レグナイト | kyupinの日記 気が向けば更新

レグナイト

むずむず足症候群の治療薬、レグナイトは2012年4月に薬価収載され、同月に発売になるようである。

むずむず足症候群(restless legs syndrome、RLS)は、過去にはリボトリールが治療薬として使われていたが、リボトリールには実は正式な適応がない。

現在、むずむず足の正式な適応を持つ薬物はビ・シフロールだけであるが、今回、レグナイトが加わる。レグナイトの名の由来は知らないが、なんとなく雰囲気は伝わる。

ビ・シフロールとレグナイトが発売になっても、臨床では適応外でも最初にリボトリールが使われるであろう。

ビ・シフロールは、実用上困るような奇妙な副作用があるからである(意識消失)。車に乗るような人には怖くて使えない。(過去ログで実際にその副作用に見舞われたことを記載している)。

むずむず足症候群は実に患者さんが多い疾患?らしく年配の女性に多い。日本人の有病率は2~5%くらいである。

また、むずむず足を主訴に精神科に受診することは稀なので、一般には内科系に受診することが多いのではないかと思う。精神科で診るのは、リエゾンの際に患者さんにたまたま合併した所見などである(腎不全で透析中の人など)。また向精神薬で治療中にこの所見がみられることもある。(参考

しかし、この症状で長く困っている人は皆無と言って良いので、比較的治療しやすい症状と思う。メージ症候群の方がはるかに扱い難い。

むずむず足は特発性のものもあるが、いろいろな疾患(精神科だけでなく、内科、外科も含む)の付随症状として診られることが多い。

今回発売されるレグナイトは新規抗てんかん薬の1つガバペンのプロドラッグである。だからガバペンで中毒疹が出たような人は使えない。(本名はガバペンチン エナカルビル)

ガバペンももちろんむずむず足症候群に有効であるが、これも正式な適応はない。ガバペンは吸収の際にばらつきが生じやすいため、用量により比例して血中濃度が上昇するように工夫された薬剤がレグナイトなのである。

レグナイトはアステラス製薬から発売されるが、実はアステラス製薬はガバペンは扱っていない。ガバペンはファイザーにより販売されている。

レグナイトは300mg錠しか剤型がなく、基本的に2錠、つまり600mgを服用するようになっている。夕食後に2錠服薬するのが基本である。薬に弱い人は減量できる(300mgなど)。

むずむず足症候群は重い不眠の原因になっていることがあり、そのような人はこれらの薬を併用することで他の眠剤が減量できる。

また、線維筋痛症の人にむずむず足症候群が合併することがある。線維筋痛症は最近ではリリカが治療薬として知られているが(まだ適応がない)、実はリボトリールやガバペンも有効である。線維筋痛症はまたトラムセットも非常に有効であるが、むずむず足症候群にも低力価オピオイドは有効と言われている(適応なし)。この2つはその合併や有効な薬物の類似点を含め非常に興味深い。(線維筋痛症では30~60%にむずむず足症候群が合併すると言われる)

トラムセットはアセトアミノフェンとトラマドールの合剤である。トラマドールは癌の疼痛に使われるオピオイドで、これがかなり薄められてトラムセットに含まれている。

トラムセットをシビアな疼痛のある線維筋痛症の患者さんに処方するのを躊躇う医師はアホであろう。

トラムセットに含まれるオピオイドが躊躇わせる理由であるが、トラムセットで嗜癖になるような人は2万人に1人と言われている。精神科的に重要と思われるのは、アセトアミノフェンやトラマドールにも抗うつ効果があること。これはトラムセットの添付文書の最後の方にも記載されている。(注:トラマドールは麻薬に指定されていない)

リリカとトラムセットはともに疼痛に有効で温和な抗うつ作用があるが、決定的な相違がある。それはリリカがしばしば体重増加を来たすのに対し、トラムセットはそうではないこと。むしろ悪心嘔吐の副作用が多い。

しかしながら、重い線維筋痛症の人は消耗しているのか著しく痩せて食欲も細っていることも稀ではなく、リリカの方がやはり出番が多いと思う。

線維筋痛症の人の疼痛は、3環系抗うつ剤(トリプタノール、アナフラニールの点滴など)、抗てんかん薬、サインバルタなどのSNRI、リリカ、トラムセットを駆使すれば概ねなんとかなる。

トラムセットの適応は本来、
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛
①非がん性慢性疼痛
②抜歯後の疼痛


となっている。

レグナイトに戻るが、本邦での臨床試験では例数は120名と少ないが、68名に副作用がみられたという(56.7%)。これは臨床検査値異常も含む。多かった順に、

1、浮動性めまい(25%)
2、傾眠(19.2%)
3、悪心(5%)


である。海外の臨床試験では例数がずっと多く(736名)、最も多かった副作用は傾眠(19.3%)であった。一方、浮動性めまいは11.0%だったらしい。

参考
適応外処方が認められた向精神薬
背中の肉を抉り取られる
カタプレス
足を切り落としたいほどの疼痛
慢性疲労症候群
慢性疼痛と手術(慢性疼痛の人が手術を受けた際に線維筋痛症が顕在化することがある)