ジプレキサからシクレストに変更後の体重減少 | kyupinの日記 気が向けば更新

ジプレキサからシクレストに変更後の体重減少

従来投与されている抗精神病薬から、シクレストに変更する場合、たいていの精神科医は、漸増、漸減で行うのではないかと思う。そう思う理由は、新発売の抗精神病薬は、資料の範囲でしか力価やどのような副作用が生じるかわからないからである。

 

ジプレキサとシクレストは同じカテゴリーの抗精神病薬だが、コントミン換算では、ややシクレストの方が弱い。同じ用量に移行すると、若干、薬を減らしたような感じになるはずである。

 

例えば、ジプレキサ10㎎はコントミン330㎎程度であるが、シクレスト10㎎はコントミン250㎎くらいになる。ジプレキサとシクレストは上限の用量は同じ20㎎なので、シクレストは最大限処方してもコントミン500㎎程度にしかならない。(ただ、コントミンは過去も日本人に500㎎も処方されにくかった。自律神経系副作用が多いからである)

 

コントミン100㎎を基準とする等価換算
シクレスト  4㎎
エビリファイ 4㎎
クロザリル  120㎎
コントミン  100㎎
セレネース  1.6㎎
ジプレキサ  3㎎
インヴェガ  1.2㎎
セロクエル  60㎎
リスパダール 0.8㎎
セルチンドール 4.8㎎
ジプラシドン  16㎎

ルラシドン  16㎎
(セルチンドール~ルラシドンは本邦未発売)

 

シクレストが発売後、ある男性患者さんをジプレキサ10㎎からシクレスト10㎎に漸減、漸増で切り替えてみた。過去にこの男性はジプレキサからエビリファイに切り替えたことがあるが、エビリファイに切り替えて、1年くらい様子をみても一切体重は減少しなかったのである。エビリファイは精神症状の改善度がジプレキサに劣り、切り替える価値がないと判断し、ジプレキサに戻した人である。

 

今回、シクレストに切り替えた際、順調だと思った。

 

7月末にシクレスト10㎎に変更(ジプレキサ10㎎>5㎎に減量)8月上旬にジプレキサ中止。 その後、約2か月でマイナス3㎏と体重減少している。

 

本人によると、食べる量はあまり気にしていないが、たぶん食事の量はむしろ増えているという。向精神薬の体重への影響は過食の来しやすさ、つまり摂取カロリーだけではない。その証拠にダイエットしていてもかなり増える人がいる。

 

なお、この男性が最も体重が低い(むしろ痩せていた)時期は、セレネース単剤で治療していたころである。あの当時に比べ、今の方がずっと溌剌している。(つまり抗精神病薬としては優れていると言う意味)。

 

このまま順調に減っていけば、1年で8㎏以上もありえるのではないかと予想している。以下に参考資料を挙げてみた。

 

体重増加の影響度の資料(プラセボと比較。下に行くほど体重増加を来しやすい)

セレネース

ジプラシドン

ルラシドン

アミスルピリド

シクレスト

インヴェガ

リスパダール

セロクエル

セルチンドール

コントミン
イロペリドン
クリザリル
ロドピン
ジプレキサ
(青字は本邦未発売)

 

となっている。この資料は元の論文が古いためかエビリファイが入っていない。個人的に、ロナセンは一番上あたり(つまりエビリファイよりも体重が増えない)にあると考えている。

 

過去ログから、モーズレイのガイドライン(12版)の資料。抗精神病薬で引き起こされる体重増加の比較の表である。この表では、上に行くほど体重増加が著しいとされていることに注意(上と逆の順)。こちらの資料の方が上より新しいが、ドグマチールの方がセレネースより体重増加を来さないとされているなど、臨床での実感とは異なる印象がある。

クロザリル(High)
ジプレキサ
コントミン(Moderate)
Iloperidone
セロクエル
リスパダール
インヴェガ
Amisulpride(Low)
アセナピン
エビリファイ
セレネース
Lurasidone
ドグマチール
Trifluoperazine
Ziprasidone

 

参考

シクレストはジプレキサにもセロクエルにも似ていない

シクレスト(アセナピン)の等価換算表

シクレスト(アセナピン)2016年5月26日発売予定

シクレスト(アセナピン)2016年6月発売の見込み