを一切、排除した本格スパイ映画になってます。




サーカスと呼ばれる英国諜報部のリーダー<コントロール>は、サーカスの幹部の中にモグラ(2重スパイ)が潜んでいることを察知する。そして、スカルプハンターと呼ばれる実働部隊の一人、薄毛のジム・プリドーに極秘命令を出す。ハンガリーに行き、モグラの情報と引き換えに、ある将軍を亡命させろと。

ところが、この極秘作戦の情報が敵側に漏れ、作戦は大失敗に終わるんですね。薄毛のプリドーは拉致られ、コントロールは失脚、サーカスを去るコトに、で、その時、お前もな!と肩を叩かれ、え?俺もかよ!って巻き添え食っちゃうのが、この映画の主人公、ゲイリー・オールドマン演じるスマイリー。笑えないけどスマイリー

で、2人が去ったサーカスは、この失敗のせいで、アメリカから、お前のトコロには、情報渡せねえよと、相手にされなくなっちゃうんですが、新しくリーダーになったパーシー・アレリン。ビジュアル的には、下っ端な男なんですが、ソ連の高官を抱き込むコトに成功し、ソ連側の極秘情報を入手する。で、一気に株が急上昇!チンクリンなくせに!

で、そんな時、韓国のアイドル風な髪形をしたピーター・ギラムの元に、スカルプハンターのリッキー・ターから連絡が入る。モグラの情報を得たと、そこで、呼ばれるのが、サーカスをクビになったスマイリー。部外者の立場からモグラを探ってくれと頼まれる。もちろん極秘だ。

■ここで、興味深いのが、CIAの創設を描いたグッド・シェパードでは、CIAは、諜報活動のノウハウをこのMI6から学んでたのに、米ソの冷戦真っ只中では、完全に蚊帳の外に置かれちゃってるってトコロ。だからサーカスは、権威回復にやっきになってたんですね。

で、独断でモグラ調査をしてたコントロールは、この時、すでに他界してたんですね。おそらく口封じに殺されたんでしょう。で、スマイリーは、そのモグラ調査の引き継ぎをするんですが、その資料は膨大だ。で、その中に、サーカス幹部の写真が貼られたチェスの駒を見つける。それが容疑者だと言うわけだ。で、その中には、スマイリーの駒も、

ま、当たり前と言えば、それまでなんですが、スマイリーは笑えない。辞める時は一緒だよ!ってほど、絶大な信頼を得る右腕的存在だったのに、サーカス内部に裏切りモノがいると疑ってたことも、その中に自分も含まれてたってことも知らなかったのだから。

で、この映画のミステリーな部分のカギを握るのが、あの韓国アイドルヘアーのギラムの元に、モグラ情報入手!と連絡してきたリッキー・ターなんですが、彼はどこで、その情報を得たのか。

彼は、ソ連外交官の監視をしてたんですね。で、その時、虐待を受ける若妻に目を付ける。っていうか、ちょと惚れてしまったんですね。で、情報をくれたら亡命できるよと持ちかける。うん、ちょと駆け落ち気分だ。が、本部に連絡した途端、彼女は連れ去られちゃう。情報が漏れた。モグラがいる。

で、一方、スマイリーは、自分と同時期にクビになった分析官のおばちゃんから有力な情報を得る。ソ連の文化大使が自国の軍人から敬礼を受けている映像。普通、軍人は軍人にしか敬礼はしない。もしくは、元軍人か。だが、この大使館員の履歴には、元軍人と言う記載がない…。

スマイリーは聞いたコトがあった。ソ連諜報部のリーダー<カーラ>は、元軍人を使ってスパイ活動をしているというコトを、もしや、この大使館員がスパイ?そして、あのチンクリンのパーシーが、有力な情報源を抱き込んだと自慢げに言ってたけど、そのソ連の高官って、もしや…。

