「ペットののがん」レオどうぶつ病院腫瘍科ブログは
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引き続きペットのがんに関する情報を提供いたしますので
こちらをご覧ください。
http://www.leo-ah.jp/blog/cancer/

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舌に発生した腫瘤を主訴に、4歳齢のマルチーズが来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-全身像

腫瘤は舌右側表面、先端より1cmの位置にあり、腫瘤の突出により舌は口の中に戻らない状態であった。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-局所
食欲はあるが食べにくく、カリフラワー状の腫瘤表面からは時々出血するとのことであった。

その他、一般状態は良好であった。

舌に発生した悪性腫瘍の可能性も疑い各種検査を行った。

検査の結果、転移を疑う所見はなく、診断と治療を兼ねた外科切除生検を行った。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-基部
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-舌裏

腫瘤は有茎状であり付着部は小さかったが舌の裏側の粘膜面に固着が認められたため、舌の一部をくり抜いて切除することにした。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-レーザーメス

舌は出血の予想される部位だが半導体レーザーメスの使用により、ほとんど出血もなく切除が可能であった。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-切除

吸収糸にて縫合し、手術は終了した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-縫合

麻酔からの覚醒後、舌の動きは良好。

ずっと出っぱなしだった舌も口の中に納まるようになった。

痛みは軽微で回復も早く翌日退院となった。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-覚醒

術後病理検査の結果は非上皮系細胞の増殖からなるものの、

各種特殊検査からも腫瘍を特定する所見は得られなかった。


帰宅後より、食べこぼしもなく上手に食べるようになり体重も増加した。

手術から約2ヵ月が経過する現在、再発もなく良好な経過を得ている。

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ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
シィシィーちゃんは8歳、雌のミニチュアダックス。

一週間前から呼吸が荒くなり来院した。


胸部・腹部X線検査を行った。
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

胸腔内には胸水の貯留を認め、肺は背側に圧迫され、

胸水貯留が呼吸困難の原因であることが分かった。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
腹腔内には腹水が貯留し、腹腔臓器の辺縁が不明瞭になっていた。

下腹部には腸管を周囲に押しやるような陰影から腫瘤の存在が疑われた。

超音波検査では下腹部にφ5cm大の左卵巣を疑う腫瘤を認めた。
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

右卵巣もφ2cm大に腫大していた。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
心疾患は存在しないことから胸腹水の貯留は卵巣腫瘍に伴うものが疑われた。



胸・腹水の貯留が悪性腫瘍の播種によるものであれば進行癌ではあるが、QOL(生活の質)改善を目的に以下の治療の選択肢を提示し、実施した。

○呼吸困難の改善を目的とした胸水抜去。

○今後、起こるであろう腹腔内巨大腫瘤の破裂の回避を目的とした腫瘤摘出外科手術。

○胸・腹水の再貯留を軽減させるための抗がん剤の胸・腹腔内投与。


全身麻酔下にて経胸壁的に薄い血様の胸水52mlを吸引抜去した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

呼吸の安定したところで腹腔内腫瘤摘出術に入った。

開腹し、貯留した薄い血様腹水を吸引すると腫瘤が現れた。

巨大腫瘤は術前の予想通り左の卵巣であった。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

卵巣は液体を貯留する多数の嚢胞状であった。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

左卵巣から左腎臓まで微細な嚢胞状の索状物が連続しており、左腎直上で結紮離断した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
φ2cm大に腫大していた右卵巣と肉眼上正常な子宮を含め、卵巣子宮摘出術を行った。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

術中、腹腔内に貯留した薄い血様腹水を160ml抜去した。

肉眼上、他臓器や腹壁に播種病変は認めなかった。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

抜去した胸・腹水からは多量の腫瘍細胞が採取され、腫瘍細胞が腹腔内・胸腔内に播種・転移していることが疑われた。


手術翌日、食欲もあり経過良好であったため、胸水・腹水の再貯留を軽減させる事を目的に、腹腔内・胸腔内シスプラチン投与を行った。胸腔内にはすでに癌性胸水の再貯留が認められ、30ml吸引抜去した後に投与した。


