法務に使える!基礎的な英語力を楽しく身につける方法・考え方tips | 日々、リーガルプラクティス。

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企業法務、英文契約、アメリカ法の勉強を
中心として徒然なるままに綴る企業法務ブログです。
週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。

本エントリは、法務系Advent Calendar 2015参加エントリです。

ここ最近は自分自身が非常にバタバタしていて、ブログを書く余裕もなく、「ヤバイやばい、なんのネタにすべきか」なんて色々と苦悩しておりました。

そうしていたところ、@ysaksmzさんが管理人の「ロンドンで働く弁護士のブログ」にて、「法律英語習得の秘訣、教えます」という同じAdvent Calendar参加のエントリがあり、「おぉなるほど~、すごいなー、けどちょっと意見として違うところがあるなー」なんて思ったので、英語を題材にしよう!ということに決めました。

本エントリのテーマは、「基礎となる英語力を、どうやって楽しく身につけるか、その方法と考え方を考えてみる」ということにします。

というのも、自分の中では、法律英語の習得というのは、何よりも英語力の基礎を身につけることの方が重要だと思っているからです。本当にきちんとした英語力が身についていれば、日本で巷に溢れている英文契約書の書籍に書いてあることの相当部分は読む必要がないし、質の高い法律英語や法律文書の英語に触れることで、その法則性とかポイントいうのが非常によくわかってくる、と思うからです。(そういう意味では、結論は@ysaksmzさんと一緒なので、着目ポイントが違う、というだけかもしれません。)

そして自分が思うのは、法律英語云々の前に、通常の英語(質の低い英語を除く)にどんどん触れる必要があって、だけれども基礎を知っておくと、触れる数に対しての学びが飛躍的に大きくなるのではないかな、と思っています。

本ブログを初めてご覧頂く方は、「って偉そうにあんた誰よ?」と思われるかもしれませんが、それは本ブログの自己紹介や過去エントリをご覧ください。といっても、どこまで本当に自分がちゃんとした法律英語ができているかは不明なんですが。。。ともかくも海外経験が浅い(留学経験は2ヶ月)なかで、英語を身につけてきた、というのが自分の英語に関する特徴です。



英語の基礎を身につける重要性


それで、自分が基礎的な英語力や英語的な感覚を身につけることが重要だな、と思う理由はいくつかあります。

まず、法律英語に触れる上で、きちんとした英語力があって、法律の素養が伴えば、自然と注意して目の前の単語に向かい合えるからです。要するに、リスクを察知する能力が、英語力があがれば高くなる、と。

例をいくつか挙げます。



Termination と Expiration

これは以前自分のブログの過去エントリで取り上げましたが、survival条項において、"The section 3 through 8 shall survive termination of this Agreement."といった表現を用いていたところ、契約の有効期間が単に終了した後については、"expiration"と書いていなかったので、survival条項が適用とならない、という類の判例がありました。

これも法律英語の問題、といえばそうかもしれませんが、そもそもの英語の問題です。"Termination"と"Expiration"では意味が違いますよね。

Expirationというのは、期限か切れた場合のことなので、契約であれば契約期間が自然と終了した場合を指します。一方、Terminationというのは、Expirationと同じ書面で一緒に使えば、expireした場合とは別の、一方当事者が契約を終了させた場合を指します。この2つが違うんだよね、ということが英語として分かっていれば、同じ単語が両方使われている契約書の中で、"The section 3 through 8 shall survive termination of this Agreement."という表現が出てきても、「あれ、expirationがない」って気づけます。仮に最初は気づけなくても、一回そのあたりを学べば、自然と頭に入って来やすくなります。(ただし、Terminationという用語はExpirationという概念も取り込めるので、そもそも契約書で"termination"という言葉しか使わなければいいじゃん、というのが、英文契約の第一人者であるKen Adams氏の持論。)



Preferred Stock

これ、翻訳サイトでそのまますると、「優先株」「優先株式」と出てきます。
日本法をばっちり勉強されている方だと、「あぁ会社法108条1項1号・2号で言う(配当等の)優先株か」ってなってしまうと思うんですが、英語ベースでよくよく考えると、「優先している株式」なので、「何が優先?」ってことになります。(このあたりの注意力--英語の意味に対する注意力と、当該英語に関連する法律を知らない、という意識--が持てるかどうかが、重要ではないかと。)

そんで調べればすぐに分かりますが、種類株式のことで、優先株のような優先配当権も含めた、または優先配当はないが、それ以外の広い意味での種類株式のことですね。このあたりも、英語力なく法律を先に学ぶと、逆に痛い目に会うことがあるので、英語力を挙げておく意味があるのではないかと思います。

ということで、英語の基礎的な力を学ぶことが、法律英語を学ぶための早道ではないか、と考えています。




英語はイメージで学ぼう!


では、働きながら時間のない中でどう英語の基礎を身につけることができるんでしょう。というか、英語の基礎って何ですかね?

