ハルメンズ再生――「『20世紀』から40周年 ハルメンズ復活ライブ第二弾」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

かつて「新宿鮫」と異名をとった俺だが、新宿の歌舞伎町に足を踏み入れるのは本当に久しぶり。新宿ロフトとなると、2019年1月19日(土)の山下達郎のアコースティックライブ以来か。多分、それ以外にもあるかもしれないが、いずれにしろ、このコロナ禍のため、ライブハウスからは遠のいていた。

 

久しぶりの新宿ロフトは、80年代の伝説のニューウェイブ・バンド、ハルメンズの復活ライブだった。サエキけんぞうは常にきっかけをくれる。

 

 

名曲を生かし、かつバンドを活性化する――そんなディシプリンを目の当たりにした。昨2020年12月4日(金)に新宿ロフトで、『ハルメンズの近代体操』でデビューから40年となる記念ライブ「ハルメンズ40周年記念ライブ ハルメンズの新世紀」で復活したハルメンズ。サエキけんぞう(Vo)、泉水敏郎(Dr)、石原智広(B)らオリジナルメンバーに、POLYSICSのハヤシ(G)、気鋭のピアニストの武田理沙(Key)、マルチプレイヤーの吉田仁郎(G)ら次世代メンバーを加えた新生ハルメンズは、新たな「伝説」を作り上げる。そして伝説、再び。先週、2021年12月10日(金)、同じく新宿ロフトで、『ハルメンズの20世紀』のリリースから40年を記念し、ゲストに浜崎容子(アーバンギャルド)を迎え、『ハルメンズの20世紀』の全曲をライブで再現する「『20世紀』から40周年 ハルメンズ復活ライブ第二弾」を開催した。

 

 

実は彼らのライブを見て、その数日前、12月7日(火)に東京「Bunkamuraオーチャードホール」で体験したキング・クリムゾンのライブを思い出していた。伝説のバンドの復活とはかくあるべき。トリプルドラムに圧倒されたが、その三重奏、三連打がダイナモとなって、キング・クリムゾンを懐古や郷愁を売り物にする、過去の遺物に堕することから救っている。かといって、時代に目配せし過ぎず、過剰に新機軸や新奇を取り込むことはしない。昔も今も天上天下唯我独尊が彼らに相応しいだろう。歴代のメンバーを揃えつつもキング・クリムゾンのDNAを持つ新世代のメンバーと有機的に結合し、2021年のキング・クリムゾンへとアップデートしていく。「クリムゾン・キングの宮殿」や「21世紀のスキッツォイド・マン」、「太陽と戦慄」、「Starless」、「ディシプリン」……など、過去の名曲が現代の名曲として蘇る。

 

そして、ハルメンズの復活も『ハルメンズの20世紀』収録の「ゴールデン・エイジ」、「マスクト・パーティー」、「ふにゃふにゃサイボーグ」、「母子受精」からアンコールで披露した「昆虫群」、「レーダーマン」、「電車でGO」まで、過去の名曲が現在の名曲として蘇る。やはりハルメンズも彼らのDNAを受け継ぐ、ハヤシや武田理沙、吉田仁郎、浜崎容子がハルメンズに新しいエネルギーを注入する。特にオリジナルメンバーの比賀江隆男の変態的なギターをリスペクトしつつも独自の解釈で再現するハヤシのギターが推進力を与え、武田理沙と吉田仁郎が煌めく音をまぶす。それにオリジナルメンバーも煽られ(!?)、ハルメンズの歌と演奏はヒートアップしていく。ヴォーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラムが絶妙に絡まり、一体となって疾走していく迫力は圧巻にして壮絶。ヌーヴォメタルならぬ、ヌーヴォニューウェイブだ。その破壊力はメガトン級(笑)である。

 

ハルメンズと言えば、過去には戸川純や野宮真貴など、“MUSE”の存在は欠かせない。新たなMUSE、浜崎容子が妖艶と凛然という魔法を2021年のハルメンズにかける。幸いなことに私達は退屈で同窓会的な懐メロを聞かずに済む。やはりニューウェイブはいつだってニューウェイブでなければならない。

 

 

あれから40年。青年期を過ぎ、成人期を経て、老人期に至る。本当の“焼ソバ老人”になっても“Q-P-ダンス”を踊り続ける。まさか、本人達もそうなるとは思ってなかったかもしれないが、熟練や味わいとは違うところで、その存在を証明していく――その稀有な例証がここにあると言っていいだろう。

 

 

オープニングアクトを務めたジョリッツもそもそもハルメンズを作る際、チョンチーズとともにバンド名の候補になったという由緒正しいバンドである。サエキけんぞう、泉水敏郎というオリジナルメンバーを吉田次郎(G、Kb)、オカジママリコ(B)、亀(G)という新世代メンバーが支える。ジョリッツそのものもニューウェイブのDNAを受け継ぎ、現在進行形のニューウェイブを標榜し、さらなる高みを目指す。

 

 

こんな微妙で曖昧な時代だからこそ、新たな再生や新たな活性が必要だ。真のニューウェイバーがニューウェイブの意味を改めて取り返そうとしている――新宿の片隅で起きた小さな革命を俺は見逃さなかった。

 

 

なお、本ライブのアーカイブ配信は12月17日(金)まで視聴可能。是非、一度、見てもらいたい。

 

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21-12-10ジョリッツSETLIST

 

0 ジョリッツ登場 (SE)

1. すり砕く

2.エモりゅーしょん2020

3.横丁ジョーズ

 

4.愛しさ分解オーバーロード

5.スワイプメン

6.ラブ・イズ・ガービッジ

 

7.STAPトゥギャザー

8,モアザンモア3°(新曲)

 

ハルメンズ SETLIST

 

第一部 

OPヴィデオ 

1.趣味の時代 (浜崎容子参加)

2.Q-P-ダンス (浜崎容子参加)

3.焼ソバ老人 

4.アニメイション

5.少年たち 

6.シングル・ハンド・ボーイ

7.幸福の未来 

8.マスクト・パーティー(浜崎容子参加)

サエキMC「B面にひっくり返します」

9.ジャングル都市

10.お散歩  (浜崎容子ソロ)

11.春の嵐 

12.ナルシスティック

13.ゴールデン・エイジ (浜崎容子参加)

14.ふにゃふにゃサイボーグ

15.母子受精

16.マスタード  (浜崎容子参加)

 

幕降りる 第ニ部

OPヴィデオ

1.昆虫群

2.ライフスタイル

MC

3.プレイゾーン(準新曲)

MC

4.ボ・ク・ラ パノラマ 

MC

5.隣の印度人

6.レーダーマン (浜崎容子)

アンコール:電車でGO