手術から3日目に退院し、3日に一度のピロキシカム投与を開始した。


病理組織検査の結果は卵巣腺癌であった。

左卵巣腫瘤から腎臓へと続く病変は転移病変であった。


手術から10日目に抜糸した。術前に1分間に60回あった呼吸数が20回に減少した。


その後、貯留があれば胸水の抜去とシスプラチンの胸腔内・腹腔内投与を継続している。

術後2ヵ月現在、胸水の再貯留を少量認めるものの、他臓器やリンパ節への転移所見は認めていない。

呼吸も安定し、食欲旺盛なため体重超過に注意しながら治療を継続している。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

抗がん剤の体腔内投与は静脈内投与に比べ体腔内の播種病変へダイレクトに作用するため、癌性胸水・腹水貯留に効果が認められている。


シスプラチンは体腔内投与時の組織浸透性が比較的高く効果が期待されるが、副作用である嘔吐の予防と腎障害から保護するための十分な点滴が必要である。


今後は肺転移などの抑制効果なども考え、抗がん剤の全身投与も検討中である。

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チーコちゃんは12歳の避妊済みの日本猫。

嘔吐後の低血糖性ケイレン発作を繰り返し、大学病院を受診した。

各種検査により、脾臓と腸管膜リンパ節への浸潤を伴う内臓型肥満細胞腫と診断された。

その後、オーナーは外科手術と術後の補助療法を希望して当院へ来院した。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―


当院初診時、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤、抗胃潰瘍剤の投与により発作は消失し、一般状態は落ち着いていた。

血液検査では血液中に肥満細胞が出現する肥満細胞血症を認めた。


当院受診5日目に、症状の緩和を目的とした対症的脾臓摘出術を実施した。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科― ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

摘出した脾臓はφ14×5cm大に腫大していた。肉眼上、肝臓は正常であった。

摘出した脾臓からの針生検では肥満細胞が大量に採取された。

病理組織検査と遺伝子検査(猫c-kit変異検査)を外部検査センターに依頼した。

術後は麻薬性鎮痛剤であるフェンタニルパッチを貼付することにより回復も早く、2日後に退院した。


手術から2週間後に抜糸を行った。食欲旺盛で嘔吐も認められなかった。

病理組織検査の結果は肥満細胞腫であり、遺伝子検査ではc-kit遺伝子の変異が認められた。

これは分子標的薬「メシル酸イマチニブ」が効果を示すことを意味している。

猫の肥満細胞腫に対するイマチニブの効果に関するデータはまだ少なく手探りではあるが、一日一回のイマチニブの投与を開始した。


術後24日の検診時、腹部超音波検査では肝臓や腹腔内に腫瘤病変は認めなかったが、血液検査で肥満細胞の出現と軽度貧血、肝パネルの上昇を認めた。

食欲の低下と10日に一度程度の嘔吐を認めた。

治療はイマチニブと抗胃潰瘍薬の投与を継続した。

薬を小さなカプセルに分注することで投与しやすくなり、その後の嘔吐の回数が減少した。


術後36日の検診では血中の肥満細胞は消失し、肝パネルも正常化した。

貧血傾向を認めたため鉄剤サプリメントを追加して、イマチニブと抗胃潰瘍薬の投与を継続した。


術後5カ月現在、貧血はあるものの嘔吐等の消化器症状は落ち着いており、再発・転移の兆候は認められず、良好なQOLを維持している。
ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―

分子標的療法は従来の抗癌剤治療に比べ、抗腫瘍効果は高く副作用は低いことから注目されている治療法である。現在、犬ではリンパ腫、肥満細胞腫、GIST等の腫瘍で効果が認められている。


