精神病院内でのナチュラルコースの処遇 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神病院内でのナチュラルコースの処遇

単科精神病院では入院患者さんの高齢化が進んでおり、新規入院患者には若い人もいるが、動いている病床は全体では相対的に少ないため、単純平均の年齢は今や大変なことになっている。

2~3年前くらい前に計算したところ、なんと70歳を超えていた。(今はたぶん70歳未満だと思うが)。

これには驚くべきことが含まれている。1つは、精神科病院に長期入院中の人たちは、一般の人が考える以上に長寿なのである。これはたぶん先進国中では傑出しているのではないかと。(先進国で精神科入院病床が人口比が少ない国は日本に比べ著しく寿命が短い。)

一般に精神障害者は健常な人に比べて寿命はかなり短いと言われている。それは生活自体が破綻していることも大きい。

ある時、病棟の婦長さんと話していたら、昔は、男性はあまり長生きはされなかったという。しかし近年はそうとも言えない。それは女性ほどの寿命はないと思うが。

これは向精神薬の質の向上も関係していると思われる。

古い高齢の長期入院の患者さんの家族は、何らかの身体的疾患を合併すると、そのまま最後まで病院内で看とってほしいと希望される人がいる。全体の2割くらいはそうである。(いわゆるナチュラルコース)

しかし、これも内容による。

ある時、不整脈のためペースメーカーが必要になった高齢の女性患者さんがいた。この場合、この手術をしないと、いつ亡くなるのか全く分からない。明日かもしれないのである。

これは本人ももちろんだが、スタッフも非常にストレスフルなので、家族を説得してペースメーカーの植え込み手術を受けてもらった。その女性はもうかなり高齢だったこともあり、その後、数年間寿命は延びたが、結局、初回の電池交換手術の前に亡くなっている。

若い人(とは言え、60歳くらい)の患者さんは、ナチュラルコースなんてありえない。精神科患者さんも、なすすべなく亡くなるのは良くないと考えている。(つまり精神科もある総合病院などに搬送する)

90歳くらいの患者さんで、稀ではあるが、朝ベッドサイドに行ってみると、亡くなっていることがある。

このように精神疾患以外の原因で亡くなった場合、原因がはっきりしないため不審死に含められる。このような際には県精神病院協会の申し合わせで警察を呼び検視をしてもらうのがうちの県のローカルルールである。

警察に電話すると、このようなことは多くはないので、電話を受けた警察官がとっさに何をしたらよいのかのみ込めないこともある。その場合、こちらから状況や一般的な対応を話し、検視のできる警察職員に来てもらっている。

あまりに大勢で来られるので、こちらも驚くと言った感じである。検視の人たちが何をするかというと、疾患的には脳のCTを撮るようである。脳のCTを撮ると、このような場合、かなりのことがわかるという。

その他、外傷があるかないかなど。

精神科病院での突然死に見えるケースだと、院内の犯罪のために亡くなっていることもあり得ないわけではない。そういうこともあり警察に検視を依頼するのである。

90歳でそのくらいはするので、60歳くらいで同じようなことが起こると、もちろん検視を依頼する。

つまり精神科病院でのナチュラルコールとは、癌などが合併して、もうなすすべがなく、亡くなることが明白なケースなどである(肺癌など)。

このような人でも、健常者ならとっくに亡くなっているような状況でも、亡くなる数日前まで病棟を普通に歩いていることも稀ではない。(黄疸が酷いとか、腹水が酷いなど、普通なら動けない状況でさえ)

確かに、統合失調症の人の身体の感覚は健常者とは異なっている。

高齢者の肺炎などは、総合病院に搬送すると亡くならないことがほとんどなので、そのままナチュラルコースにしないことが多い。

特に統合失調症の人の生命力は驚くほどである。

警察に検視を頼むローカルルール?だが、ちょっと気になるのは、家族に院内で妙なことが起こって亡くなったと誤解されかねないこと。また、検視を受けることを家族が嫌がることもたまにある。

だから、これはルールなので・・と説明している。その辺り、警察署の人たちも心得ているようである。

このように書いていくと、精神科病院という環境は、内科や外科病院に比べナチュラルコースは馴染まない印象である。ナチュラルコースばかりになってしまうと、何か不正を隠しているのではないかと見られかねないからである。

そういうこともあり、不審死は、必ず検視を受けるというローカルルールにしているんだと思う。

(今回の記事は、最初のタイトルで書き上げたところ、明らかに別の内容になってしまったため全体を書き直しました。その別の内容の記事はいつかタイトルを変えアップする予定です)

参考
統合失調症の人の癌の罹患率
統合失調症と痛みの感覚
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
乳癌全身転移