日々、リーガルプラクティス。

企業法務、英文契約、アメリカ法の勉強を
中心として徒然なるままに綴る企業法務ブログです。
週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。


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Business Law Journal の記念すべき100号(おめでとうございます!)である2016年7月号から、「損害立証の基礎講座」という連載がスタートしました。


Business Law Journal(ビジネス ロー ジャーナル) 2016年 07 月号 [雑誌]
Business Law Journal(ビジネス ロー ジャーナル) 2016年 07 月号 [雑誌]


この連載の第1回は、損害算定における専門家の役割に関する内容でした。この記事の最後のほうで、アメリカの訴訟における専門家意見の証拠力を認定するか否かの基準として、Daubert基準に触れられていたので、これについて、(もしかすると過去のエントリーで触れたことがあるかもしれませんが)思い出したことを。これについて、企業法務担当者が関わることがあるとすれば、こんなことを念頭に置いてもいいのでは、という話。

まず、Daubert基準自体は、正直、企業法務担当者が理解しておく必要は、あまりないかもしれません。ただ、米国訴訟におけるポイントとして覚えておいたほうがいいかもしれない、と思うのは、

①科学的、技術的、その他専門分野に関する意見や見解は、「専門家(Expert)」によるものでない限り、証拠力は有しない(inadmissible)。

②「専門家(Expert)」であるか否かは、(陪審員ではなくて)裁判所が認定する。

③仮にある証人が専門家である(Expert Witness)と認定されたとしても、当該専門家の見解や証言は、当該事案に関連性があり(relevant)、かつ信頼出来る(reliable)ものと、(陪審員ではなくて)裁判所が一定の基準(これがDaubert基準)で認定しない限り、証拠力は有しない。

④連邦裁判所における裁判においては、Daubert基準が採用されるが、州裁判所における裁判の場合、州によっては、Daubert基準よりも、先進的な専門家意見の証拠力を認定しにくい基準(例えば、Frye基準または修正Frye基準)を採用している。

上記の4つくらいではないかな、と。(④も別に知らなくていい気がするけど。。。)

こと、この①と②に関連して重要なのは、自社の従業員の証言が証拠力を有するか、という場面です。

例えば自社の技術系社員の証言がキーポイントとなるような事例の場合、当該技術系社員の証言のうち、技術事項に関する証言について、それが証拠として認められるかは、当該技術系社員の意見が、専門家として認められるかが、1つのキーポイントになってきます。専門家として認められないと、証拠力が認定されませんので。



専門家として認定されるには?


ちなみに、この「専門家として認められるか」は、Daubert基準で、専門家の意見の証拠力が認定されるか、という判断の一歩前の事項です。専門家証人の意見に関するFederal Rules of Evidence (連邦証拠規則)702条を見てみます。

Federal Rules of Evidence §702

A witness who is qualified as an expert
by knowledge, skill, experience, training, or education may testify in the form of an opinion or otherwise if:

(a) the expert’s scientific, technical, or other specialized knowledge will help the trier of fact to understand the evidence or to determine a fact in issue;

(b) the testimony is based on sufficient facts or data;

(c) the testimony is the product of reliable principles and methods; and

(d) the expert has reliably applied the principles and methods to the facts of the case.

(太字下線は私による)



Daubert基準で専門家証言が信頼に足りるか否かを判断する、というのは、上記のFRE702条の(b)(c)(d)の認定(特に(c))に関するものです。でもその前に、専門家が"qualified as an expert"でなくてはならないんですね。この1つ前の条文であるFRE701条には、専門家でない素人の証人(lay witness)は、専門的な意見は述べられない、と書いてあります。

このFRE702条における専門家であるか否かの判断については、比較的緩やかで、資格があるとか、いわゆるスペシャリストである、という必要はなく、きちんとした教育やトレーニングを受けている、とか、十分な実務経験がある、といったことでも認定される、とされています(参考として、Garrett v. Desa Industries Inc, 705 F. 2d 721, 724-725, 及びUnited States v. Thomas, 676 F.2d 239, 245)。