自分は、英語の基礎というのは、英語のもつ「イメージ」を習得することだと思っています。

日本語と違って英語というのは、非常に多文化な方たちの中で発展してきた言語と言えます。そうすると、日本語にはあるような暗黙知、というのは、異文化の方に伝えてもよく分からないので、英語にはあまりないのではないでしょうか。どういったバックグラウンドの方に対しても、伝わるように英語は発展してきたと思います。なので、誰でもイメージが付きやすいような言語となっている気がします。だから比喩表現とかもかなり多い。そうすると、英語の持つイメージを身につけると、とても頭に入ってきやすい。

これもいくつか例を挙げます。



"Ring a bell?" "It doesn't ring a bell."

日本だと何か思いついたりひらいめいた時に「電球がピカーンと光る」というイメージがあると思います。なんで電球かはよく知りませんが、英語圏の人の中では、電球ではなくてベルが共通イメージのようです。日本人に、「あ、今電球が頭の中で光った!」と言う人はあまりいないと思いますが、外国人からそう言われれば、なんとなく言いたいことは分かると思います。でも英語では、そのような表現がそのまま正しい英語として使われています。

そう、"Ring a bell?"は「閃いた?」「思い出した?」、"It doesn't ring a bell."は、「いや、思い出せない」「分からない」という意味の表現です。



"You can say that again." "You said it."

これは「そうそう、同感!」「同意」「そう思います」みたいな感じ。これもイメージそのまま。「それ、もう1回言っていいぜ!俺もそう思うから!」「よくぞ言ってくれた!」みたいなイメージですね。



Don't be a statistic.

これは親が出かけ際の子供に対して言うイメージですかね。「本当に(事故とか犯罪とかに巻き込まれないように)気をつけなさいよ!」という意味です。しかもかなり念押し的な感じが強いですかね。どういうことか。

"statistic"っていうのは統計のことです。例えば犯罪に巻き込まれて死亡したり重症となった方とか、交通事故に巻き込まれた方の統計とかありますよね。その統計の中の1人になったらだめだよ!というイメージなんですね。だから”a”が付くし、付けないと意味が成り立ちません。




単語も冠詞もイメージが重要


そういう意味では、冠詞もイメージの世界ですね。英語に関する書籍として名著である、マーク・ピーターセン著『日本人の英語』
でも出てきますが、"I ate chicken last night"と言われたら普通で、そこにはchickenをどのくらい食べたかに重点がないので冠詞は不要なのですが、"I ate a chicken last night"と言われると、チキンを1羽分まるまる食べた、みたいなビビッドな光景が頭に浮かんできます。このイメージをもって英作文や英会話で冠詞に気をつけて触れていくと、徐々にその法則性に気づき、身についてくるものです。


話を表現に戻します。単語もイメージが重要です。こりゃ当然ですが。いくつか例を挙げます。




Current 

流れていること。流動的な状況をイメージしているので、「現在の」という意味合いもあるし、「傾向」って意味もありますね。「流動資産」でCurrent Assetという使い方もする。「固定資産」はNon-Current Asset。
「流行りの」という意味でも使いますよね。名詞としては「電流」という意味がありますが、少しかたちをかえて"Currency"として使えば、流通する、という意味合いがある「通貨」になります。



Liability 

債務や負債イメージで義務を表します。Liabilityは、"Lig"というのが「縛られる」という意味で、"Obligation"の"lig"と同じ。拘束性を意味するから、この用語が契約書でよく使われるのでしょうか。

Responsibilityは責任ですが、社会的責任やモラル上の責任も含みます。もう少し言えば"Respond"から来ている用語なので、反応することから意味が来ています。指す概念が幅広いんですよね。なので契約書ではresponsibilityという単語を使うことは滅多にない。例えば、この前のパリのテロについて、ISISが犯行声明を出したことを、英語で"ISIS claimed responsibility of the Paris terrors atack."というくらいです。

Liabilityに話を戻しますが、前述のcurrentと合わせれば、Current Liabilityが流動負債、Non-Current Liabilityが固定負債。ほら、イメージと共に1、2回目に触れれば覚えやすくないですか?




前置詞もイメージが重要


意外と日本の人が苦戦するのが前置詞です。でもこれもイメージによるところが大きいですよね。


at と to

例えば、次の2つの文、何が違いますかね。どんなイメージを抱きますでしょうか。

1. "I threw ball to him"

2. "I threw ball at him"

どうでしょうか。

"to"というのは、そこに向かっているイメージを指す前置詞ですが、向かう先を重要視していますよね。なので、「彼とキャッチボールをしている中で彼にボールを投げた」みたいなイメージです。

しかし後者は、"at him"となっています。"at"というのは、その後に着く単語の具体的なイメージは重要視しません。単なる点としか意識しない。だから、「彼に向かって石を投げつけた」みたいなイメージでボールを投げている感じがします。

この"at"のイメージは、比較的みなさん"arrive at"という表現で学ぶので知っている方も少なくありません。でも、こういうイメージは全ての前置詞にあります。



for

forには、2つ大きなイメージがあります。意外と②のイメージがあることを意識的に使っている人は少ないかもしれません。
①おおよそそっちの方向に(気持ちなどが)向かっている
②交換