猫の内臓型肥満細胞腫には脾臓摘出が効果的であることが分かっている。

今回、猫の内臓型肥満細胞腫に対し脾臓摘出を行い、術後補助療法として分子標的薬を使用し、良好な経過を得ている。

今後、猫の肥満細胞腫に対しても治療の選択肢として分子標的療法が期待される。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-初診時
晴ちゃんは8歳雌のコーギー。

右第2乳腺部のしこりを切除したところ乳腺腺癌と診断された。

手術から1ヶ月後に腫術創の横の脇の下にしこりを認め、

再発または転移が疑われた。

オーナーは藁にもすがる思いでホメオパシー療法を受けていたが、

半年後にしこりが急速増大したため当院へ来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-側面

初診時、右腋窩部皮下にφ7×5cm大の巨大な腫瘤を認めた。

乳腺腺癌の腫術創への再発は認めず、明らかな肺転移も認めなかった。

WHOの悪性腫瘍の分類では

T0N1M0 ステージ4の悪性乳腺腫瘍のリンパ節転移が疑われた。

転移病巣は巨大であったが触診所見より切除可能と判断し、

対症的リンパ節廓清術と補助的化学療法をお勧めした。


腫瘤は周囲との固着は軽度であり、慎重に剥離を行った。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-剥離
腫瘤底部に入り込む栄養血管の処理を行い摘出した。

腫瘤の急速増大と発情の時期が関連していたため、

同時に卵巣子宮摘出術も実施した。




ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後2日

手術2日後には術創周囲に軽度腫脹が認められたものの

経過は良好でドレインチューブを抜去し、翌日退院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-切除

病理組織検査では乳腺腺癌の腋窩リンパ節病巣と診断された。

腫瘤は薄い偽膜に被われており、

切除辺縁には腫瘍細胞は認めなかった。

同時に切除した卵巣には黄体形成が認められ

ホルモンの分泌が示唆された。


術後の補助療法として、

QOL(生活の質)を落とさない範囲での化学療法を希望され、

術後10日の抜糸時より

3週間に一度の低用量カルボプラチン投与と

ピロキシカムの投与を開始した。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後3カ月術創

現在、手術から4ヵ月。

術創部の再発や遠隔転移を認めず、

非常に元気に過ごしている。

化学療法による副作用も一切認められず、

3週間に一回の抗がん剤治療を継続中である。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術後3カ月全身


8歳のミニチュアシュナウザーが

発情1ヶ月後に外陰部から出血を認め来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-初診時

外陰部から排出していたのは血膿であり、

腹部超音波検査ではφ3.7cmに腫大した子宮内に液体貯留像を認めた。

血液検査では総白血球数3万/μlの慢性活動型炎症像を認め、

子宮蓄膿症と診断し緊急手術を行った。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-手術 ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-割面