なので、実務経験が十分にある技術者であれば専門家として認定される可能性がかなり高いわけですが、証言内容がその専門と少しずれる場合は、意外と認定について争われるかもしれません。またどういった教育を受けているとか、資格としてどういったものを持っているか、なども十分に関係してきますので、例えばデポジションの場面なんかでは、どういった部署でどういった経験を積んでいたか、ということも含め、そういったバックグラウンドについては、できる限り企業法務担当者がピックアップして、弁護士に伝えておくといいかもしれません。

ちなみに、この逆パターンもあるんですよね。当該従業員が、専門家として認定されるのを防ぎたい場合。これは、従業員の意見が、自社の採用するスペシャリストの意見と異なっている場合で、当該従業員の意見をあまり自社としては前面に出したくない場合ですね。このような場合は、そういった認識をしたうえで、デポジションのリハーサルに同席すると、デポジションを受ける従業員に対するアドバイスの視点がだいぶ変わるのではないか、と思います。

こういった点で、①とか②は企業法務担当者としても心に留めておいていいのかな、と。



Daubert基準とFrye基準についての雑感


③については、そういうものなんだ、と思っておけばよいのではないかと思っています。むしろ知っておくべきは、Daubet基準に基づいて専門家証言に証拠力が認められるかの判断については、激しいバトルになることが多い、ということ。専門家証言の証拠力を認めないように申し立てることをDaubet Motionって言ったりするくらい、このDaubert基準は超有名で、かつ肝になるみたいです。

Daubert基準自体は、知らなくてもいい気がする。ただ、自社の従業員の意見がキーになる場合は、当該従業員の意見がどれくらいDaubert基準に従って証拠力が認定され得るか、というのがポイントになるので、それを支えるような、文献とか論文とか学会発表などがどれくらいあるか、というのは何となく知っておいてもいい気がします。逆に、それを否定するような有力な見解が存在するのか、というのも聞いてみるといいかも。

「いや、これは私の独自論なんですよね。自信はあるんですけどね。文献もあるにはあるので。。。」

なんて証言をする従業員が言っているとすると、その従業員の証言は認められる可能性が高くないかもしれない、、、と思っていたほうがよいかもしれません。その前提で、訴訟の展開を予測しておく。

あと④も別に企業法務担当者が覚えておく必要はないかもしれませんが、カリフォルニア州は確か修正Frye基準(これも確かここ数年で新しい判例が出てきた気がしますが、調べる余裕はないのでご勘弁。。)だし、ニューヨーク州もFrye基準のようです(コチラのウェブサイトなどご参考まで)。

Frye基準の詳細も知る必要はないけど、一定の地域で、同様の専門家に受け入れられている見解でないと、証拠力を有しない、という考え方がFrye基準のベースなので、先進的な意見であればあるほど、なかなか認められにくそう、ということくらい知っていてもいいかもしれない、かも。



とりあえず、専門家証言に関しては、こういったことを認識しておくと、いざという時に、特に訴訟におけるデポジションのサポートを担当したり、訴訟の展開を予測するときに、有用ではないかな、と以前思ったことを、BLJを読んで思い出したのでしたー。

次回以降の当該連載も楽しみです。

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転職して2ヶ月が過ぎました。業務には慣れてきていますが、会社にはまだ慣れません。大手の企業ながらベンチャーっぽさもあり、かつ規模が大きすぎて、まだ各部署のことがよく把握できてらず、そして医療のことを把握するのは本当に難しい。ただ少しずつ実務のことが分かってくると、やっぱり面白い。投資案件も出てきた。自分はやはりトランザクション系の法務のほうが好きなのかな、と最近感じる今日この頃。グローバル法務といえばコンプライアンスのほうがニーズは多いんでしょうけどね。ニッチを行くほうが面白い、ということでこれもまたいいのかな、と。