で、スマイリー、実は昔、その<カーラ>と会ったコトがあるんですね。当時、カーラは拷問を受けていた。で、スマイリーは、そんなカーラを引き抜こうとしてたんですね。私と君は同じだ。良いように使われるだけだ。なら、どちらで仕事をしても同じじゃないか。どうせ本国に送還されても処刑されるだけなんだしと、

スマイリーは見抜いてたんですね。スパイ稼業の虚しさを。が、そこでスマイリーは、らしくないミスを犯しちゃう。つい、自分のライターを渡しちゃう。自分の弱点が刻まれたライターを。そして、カーラは、本国に送還される。東側スパイとしての固い信念と共に…。

そしてスマイリーは、これからは、かなり危険な仕事になると、韓国ヘアーのギラムに忠告する。モグラの陰にカーラの存在を感じたスマイリーは危機感をつのらせたんですね。そして、身辺整理をしとけと言われたギラムは、同棲してる彼に別れ話を、そう、ギラムはゲイ。

■この映画、スパイのプライベートを赤裸々に描いてるトコロが、とても興味深い。彼らの生活は、意外と質素。そして、ゲイが多い。普段は女性に興味があるフリをしてるトコロなんて、とても芸が細かい。ゲイだけに、なははっ。で、実際にもゲイが多いらしいです。ほら、女性が相手だと根掘り葉掘り聞かれるじゃないですか。昨日、どこ行ってたのよぉ、ねえ、あ、まさか浮気じゃないでしょうね!って、ま、その点、うちの嫁さんなんて、旦那に全く無関心。うん、スパイの奥さんに持ってこいです。

そして、あの薄毛のジム・プリドー。彼は、冒頭の作戦失敗で拉致られてたんですが、実は生きてたんですね。田舎でひっそりと暮らしてた。そして、スマイリーが会いに行くんですが、そこで彼から、拷問を受けたコト、リッキー・ターが一目惚れした女が面通しで殺されたコトを聞かされる。

■この拷問シーンは、とても生々しい。あのグッド・シェパードも、元スパイの人から、無茶苦茶、リアルだ!とお墨付きをもらってましたが、これは、それに匹敵しますね。拷問されてる隣で、普通に新聞読んでる事務のおばさんとか怖すぎる。

で、さらに彼は、拷問の時、立派なライターを持った男がいたと言う。そして、そのライターの男は、ハンガリーの作戦の時にもいたと、そう、このライターは、スマイリーが、カーラに渡したライターなんですね。カーラは、今も持ち歩いてた。まるで、大切な人からの贈り物のように、君は、私の手の中だと言わんばかりに…。

で、スマイリーは、チンクリンなパーシーが抱き込んだソ連の高官が、カーラの差し金だと確信するんですね。そして、薄毛のプリドーが生かされてたコトで、ほぼ、モグラの正体も確信する。そして、最後の罠を仕掛ける。

モグラの情報を持ってるってコトで、モグラにとっては要注意人物のリッキー・ター。彼の所在をチラつかせれば、そいつはソ連側と慌てて連絡をとるだろう。そして、その連絡場所は、チンクリンなパーシーたちが、ソ連の高官と言ってる男との連絡場所。そこに現れるのがモグラだ!




この映画に出てくるスパイたちは、淡々として物静かなんですが、愛する者のためには、いじらしいほど素直な感情を見せるんですね。おそらく、誰にも本当のコトが言えない孤独さが、そうさせるんでしょう。

ただ、スマイリーだけは、表情を変えない。心から愛する奥さんが不倫しても、家を出て行っても表情を変えない。ただ、ラスト。それぞれの愛の行方が流れるラスト。これが堪りません。ここは、ぜひ、観てもらいたい。

そして最後まで顔が明かされないカーラとスマイリーの奥さん。このコトが何を意味するのか?そんなことを考えながらエンドロール眺めると、俺ってインテリだなってね。そんな優越感に浸れる一本ですね。はっはっはっ

Posted by 獅子王 on 2013/03/18 with ぴあ映画生活