例えば"present for you"というと、①のイメージで使っています。気持ちの場合はこうだし、電車が"bound for Tokyo"という場合には、東京方面、という意味です。終点は東京ではないけれど、そっちの方に向かう、的な。"bound to Tokyo"とはあまり言いませんが、言われれば、東京駅が終点か?という感じがしますね。

"I bought this book for 100 bucks"と言われれば、②の使い方で、100ドルでこの本を買った、という意味です。

このイメージがあれば、正しいかはわからなくても、使えます。例えば、「命を賭けても誓う」といいただければ、"I swear for my life."と表現できます。命と交換してでも誓うぜ、みたいな。これが正しい英語か別として、確実に意味は伝わります。



of

ちなみに"of" は、
①"off"と同じ意味で、離れる、というイメージ
②逆に「持っている」というイメージ
どちらもある不思議な前置詞です。

①については、"get rid of"(抜け出す)という熟語に使われたりしますよね。
②はみなさんよく使いますが、"table of my room"みたいな表現ですね。これはofの後のroomが所有しているイメージパターンですが、逆パターンとしては、"I informed him of the news"といった使い方があります。




文型もイメージ


文型もイメージのところはあると思いますが、こりゃ慣れが必要なので、改めて基本を勉強する、というのが早いのかもしれません。

強いて言えば、SVOCとかSVOOって、どういう単語の場合に使えるのか、が分からない、という人が多いのではないかと思います。というのも、英語を読めるんだけれども、書こうとすると、正しい英語が書けない、という人がよく間違えるのは、このあたりだったりするからです。

"I gave him a book."と"give"は目的語を2つそのままとれるけど、"introduce"は、目的語をそのまま2つ取れない。この違いが分からない、という方もいると思います。でもこれは、前述のようなイメージをする癖をつければ、慣れが早いのではないかと。"give me"と言われたら、その後に来るのは物だと想像付きますが、"introduce me"と言われたら、その後に来るのが人か物か、分かりませんからね。分かりにくければ前置詞を使ったほうがイメージしやすい。




類義語と反対語を探してセットで覚える


だいぶ長くなってしまいました。もう少し。。。あと英語の基礎を学ぶのに有効で、かつ法律英語に慣れるためにも有効なのが、類義語や反対語をセットで覚える、ということです。

ただポイントは、類義語については、「何が違うか」を意識し、反対語については、「何が法律的には反対語に当たるのか」ということを意識して学ぶ、ということではないか、と考えています。

例えば"breach"と”default”って、似たような意味ですよね。どちらも債務不履行的な。でも各英語のもつイメージをよく考えてみると、defaultというのは、non-performanceという状態をイメージしている単語です。一方、breachというのは、語源がフランス語で"break"を意味する"breche"という単語から来ており、まさに契約書を破ってしまうような、契約違反というイメージそのもの。だから、譲渡禁止条項に違反して譲渡してしまうことは、"breach"であって"default"とは言い難いです。indemnification条項なんかで、"If supplier defaults any provision of this Agreement"と言わないのは、このあたりに理由があります。これを使ってしまうと、譲渡禁止条項なんかの違反は該当しないことになってしまいそうです。

あとは前述のliabilityとresponsibilityなんかもそうですね。RightとRemedyも何が違うのか、なんて意識すると、普段の英文契約書の書き方や読み方が変わってきそうです。


反対語とセットで、というと、契約用語ではないですが、"merger"は合併、というのはすぐわかりますが、では逆に会社分割は?というと、普通の英語で調べると"split"とか出てきちゃうんですよね。英会話では意味が通じそうですが、文書系で使う英語だと問題がありそうです。"demerger"が会社分割ですね。といっても、準拠法によっては、この単語が必ずしも正しいとは限らないかもしれませんが。




最後に


だいぶ長くなりました。。。

いかがでしたでしょうか?

英語の基礎を学ぶことは、英語のもつ「イメージ」を学ぶこと、という持論をここまで展開してきました。

でも質の高い法律英語に触れたり、法律自体の理解を進めないとダメなこともたくさんあります。

だから結論は、どっちもやるべきですが、質の高い法律英語にいつも触れられる人は限られているので、まずは英語をイメージで覚えたり学んだりしちゃおうぜ!ということです。これで英会話ができるようになれば、どんどん自信がついてきますし、海外法務やりたくなります。


でも海外法務、っていうと、会話も使いますよね!?なので、最後に、英会話力を伸ばすのに有効だと思うことを。

それは、独り言英会話です。しかも、2つのポイントが重要。

①1人で2役やる(笑)

②ものすごくスムーズに言える文章を、ちょっと難しくして何度も言ってみる。

②については、こういうことです。「『あなたには兄妹が何人いますか?』って英語で言ってみてください」と言われれば、何も考えずにスムーズに出てくる人が多いと思います。でも「『あなたのお父さんには兄妹が何人いますか?』って英語で言ってみてください」って言われて、何も考えずに同じスピードでかまずに話せるでしょうか?

でも何回もそれを口に出して言ってみて、少しずつ早く言う練習をすると。。。頭の中で考えなくてもでてくるようになってきます。


以上で本エントリを終わります。長文失礼しました。

それでは@ahowotaさんにバトンタッチ!