28日処方と30日処方 | kyupinの日記 気が向けば更新

28日処方と30日処方

眠剤や抗不安薬に30日制限があることから、精神科外来では安定してくると1か月処方になる人が多い。1か月処方の場合、年間12回しか会わない。

約1か月の薬を貰う場合、28日処方と30日処方が選択できるが、曜日を指定する人は28日処方になる。30日では曜日が合わないからである。

自分の場合、患者さんに希望を聴き、28日か30日のいずれかを決めている。この30日処方になるような人は決まった曜日に来ないこともあり、稀に約1か月ごとに再診しても半年間会わないこともある。これはたぶん偶然だろうが、連続して自分が不在の日に来るからである。

ある日、部下の医師の学会出張の際、本来自分が休みの日に代打で外来を担当した。その日、驚いたことは、自分がいないはずの日に自分の患者が意外に受診していることだった。2~3人どころではなかったのである。

その日、状態が思わしくない人にはきちんと担当日に受診するように指導している。

他の医師が診る場合、よほどのことがない限り処方が変わらないため、不調でもそのままになることが多い。その理由は、自分の担当でない患者さんの処方は、非常に変更し辛いからである。


だいたい30日処方の人は30日以内に来ることが少なく、40日とか60日目に来る人も稀ではない。つまり服薬もいい加減なことが多いのである。それでもなお安定している人は、それなりに良くなっているともいえる。

日々の処方量ほど服薬してしなくても十分なわけで、僕は減量しても良いとアドバイスする。その理由は、その患者さんの1日の必要な服薬量を知りたいからである。

ある日、30日処方の人が半年ぶりに来院した。仕事が忙しくて来れなかったという。

処方を診ると、サインバルタが30㎎入っており、いかなる風に服薬しているのか謎であった。眠剤もロヒプノールが2㎎とレンドルミンが0.25㎎ほど入っていたため、「これはさすがになくなったでしょう?」と問うと、それがないので来院したと言っている。

全然計算が合わない。

いろいろ聴いてみると、うちに転院する以前の病院で貰った5年以上前のデパスとかソラナックスなどが残っており、細々とこれらを服薬し眠剤代わりにしていたらしい。

その日、さすがに真剣に話を聴いて処方するのがバカらしくなった。この人はたぶん僅かのベンゾジアゼピンで十分に仕事をし生活もできるようなのである。

このレベルはもはや精神疾患とは言えないレベルと言える。サインバルタも服薬していないに等しいし。

僕は逆に何が必要か希望を聴いた。ここまで不規則であれば、1か月処方しても、次回はいつになるか見当もつかない。

結局、デパスだけ処方することにまとまったのである。デパスは1か月制限にかからない向精神薬だが、レセプト審査的には概ね3か月までである。

しかし、デパスを3か月処方した日には、次回、何年後に来院するかわからない。したがって同じように1か月だけ処方したのであった。(1日0.5㎎を2回服薬。30日分)

自分の患者さんで毎回デパスを3㎎(0.5㎎×6)1か月分貰い、2年ごとくらいに再診している人が1名いる。彼はいかなる遠方に転勤しても、2年に1度だから再診できる。

彼はデパスのために非常に助かっていると言うが、0.5㎎の180錠を約730日で飲んでいるわけで、4日に1度しか服薬していないことになる。彼の診断は軽い社会不安障害だと思うが、ここぞという機会にしか服薬していないのであろう。

その処方がなんと25年間も続いているのである。

彼にとって、あまり服薬しないとはいえ、デパスの0.5㎎錠はあるとないとでは大違いなんだろう。また、彼はデパス以外の向精神薬は1年ほどたまにアモバンを服薬しただけである。彼によると、アモバンはやや苦いが、あの苦さを感じると「ああ眠れるんだ」と安心感が来ると言っていた。あの苦さすらマイナスには感じていなかったようなのである。

彼は順調に昇進し最近年収が1000万を超えたらしい。また定年まで(たぶん60歳と思うが)10年以上あるのである。

彼の昇進はおそらくデパスなしではなかったと思う。(実際、本人がそう言っている)

参考
精神疾患と服薬

向精神薬の離脱症状と精神科医
向精神薬のスティグマと離脱症状について
統合失調症の告知と予後