ところで、今回の転職では、いくつかの人材紹介会社にお世話になりました。そして今の転職先と自分を結びつけてくれたのが、この著者の方です。ジュリスティクスの野村慧さん。

弁護士・法務人材 就職・転職のすべて All about carrier strategies for lawyers and legal persons
弁護士・法務人材 就職・転職のすべて All about carrier strategies for lawyers and legal persons
レクシスネクシス・ジャパン
2015-10-21

野村さんとは、とあるクローズドの法務勉強会でお会いして、ちょうど転職活動中だったので話を色々とさせてもらったのですが、まぁ、面白いキャラと真面目なキャラの双方を持ち合わせつつ、非常に熱意があり、とても聡明な方です。そして野村さんを通じてジュリスティクスからは様々な案件を紹介してもらいました。今回の転職活動でお世話になった人材紹介会社(*1)としては、ジュリスティクスとロバートウォルターズが圧倒的に良かったんですが(実際はロバートウォルターズは外資系案件の紹介が多く、海外法務がやりたい自分にはあまりマッチしないことも多かったけれども、それでも良かった)、それはもう少し経ってからまた詳しく触れようと思います。

そんなジュリスティクスですが、こんな記事をジュリナビでアップしています。

2016年5大事務所のパートナートラック

こういうデータを人材会社が収集して加工している、というのは、ありそうであまりないのでしょうか。2ヶ月前の4月時点での5大事務所の新人弁護士採用状況や、採用者の出身校比率、パートナー昇格時期、男女比率、採用数の変遷等々のデータが掲載されていますが、法科大学院生としても、弁護士としてのリーガルマーケットを意識している人にとっても、興味深いデータだと思います。こういうデータを見るときは、考える視点をどこに持つのか、によって多様な見方がありますよね。そしておそらく、単年度で見てもあまりよくわからないけれど、とある視点をもったうえで、数年のデータを見ると、面白いかもしれません(ちなみに昨年のデータはコチラ)。個人的には、予備試験合格者の採用割合が昨年よりも更に高いことが、ある意味想定できることではありますが、興味深い点でした。

あと自分が個人的にとても興味をもったのが、レバレッジレイシオです。これは、パートナーとアソシエイトの比率を表す数値として、弁護士事務所の経営では大きな指標とされる数値のようで、この前、とある大御所(だけど若手の)弁護士の先生に教えていただきました。

何が興味深いか、というと、これをどういう指標に使うのかなぁ、という点です。その弁護士の先生が教えてくれたのは、「パートナー」の定義によっては、レバレッジレイシオの見方がものすごく変わる、ということ。確かにそうだと思うけれど、それ以上に、自分にはこの指標をどういったマイルストンに使うのか、まだイマイチピンときません。というのも、アソシエイトの報酬によっても、パートナーの報酬によっても、もちろん各報酬体系によっても、ここは全く数値の出方が異なってくる。そして、レバレッジレイシオを営業利益率的に見るのであれば、報酬ベースで比較しないと意味がないのではないか、という気がする。新人育成や人材の流動性で考えれば、人数比でも参考になるかもしれないけれど、年齢が反映されない。レバレッジレイシオが高ければ高いほど営業利益率的にはいい可能性があるけれども、パートナー競争は激しくなる。

なので、この指標は、各事務所内にとっては何かの指標になるのはなると思うのだけれども、事務所間で比較して意味が本当にあるのか。その先生が言う、「パートナーの定義が変わると意味がだいぶ変わる」ということからしても、果たして事務所間のレバレッジレイシオ比較にどのくらいの意味があるのか。まだ良くわかりません。でも過去のデータと照らし合わせると、事務所の各傾向が見えて来る、ってのはありますね。でももっといい指標もある気がするけれど、それは弁護士事務所の経営にまだ余裕がある現れなのかもしれない、なんて思ったりする。

