2015年12月イフェクサーSR発売 | kyupinの日記 気が向けば更新

2015年12月イフェクサーSR発売

早ければ今週にもイフェクサーSRカプセルが発売される。過去ログでは、ベンラファキシンと一般名で記載している。商品名だが、エフェクサーなどの名前のこともある。過去ログではベンラファキシンないしエフェクサーと記載していることが多い。

治験が不調で今後発売されないことも十分にありえたが、海外の評価が高いこともあり製薬会社も頑張ったようである。販売元はファイザーのはずだが、この薬に関しては未だ営業に来たことがなく、パンフレットはなし。

日本での剤型はカプセルで37.5㎎と75㎎になるようである。以下、ファイザーのサイトから。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤
「イフェクサー®SRカプセル」の承認取得


2015年9月28日
ファイザー株式会社

ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎)は、本日、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI:Serotonin-Noradrenaline Reuptake Inhibitor)「イフェクサー®SRカプセル 37.5 mg、同75 mg」(一般名:ベンラファキシン塩酸塩)の製造販売承認を取得いたしました。

イフェクサーSRカプセルは、1 日1 回経口投与の徐放性製剤で、うつ病・うつ状態を効能・効果としています。1997年にスイスで承認されたのをはじめ、世界90以上の国と地域で承認されており、豊富な使用経験とエビデンスを有します。既に海外では大うつ病性障害などの治療薬として浸透しており、米国の治療アルゴリズムでは、精神病性の特徴を伴わないうつ病治療の第一選択薬として推奨され、また他の第一選択薬には反応しない、または忍容性がないために治療変更を要する場合の第二選択薬としても推奨されています※1 。

国内においても日本人での臨床試験の結果および海外のエビデンスをもとに、うつ病・うつ状態の患者様の不安症状を取り除き※2、意欲を高めることで※3,4、高い寛解率を示す※5、うつ病治療における第一選択薬の一つとして患者さんが一日も早く日常生活を取り戻すための治療に貢献できる薬剤と考えております。

※1 米国の治療アルゴリズム(TMAP:Texas Medication Algorithm Project) Crismon, M. L. et al.:J Clin Psychiatry 60(3):142, 1999
※2 Feighner, J. P. et al.:J Affect Disord 47(1-3):55, 1998
※3 Gorenstein, C. et al.:Int Clin Psychopharmacol 17(4):171, 2002
※4 Lam, R. W. et al.:Depress Res Treat:630206, 2012
※5 Thase, M. E.:J Clin Psychiatry 58(9):393, 1997

効能・効果
うつ病・うつ状態

用法・用量
通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5 mgを初期用量とし、1週後より1日75 mgを1日1回食後に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ1日225 mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75 mgずつ行うこと。

薬価は従来の新規抗うつ薬に準じるかやや高い程度になると思われる。

海外では、ベンラファキシンは錠剤も発売されている。25㎎、37.5㎎、50㎎、75㎎、100㎎錠などの剤型も海外では処方可能だが、悪心の副作用が強いことと、1日複数回服薬しなくてはならないため、あまり利用されていないらしい。いわゆる徐放製剤(延長放出型)カプセルが一般的で日本人の忍容性に合わせて、カプセルの剤型しか発売されないようである。なお、海外では150㎎カプセルも利用できる。

このカプセルの剤型だが、脱カプセルも可能と言う話を聴いた。(サインバルタも脱カプセルして少量投与することが自分は多い。脱カプセルには関係なく効く人には効く)

抗うつ剤の機序による優位性は、一般的には強くは言われていないが、重いうつ病、うつ状態にはSSRIよりはSNRIの方が優れるという文献がある。これは臨床感覚と一致する。重度のうつ病には、サインバルタか3環系抗うつ剤しかないと思う。(他、ECT)

一般にSNRIは5剤が知られているが(それ以外もあるのかもしれないが自分は知らない)、これらは、

ベンラファキシン(イフェクサー)
デスベンラファキシンコハク酸塩(本邦未発売)
デュロキセチン(サインバルタ)
ミルナシプラン(トレドミン)
レボミルナシプラン(本邦未発売)


このうち、トレドミンはアメリカではうつ病、うつ状態の適応がない。(線維筋痛症への処方はできる)

上記、5剤のうち、使ったことがないSNRIは自分はレボミルナシプランだけである。個人的に、SNRIのうち日本人の忍容性や効果の程度を考慮すると、サインバルタが著しく優れていると思う。

以下、過去ログから

有効性の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))

①ミルタザピン(レメロン)     24.4
②エスシタロプラム(レクサプロ)  23.7
③ベンラファキシン(エフェクサー) 22.3
④セルトラリン(ジェイゾロフト)  20.3
⑤シタロプラム(セレクサ)     3.4
⑥ミルナシプラン(トレドミン)   2.7
⑦ブプロピオン(ウエルブトリン)  2.0
⑧デュロキセチン(サインバルタ)   0.9
⑨フルボキサミン(デプロメール)  0.7
⑩パロキセチン(パキシル)     0.1
⑪フルオキセチン(プロザック)   0.0
⑫レボキセチン(Davedax)      0.0

受容率(忍容性)の指標による抗うつ剤の世界ランキング(最も良い治療である可能性(%))
①エスシタロプラム(レクサプロ)  27.6
②セルトラリン(ジェイゾロフト)  21.3
③ブプロピオン(ウエルブトリン)  19.3
④シタロプラム(セレクサ)     18.7
⑤ミルナシプラン(トレドミン)   7.1
⑥ミルタザピン(レメロン)     4.4
⑦フルオキセチン(プロザック)   3.4
⑧ベンラファキシン(エフェクサー) 0.9
⑨デュロキセチン(サインバルタ)   0.7
⑩フルボキサミン(デプロメール)  0.4
⑪パロキセチン(パキシル)     0.2
⑫レボキセチン(Davedax)      0.1

これは、かなり信頼性の高い資料だが、抗うつ剤によると採用される資料が少なすぎるものもある。例えば、上記の資料が公開された時点では、サインバルタとSSRIとの比較試験が非常に少なかったと言う。(参考

ベンラファキシンは日本ではうつ病、うつ状態しか適応がないが、海外では、全般性不安障害、社会不安障害にも適応が認められている。

ベンラファキシンで最もしばしばみられる副作用は悪心である。日本人ではより服用しにくい人が多かったためか、それをいくらか緩和した徐放性カプセルしか発売されない。悪心以外の副作用として、性的障害(著しい性欲減退、オルガズムや射精の遅延など)や、頭痛、不眠、眠気、口渇、めまい、便秘、無力症、発汗、神経過敏などがみとめられる。

また、離脱症状がしばしばみられることがあり、中止の際は漸減が必須である(2~4週間はかける)。一般的な離脱症状は、上記の副作用と似ている。海外では離脱症状を緩和するために、プロザックのような半減期の長いSSRIへの置換を推奨しているものもある。

うつ病、うつ状態、全般性不安障害、社会不安障害以外で、効果がある可能性がある精神疾患として、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖、ADHD、慢性疼痛などが挙げられる。

併用禁忌は作用機序的にMAO阻害薬は間違いなく禁忌であるが、日本の添付文書で、どのような記載になるか(併用注意など)は詳しくない。

参考
サインバルタ
サインバルタの治験の失敗の歴史について

今回のエントリはこの1.5倍くらいの字数があったが、下書き保存を忘れ、参考のリンクを張る際に周囲のリンクにうっかり触り、記載した記事がパーになった。2回目は、頭に来たので今回はこの程度にまとめた。いつも思うが、書き直すと記事の内容や雰囲気がずいぶんと変わる。