このひとを手に入れたのは、PA01様 より早く、
SM-SX10様 の入手後間もない2007年の、5月の終わりのことでした。
音の増幅方式としては、最古参ながら最先端の、
でじたる方式の向こうを張って、今なお根強く存り続けている
真空管の奏でる音をば、まずは確かめたかったのです。
実はこのとき、わたくしには、「正妻」 と呼んで然るべき、
15年近く連れ沿った、管球あんぷがありました。
その 「正妻」 はわたくしよりも、10歳近く年上で、
往年の機器が最先端の、SX10様との歌合せをば
行う様への興味もまた、尽きないものではあったけど、
客観的な評価をば、果たして得らるるものかしら? とも、
それならいっそ世代も新たな、中国生まれのこのひとを、
大物量を投入したる、25Kgの魁偉な姿に、
銘球EL34のUL & 3結という、ふたつの発声方法も
マスターしているこのひとを、試してみたくなったのです。
その歌声には「管球あんぷ」 に、われわれが抱く期待像をば、
いい塩梅で具見化したと、思わせられたものでした。
UL接続の唱法は、力感にこそ溢れていても、
伸びやかさでは早々に頭を打って諦めてしまう、
やや残念を印象を拭えぬものではあったけど、
これがひとたび3結に、切り替えられたるあかつきには、
金の油を流したような、しっとり艶やか滑らかな中高域の潤いや、
ファジーな 「揺らぎ」 の再現性にも秀でた音像の立体感、
それらを泰然自若と支える、おっとりとした中低域も
ヒートアップが進むにつれて、弾力感と締まりが加わり、
すぴーか端子が接続先の 「いんぴーだんす」 の違いに応じて
複数備えてあることも、懐深いものでした。
例えば 「6おーむ」 と書かれている、すぴーかー達に繋がん時に、
4おーむ端子に接続すれば、慎み深い歌声で、
8おーむ端子に接続すれば、躾はいささか甘かれど、
小音量でも音痩せ少なく、押さえつけない開放感に
満ち溢れたる歌声を、容易に得られるものとして、
奏でんとする調べに合わせ、随分重宝したのです。
「らいぶ」 や 「肉声」にまみえた時の、気持ちの良さをばしっかりと、
多少デフォルメされたとしても、「喉」 が震える肉感を、
イメージできるものであり、いずれにしても音像と、
それらを囲む雰囲気との 「ブレンド感」 とでも言えば良いのか、
再生音を聞いてみて、ただ音源が、ただただそこに、
あるだけのように感じられたら、そいつはやっぱり不自然と、
そこには周りの空気やら、雰囲気やらも伴われねば、
そいつはどこかに違和感を、やっぱり感じてしまうものだと、
こうしたものを大事にしている、そうした意味ではSX10様と、
対照的な快感をば、紡ぎ出すように思われたのです。
。。。などと、べたぼめの一方で、
例えばチェンバロ演奏の、共鳴が醸す微細な響きや、
弦楽曲でのナイーブな、高弦パートの表現などが、
ほんの少々ウォームに過ぎて、埋もれてしまう印象も、
感じぬわけでは、無かったのです。