あとは仮説として、実は事務所間で報酬に大きな差がないのではないか、ということも考えました。そうであれば、比較する意味がある。しかしそこは仮説にすぎないし、違う気もかなりする。

ということで結論はでません。もう少し色々と勉強しないと良くわかりません、、、が、レバレッジレイシオについては、頭の片隅に置いておこうと思います。


(6月8日追記)
*1 ジュリスティクスを人材紹介会社として取り上げましたが、野村さんによれば、ジュリスティクスは、エージェント事業を1つの事業としている会社ではあるものの、人材紹介会社ではなく、司法制度改革を推進していくことを目的とした事業会社で、運営しているジュリナビなんかは、文科省の助成を受けて運営を委託されている、とのこと。そのため、例えば文科省からの委託で「法科大学院修了生の活動状況に関する実態調査」というレポートを作成するなど、通常の人材紹介会社が手掛けない業務を行っているようです。
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あまり税務関係の話題は取り上げることがありませんが、今日はこの話題。

最近(というかちょっと前に)話題となっているBEPSへの対策として、OECDはBEPSプロジェクトの最終報告書を出し、それに応じて、OECD加盟国を中心としてBEPSへの取り組みを国内法制化していますよね。日本も、平成28年度税制改正によって、連結決算ベースで1,000億円以上の多国籍企業集団の最終親事業体に、マスターファイルの作成義務が課せられることになり、また所定の規模以上の国外関連取引に係る関係会社に関するローカルファイル作成義務も明確化されました。そして、国別報告書(CbCR/Country-by-Country Reporting)の作成も義務化されます。

このマスターファイルとローカルファイルについては、これまでも(一定のローカルファイルはよく分かりませんが)それなりに多くの企業で作られていたはずだと思いますし、正直、どちらのファイル作成についても自分の業務には関わりがないので、あまり関心をもっていないのですが、自分が気になったのは、国別報告書です。

日本の税制改正では、国別報告書の提出義務なので、開示義務ではありません。しかし、EUでは、国別報告書の開示義務が案として出されているようです。EUの会計指令(Accounting Directive)の改正案として欧州議会及び理事会に提出されているとのこと。英国等、先立って開示が法制化されているところもある模様。

気になっている、というのはこのあたりに関してです。国別報告書は、各国における売上高とか経常利益、及び納税予定額等を一覧として記載するわけですが、例えば1カ国に1社の子会社しかないと、当該子会社の売上高とか経常利益とか、納税予定額とかがバレちゃうわけです。子会社の財務体質が開示されうる、というのは、結構ツライ場合もあるかもしれないですね。

また、この国別報告書が開示されることで、納税状況とか利益状況とかも明らかになるので、それに関心を寄せる株主なんかもいて、株主総会で質問してくる人とかも出てくるのでは、、、なんて。個人の株主が直接国別報告書を見に行くことはなさそう、と思いつつも、自社のウェブサイトでも開示義務が課される案となっているようだし、こういうのは、NPOとか、メディアが、取り上げて各社を比較する可能性もある(特にNPOはやりそうな気がする)ので、それを見て株主が質問してくる、ってこともあるかもしれません。納税額が高過ぎれば高過ぎるのでは?と言われるんでしょうかね。低すぎれば、それはそれで問題、みたいな。

そのあたり、どうなるのかなー、というのが、気になった、という話。

そういえば、米国では、ドットフランク法1502条に基づくSEC規則で、自社の製品に使われている紛争鉱物(Conflict Mineral)がコンゴ民主共和国その他周辺諸国(DRC)の武装勢力の資金源に利用されていないか、の調査報告書をウェブサイトで開示せよ、と義務づけていた部分が、表現の自由の観点から憲法違反、とされて不適用となったことがありました。さすがに今回の国別報告書は、こういう問題は生じないですかね。。。(状況が全然違うし)
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