摘出した子宮内には膿貯留を認めたほかに、

子宮体部から頚部にかけて壁の肥厚を認めた。

術後は順調に回復し2日後に退院した。


病理検査の結果は子宮内膜炎の他に、

子宮の肥厚した部分にはリンパ腫の浸潤性増殖が認められ、

子宮内膜組織原発のリンパ腫が疑われた。


手術より10日後の抜糸時に、今後の治療に関し以下の様に説明した。

*今回は子宮のリンパ腫病変を完全切除できたが、

 他の部位にまだリンパ腫が存在する可能性があること。

*リンパ腫は全身性疾患であり、たとえ今は他病変がなかったとしても、いずれ再燃してくること。

*リンパ腫は無治療では数カ月で命を落とす可能性が多いこと。

*治療は全身療法である化学療法(抗がん剤治療)がメインとなること。

*治療により完治することはないが、元気な状態で延命できる可能性があること。


その後みるみる元気になり手術から1ヶ月後には少し太ったと連絡が入った。

オーナーは子宮蓄膿症が治り元気になったことに満足し、

リンパ腫に関しては経過観察をすることとなった。



その後、来院は途絶えていたが、

手術から2年後、狂犬病ワクチン接種に来院した。

体重はさらに増え、調子は良好であった。



それから2カ月後に嘔吐と歩行困難で再来院した。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-全身像

来院5日前より嘔吐があり、たべてもすぐに吐出してしまうとのことであった。

他院で皮下点滴や吐き気止め等の治療を受けていたが病状は悪化し、

3日前からは歩行困難となっていた。

数日後に二時診療施設にてCT検査の予約が入っていたが、それまで持ちそうもないと当院に来院した。


すぐにリンパ腫の再燃を疑い、全身チェックをした。

体重7.4kg。削痩と脱水が認められ、2ヵ月前のワクチン接種時より1kg体重減少していた。

呼吸が荒く、動くことも困難であった。

腹部皮膚には紫斑が認められた。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-胸部XP

レントゲン検査では胸水貯留と気管の挙上が認められたことから前縦隔部の腫瘤の存在も疑われた。

肝臓と脾臓の腫大が認められた。


胸部超音波検査では胸水の貯留と前縦隔部にφ2cm大の腫瘤を2個認めた。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-胸水貯留

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-前縦隔腫瘤

胸部超音波検査では胸水の貯留と前縦隔部にφ2cm大の腫瘤を2個認めた。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-腸壁肥厚

腹部超音波検査ではφ1cm大に壁が肥厚した腸管を認め

FNA(針吸引細胞診)を行った。

大型で幼弱なリンパ系細胞を多数採取し、リンパ腫が疑われた。


血液検査では好中球数の増加(60101/μl)が認められ、

中型から大型のリンパ球も散見された。


そこで全身に播種したリンパ腫 ステージⅤbと臨床診断し、化学療法を開始した。


酸素テント内で過ごしていたが翌日には更に呼吸困難となり、胸水抜去術により約300cc吸引した。

少し呼吸が楽になったため酸素テントから出て、更に抗がん剤の投与を追加した。

黒色の下痢便を大量に排出した後に食欲が改善し、嘔吐も見られなかった。


その翌日、すっかり食欲を取り戻し、元気に退院となった。

オーナーの希望により、その後の積極的な治療は望まれず来院はされていない。




リンパ腫は基本的に全身性疾患であるため、治療の第一選択は全身療法としての化学療法であるが、局所に限局したタイプでは外科療法や放射線療法が適応となることもある。


今症例は他疾患の治療時に偶然見つかった子宮に限局した節外型リンパ腫であった。
病変を外科的に完全切除することにより、2年間の寛解期間を得た。


その間来院されなかったことから、私は既に亡くなっているだろうと思っていたので

2年後に元気にワクチン接種に来院した時には驚いた。

「手術でリンパ腫が根治することもあるのか?」と不思議に思っていた矢先に再燃を認めたのである。

オーナーもリンパ腫のことはすっかり忘れていたが、やはり再燃するのだ。


教訓となったのはリンパ腫は完全寛解しても必ずいつか再燃すること。

そして外科療法や放射線療法で寛解に導けたリンパ腫が再燃し、

全身に播種した場合も化学療法でコントロールできる可能性があることを再認識した。

いぬのきもち2009年1月号に掲載された犬のがん特集が好評でしたので、間もなく発売されるいぬのきもち5月号に再び犬のがん特集を監修しました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-表題

