エトナ火山、世界遺産への道 最終編 | Al Cuore dell'Etna

Al Cuore dell'Etna

イタリア・シチリア島の活火山エトナに恋して、長年その麓で自活してきました。帰国した後もエトナ山の「心」に自分の一番良い物を捧げたい。今日も元気な活動を続けるもう一つの「エトナ」のお話しです。

皆さん Ciaoパー


昨日のユネスコの発表で世界遺産登録が決定し、アルコールではなく興奮の大杯カクテルグラスを呑んでしまったおかげで、まだ第七天国から地上に戻ってきていないエトナでございます。


今日が土曜で良かった(笑)

仕事も勉強もこれでは手がつけられませんにひひ


画像や動画を入れながら楽しくお喋りしてきました、「エトナ火山、世界遺産への道」シリーズも今回で終わります。


どうぞ、もうしばらくお付き合いくださいませ。


Viaggiatore さんがエトナ山のために(特別に!)ユネスコの登録文献を和訳してくださいましたが、転用の許可を得ましたので掲載させていただきます。


また、一部イタリアの新聞を参考にしておりますので、イタリア語が分かる方はぜひ覗いてみてくださいませ。


La repubblica紙の記事『ユネスコ、エトナ山を人類の遺産として登録』 Corriere del mezzogiorno カターニア地方面『ユネスコ、エトナ山世界登録へ』


(ワタシ、英語がよくわからない上に、イタリア語も字が小さいから読みにくいのよねぇ・・・汗)


Al Cuore dell'Etna

噴火中のエトナ火山。ギリシャ遺跡のある有名なタオルミーナ Taormina 方面の海上沖から撮影されたものと思われます。


自然遺産登録物件


エトナ山(イタリア) 登録基準(8) Mount Etna



Al Cuore dell'Etna-タオルミーナ、ギリシャ劇場跡とエトナ山


“エトナ山”(イタリア)は、シチリア島の東側の海沿いに位置しているエトナ山の頂上付近にある自然のままの19,237haを含む、まるで肖像のように美しい地域である。


エトナ山は地中海周辺で最も高い火山島であるとともに、世界で最も活発に活動している成層火山である。


その噴火の歴史は50万年前にまでさかのぼり、少なくとも2700年前からの現在までの活動は、残された文献により証明されている。

これにより、世界で最も古くから活動の記録が残されている火山の一つであるといえる。

このずっと継続した噴火活動の多くは、これまでの火山学や地球物理学、その他の地球科学の領域に影響を与えてきている。


また、これらの火山活動は、その地域特有の植物相や動物相などの生態系を支えてきたものであり、生態や生物の進化過程の研究にとって、自然の研究室となっている。


Al Cuore dell'Etna-サポナリア・シクラ

標高2.000m辺りまで火山灰の上に生息するサポナリア・シクラ Saponaria sicula (シチリアンサポナリア) トゲトゲが生えた高山植物で、サボテンのように植物の周りを囲うようにピンクの可愛い花が咲く。


Al Cuore dell'Etna-エトナ山と溶岩の上に咲くエニシダの群落


エトナ火山と、溶岩の上に成長するエニシダの花の群落。マメ科のエニシダは噴火後150年には生育し始め、根で溶岩を砕いて土を造ることで他の植物の繁栄に貢献している。

花は大変香りが良く、5月下旬になると山中で夢のように甘い香りが楽しめる。



山頂の火口、円錐形をした火山灰(スコリア丘のことでしょうか?)、数ある溶岩洞窟、そしてヴァル・デル・ボーヴェ爆裂火口が形造った渓谷などのように、火山の様相に近づけるさまざまな場所は、これらの研究にとっての最初の場所とされている。



Al Cuore dell'Etna


山頂の火口群。主要な火口は現在四つで、中央火口(Cratere Centrale)を除いて北東火口(Cratere Nord-Est)・中央火口の隣にできた新火口(Bocca Nuova)南東火口(Cratere Sud-Est)は全て1911年以降に誕生しています。



Al Cuore dell'Etna


エトナ山の噴火は山頂からだけではありません。

現在は、特に火山の南東側を中心に数多くの山腹噴火を起こし、そのたびにかわいらしい丘(二次火口)を造っているのです。一度形成された火口内部にあるマグマの通路(火道)は固結してしまうので、次にその付近に上がってきたマグマは別の道を造って前の丘の近所から噴き出すのです。こうしてエトナ山は少なくとも60もの二次火口をもつ子だくさん!!この数も世界一と言われています。



