冬季の双極性うつ状態とガバペン | kyupinの日記 気が向けば更新

冬季の双極性うつ状態とガバペン

デパケンRとガバペンはいずれも抗てんかん薬だが、前者は単剤投与できるが、後者は単剤投与できない。デパケンはリーマスと双璧と言える古典的気分安定化薬だが、近年では抗てんかん薬でもあるラミクタールがこれに加わる。

 

ラミクタールは双極性障害のうつ状態に有効と言われるが、この説明は、躁状態に比べよりうつ状態に適しているといったところで、劇的に効く人はむしろ少ない。

 

双極性障害のうつ状態はしばしば冬季に悪化し、次第に暖かくなるにつれて温和な躁状態に移行し、うつ状態が緩和する傾向がある。

 

今回の記事は、このくそ寒い時期、希死念慮に苛まれている人たちへの治療アイデアである。

 

臨床では、新規抗てんかん薬のガバペンが双極性障害のうつに有効な場面に遭遇する。そのような人はデパケンRに比べ、むしろうつ状態への効果が期待できるように見える。元々、ガバペンは単剤投与できないので、双極性障害の場合、デパケンRないしリボトリールが併用されていることが多い。近年だと、主剤がラミクタールのこともある。

 

ラミクタールは双極性障害には今一つどころか全く有効に見えないことも稀ではなく、モーズレイで酷評されているのはやむを得ない。

 

以前には、ガバペンは、うつ状態や双極性のうつ状態に有効なことがあり、試みる価値があると言う記事をアップしている。しかし、エビデンス的には知見が極めて少なく、これほどの勢いで良いと言っているのは自分くらいのものである。

 

今回の記事の重要な意図は、ガバペンの適切な用量について。本邦の添付文書的には2400㎎まで使えるとされている。

 

過去ログのレグナイト の記事に以下のような文章がある。この記事は非常に重要なので、興味のある人は全文を精読することをお勧めする。

 

むずむず足は特発性のものもあるが、いろいろな疾患(精神科だけでなく、内科、外科も含む)の付随症状として診られることが多い。今回発売されるレグナイトは新規抗てんかん薬の1つガバペンのプロドラッグである。だからガバペンで中毒疹が出たような人は使えない。(本名はガバペンチン エナカルビル)ガバペンももちろんむずむず足症候群に有効であるが、これも正式な適応はない。ガバペンは吸収の際にばらつきが生じやすいため、用量により比例して血中濃度が上昇するように工夫された薬剤がレグナイトなのである。

 

つまり、ガバペンは線形に投与量に応じて血中濃度が上がりはしないのである。したがって、処方マニュアルでは気分障害などてんかんではない精神疾患には、1200㎎程度を推奨されているが、この量が適切かどうかは人による。

 

1200mgから、2000㎎前後まで増量し、特に冬季の双極性うつ状態に劇的に効いた時、患者さんの喜びというか、感動は相当なものである。それは、この冬の期間、棒に振るようなことにならないからである。

 

まとめ

ガバペンは双極性障害でのデパケンRの代替になりうる。もちろん併用でもよく、おそらく併用で投与されることの方が多いであろう。デパケンRに比べ、ガバペンはよりうつ状態に作用がシフトしているが、ラミクタールとは作用点が全く異なっているように見える。用量は1200㎎くらいで妥協せず、一応、個人差を考慮し、最高量(2400㎎)まで試みるべきである。副作用に眠さやめまいがあるが、概ね服用しやすい抗てんかん薬である。注意点として、ガバペンはリーマスと併用できない。これはリーマスはてんかんに禁忌とされているためである。

 

参考

レグナイト

双極性障害のうつ状態エピソードに対する治療についてNEW!

 

今日の記事は、ボツ原稿からの投稿です。