前回同様にがんを早期発見するために役立つ情報を書きました。


今回は「去勢手術や避妊手術をすることで、精巣腫瘍や乳腺腫瘍などを予防することができる」という話題も提供しています。



いぬのきもち読者から愛犬のがん体験談コーナーでは、みなさん「がん」と聞いただけで「不治の病」としてあきらめてしまう状況が多いことが分かりました。


人医学の方ではがんはもはや「不治の病」ではなく、「なるべく早く発見して治す病気」に変わってきています。


犬のがんも早期に発見することで治すことも可能な病気なのです。


がんを早期発見するためには犬にどのようながんが多いのか知ることも重要です。


5月号の記事の中ではからだの部位別に良く遭遇する腫瘍の特徴を紹介しています。

日ごろのスキンシップから体の変化を見つけることが重要です。

犬のがんの発生は7歳ぐらいから急激に増えます。

がん年齢になったら定期的な検診に、血液検査だけでなくレントゲンやエコーなどの画像診断を組み込むことが効果的です。

記事の中では気になる「がん検診」の一例も紹介しています。

ぜひ、がん特集をご一読ください。



また、この腫瘍科ブログもがんの早期発見にお役立てください。

実際の症例から、どのようにがんを発見し、どのように治療したか分かるようになっています。

紹介している症例のオーナー様の多くは、「みなさんのがん早期発見に役立てば」と情報提供していただいています。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―
リバちゃんは12歳のゴールデン・レトリーバー。

後肢の指先にできた腫瘤(しこり)が自壊して来院しました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-爪床MM

腫瘤は爪の付け根より発生していました。

細胞診により黒色のメラニン様顆粒をもつ細胞を認め、

爪床に発生した悪性メラノーマ(黒色腫)を疑いました。


リンパ節や肺への明らかな転移は認めませんが、

爪床に発生する悪性メラノーマは高率に肺転移しますので

対症的な治療として正常な関節部分からの断指術と

術後補助的化学療法をお勧めしました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術前

手術は無事終了し、術後しばらくはバンデージや靴を履いて保護しました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-術創 ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-靴

病理検査の結果は爪下悪性メラノーマ

核分裂指数が高く、非常に悪性度が高いことが示されました。

術後の肺転移を少しでも遅らせる目的で補助的化学療法を開始しました。


化学療法は低用量のカルボプラチンの注射とピロキシカムの内服を組み合わせて行いました。

抗がん剤は低用量でしたが、軽度の好中球減少症が認められたため、

そのまま低用量の化学療法を継続しました。

消化器症状など、化学療法によるその他の副作用は認めず調子よく過ごしていました。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-肺メタ
術後2ヵ月半に肺野全域にわたりφ5~7mm大の結節を多数認め、

肺転移を疑いました。

術後3カ月目には肺野の結節は増大増数しました。

呼吸器症状は認めず、調子も良いことから

化学療法は続行しました。


術後4カ月目には肺野の結節の増大傾向は認められず。

術後5ヶ月目の7回目のカルボプラチン投与時には

肺転移像が消失しました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-肺メタ消失

現在も元気に化学療法を継続中です。


一般に爪床悪性メラノーマは悪性度が高く高率に肺転移を起こすとされています。

外科切除により局所的には制御できますが、術後の肺転移を抑える効果的な治療はありません。

今回、術後肺転移を遅らせる目的で可能性にかけた補助的化学療法を行うことにより、

肺転移の出現を抑制できている可能性を感じました。

今後、米国で実用化されているメラノーマワクチンなど、有効な治療法が出てくることが期待されています。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-Tex

テックスちゃんは 17歳のビーグル犬です。

半年ほど前より、膀胱炎を繰り返していました。最近になり、再び血尿や排尿時のしぶりなどの症状が悪化してきたため、来院しました。

ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-echo
腹部超音波検査にて膀胱腹側に2cm大のしこりを確認しました。