Al Cuore dell'Etna-エトナ山 ホルニートス


側噴火(山腹噴火)の小規模な火口では、噴出力が弱いと、このように岩石が周りにペタペタと落ちて小高い丘を作ります。これをスペイン語の塔という意味でホルニートス hornitos と呼びますが、エトナ山ではよく見られる現象です。




Al Cuore dell'Etna-溶岩流で


溶岩が流れていく過程で形成される洞窟。流れの表面と先端が冷えて固まり、中に取り残された高温流動体の溶岩が先端を突き破って流れ続けます。こうしてエトナ山の溶岩は表層の保温効果のため、かなり遠くまで流れ下って行くのです。


エトナ山は上記のような溶岩流の性質から、溶岩洞窟の数の多さでもなんと世界一を誇るといわれているのです。

このように溶岩流の表層が固まってできた地下の長~い空洞を、火山学では溶岩トンネルとか、ラヴァ・チューブと呼んでいます。



Al Cuore dell'Etna-エトナ山の洞窟内部


洞窟内部には溶岩の中に溶け込んでいた化学物質が浸透してきた雨水に溶け、まるで鍾乳石のように垂れ下がることがあります。また、雪解け水が浸透して氷穴も造ることがあります。

この洞窟を、山の人々は貯蔵庫やカンティーナとして使い、小さな礼拝堂にさえ用いてきました!



Al Cuore dell'Etna-Valle del Bove 爆裂火口

エトナ山の東に位置する巨大なValle del Bove ヴァッレ・デル・ボヴェ渓谷。現在活動しているエトナ山(Mongibello Moderno 新モンジベッロ)の前身(Mongibello Antico 古モンジベッロ)のさらに前の代(Trifoglietto トリフォリエット)という火山の山頂部が、約6万4千年前に陥没してできたカルデラであるといわれています。


カルデラ壁のSchiena dell'Asino スキエーナ・デル・アシノ(画像上部に記載)とは、「ロバの背」のこと。当時ロバでエトナ登山をしてきたシチリアーノらしい表現です。

エトナの観光スポットに入っていますが、落差1000mはありますので、落ちたらまず助からないでしょう。

強風の日には壁の先端に近づきすぎないよう、特に小さい子にはくれぐれも注意してくださいね。


現在の活動ではほとんどの溶岩流がここに流れ込んでいるため、山腹の村は影響を受けないことが多いのです。いわゆる自然の堤防ですね。



こうしてユネスコは、「その科学・文化・教育的価値は、世界的な重要性を持つものである」という言葉で審議を締めたそうです!ぱちぱち


私は残念ながら中継を見逃しましたが、Viaggiatoreさんによると、各国の代表たちも絶賛、日本の代表も賛成のコメントを述べていたとのことでした。

一足早い、世界遺産・エトナ山への旅、お楽しみいただけましたでしょうか?


さてエトナ山は、登録基準(7)(8)(9)をもってノミネートされましたが、(8)だけが認められての世界自然遺産に登録されました。


ここで自然遺産の登録基準とは何ぞやというおさらいをしましょう。


(7) ひときわ優れた自然美 
(8) 地球が生成されてきた主要な段階を示す顕著な見本。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
(9) 生態系や動植物の進化の過程が見られること 
(10) 絶滅の恐れのある野生種が生息していること


シチリア島のシンボルであるエトナ山は、だいたい3,340mの成層型火山、一方日本のシンボル富士山は3,776mの同じく成層型火山です。


しかし、富士山の方は残念ながら地球生成の過程や動植物の進化の過程が確認されないため、自然遺産の登録基準を満たすことができませんでした。


したがって文化遺産としての登録を目指しており、本日の午後、いよいよ登録の審議を受けることになります!


今回の記事を書くにあたり、世界遺産専門にブログを書いておられるViaggiatore さんには大変お世話になりました。

本当にありがとうございます。


沢山ある世界遺産の紹介、観察の意義などに関心がある方は、ぜひ『自然遺産楽』 ブログに遊びに行ってみてくださいね。

色々な遺跡のことをとてもわかりやすく説明してくださっています。


さて、こちらのエトナの方は・・・今度は興奮の大杯じゃなくて、本物のシチリアワインを探しに行ってきますね!ワイン

スカイプでエトナ山の人々と乾杯しまーっす!!