幸い、しこりは膀胱三角部には浸潤していないようです。

腎臓や前立腺の状態は異常を認めません。

画像検査結果と臨床経過からは膀胱がんも疑われます。

切除手術も可能な段階ですが、高齢であることからオーナーは積極的な治療は望みません。

抗生剤とピロキシカムによる対症的な治療を開始しました。


治療の開始とともに血尿は止まり、膀胱炎症状も治まりました。

治療開始から4か月。

超音波検査では腫瘤の経度増大が認められるものの、幸いにも排尿障害は起こしていません。

老齢により、寝ていることが多いそうです。

このように老齢であったり、基礎疾患を持っていて積極的な治療を行えない症例にも、ピロキシカムは対症的効果が認められます。


先日、飼い主様よりテックスちゃんがご自宅で眠るように亡くなったとご連絡いただきました。

ピロキシカムの治療開始より11カ月、今月18歳を迎えるところでした。ご冥福をお祈りいたします。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-nina
ニーナちゃんは12歳、未避妊のラブラドール・レトリバー。

2年半前に右第5乳腺部の乳腺腫瘍を切除し、悪性乳腺混合腫瘍と診断されました。

1年前に左第5乳腺部の乳腺腫瘍を切除し、その6ヶ月後に同部位に再発した乳腺腫瘍を切除しました。いずれも病理組織検査は行っていません。

最後の手術後に術創部の炎症が認められ、抜糸時より術創部が徐々に腫脹してきたため当院に来院されました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-下腹部
当院初診時、左右の術創部は硬く板状のしこりを形成し、数珠状に連なっていました。しこり表面の皮膚は赤くただれ、熱感を持っていました。しこりの周囲皮膚には赤い点状の病変を認め腫瘍浸潤を疑いました。

胸部X線検査では肺転移を疑う所見はありませんでしたが、臨床症状より炎症性乳癌を疑いました。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-下腹部腫瘤
炎症性乳癌は犬の乳腺腫瘍全体の10%未満に認められますが、悪性乳腺腫瘍の17%を占めると報告されています。

腫瘍細胞は周囲組織への浸潤性が非常に高く、炎症を伴って拡がります。今回の様に板状の硬固なしこりを形成することがよく認められます。重度の炎症のため熱感を持ち、痛みを伴うことが多く認められます。

炎症性乳癌は周囲への浸潤性が高いだけでなく転移性も非常に高いといわれています。


現在のところ炎症性乳癌に対する効果的な治療はありません。

外科手術をすると今回の様に術後早期に激しい炎症を起こすのです。

効果の確認されている抗がん剤はありませんが、化学療法により遠隔転移を少しでもゆっくりさせる効果はあるかもしれません。

炎症と痛みを緩和する対症療法が適応となります。

抗生剤やステロイド剤、非ステロイド系消炎鎮痛剤による炎症や疼痛の緩和効果はわずかであると言われています。

それだけでは痛みを抑えられない場合にはフェンタニルパッチ等の使用が有効かもしれません。

放射線照射による疼痛緩和効果の報告はありません。


ニーナちゃんは抗生剤とステロイド剤の投与に反応し、しこりが軟化して皮膚表面の炎症も軽減しました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-炎症性乳癌1
その後、非ステロイド系消炎鎮痛剤であるピロキシカムの治療に切り替えました。

炎症と痛みが軽減したことにより動きが活発になり、以前よりも元気になりました。


ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-Tx4M
ピロキシカムを開始して4カ月。乳腺部の腫瘤はさらに縮小傾向を示しています。

ニーナちゃんは元気に今年もフィラリア予防を開始しました。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-Tx5.5m
ピロキシカムを開始して5ヵ月半。乳腺部の腫瘤はさらに半減。

調子が良くて体重が増えすぎてしまいました。



ペットの「がん」 ―レオどうぶつ病院腫瘍科―-元気5.5m

今回の症例は、病理検査結果がないことから確定診断はできませんが、臨床的には炎症性乳癌に合致する所見です。炎症性乳癌に対しては効果的な治療法がないのが現状であり、個人的にもピロキシカムがこのように効果的だったことは経験がありません。

転移性、浸潤性の高い乳癌にはピロキシカムが作用するCox2の発現頻度が高いとの報告があります。

ピロキシカムの効果に対して期待を感じた1例です。