ガバペンがリリカより切れない話 | kyupinの日記 気が向けば更新

ガバペンがリリカより切れない話

リリカはガバペンから派生した薬物で、日本では適応はないが抗てんかん作用を持っている。リリカは神経障害性疼痛に処方されるが、特に整形外科系であまりにも使われるため、最近は査定が厳しくなっている。リリカは決して安価な薬物ではない。

リリカの適応の変遷だが、当初は帯状疱疹後の疼痛に限られていたが、その後、末梢神経性障害性疼痛に適応が広がり、今では単に神経障害性疼痛で良いとされている。

しかし、例えばレセプトに「神経障害性疼痛」と書いていても、減点される(査定される)。必ず、腰痛など整形外科系の疾患名が必要と言うのである。(これはたぶんローカルな面がある)

今でも帯状疱疹後の疼痛にも処方できるが、これは整形外科系の診断名と言えるのか?

とか、

今は線維筋痛症の適応を得ているが、線維筋痛症は果たして整形外科疾患と断定できるのか?

など、突っ込みどころ満載だが、結局はレセプトの査定や、監査での指導は「言いがかり的なもの」が結構あるので、医師側はどこの病院でも同じ査定をするように要望している。(査定されて、自殺した医師も結構いるため。査定にローカルな面があること自体が大問題)

もちろん、リリカが高価なわりに汎用されることも大いに関係している。

ある時、ある患者さんにリリカを処方したら、それまで長い期間、悩んでいた疼痛が魔法のように消えた。当時、その患者さんは整形外科にも通院していて、その疼痛の消失について主治医に伝えたところ、どのような薬を精神科で貰っているか、逆に聴かれたらしい。彼は急にインターネットで調べ始めたという。

まだリリカが発売されて間もない頃だったため、適応は帯状疱疹後疼痛に限られており、整形外科では処方頻度が低かったこともあったと思う。このようなことを見ても、「腰痛などの整形外科疾患を伴うことが必要」という査定理由がとって付けた理由なのは明らかである。

問題はその続きである。その後、1か月して整形外科に再診し、待合室で他の患者さんと話をしていたら、そこに居合わせた全員にリリカが処方されていたと言う。(2人で大爆笑)

このような使いかたをしているから、いろいろ理由を付けて査定されるんだと思う。

自分は、リリカは75㎎カプセルは滅多に使わず、25㎎カプセルを使うことが多い。従って、150㎎以上使っている人はたぶん2名くらいと思うが、これはリリカは高価なのと、これを上限まで必要な人は相対的にリリカが思うように効かない人が多いためである。

実際、他科から精神症状を伴って転院してくる疼痛系の患者さんで、リリカを450㎎まで処方されている人はむしろリリカを中止できる人の方が多い。リリカは上限は450㎎とされており、150㎎カプセルで3カプセルである。リリカが450㎎まで達した人で、コントロールが良くない人は、他の疼痛改善の方策を考えた方が良いと思う。(その患者さんを「てんかん」と思えば、そういう流れになるはず)

リリカの問題点は、認知への悪影響で、これはいかにも抗てんかん薬っぽい副作用である(参考)。

精神科関係では近年は適応外で疼痛に対しサインバルタも使われるが、不発になることも稀ではなく、タイミングや何を使うか想像性も働かせたいところ。サインバルタが効いていない人も中止できることの方が多い。

疼痛に推奨できる古典的抗うつ剤は、トリプタノールである。これはしばしばリリカやサインバルタを上回る効果を発揮することも多い。後、アナフラニールの点滴も有用であろう。

リリカがある程度効くが、何らかの副作用のために使えないか、増量できない人たちがいる。25㎎カプセルでさえ耐えられない人たちである。副作用は、非常に奇妙で、添付文書にすら記載がないものさえある。

そのような人にガバペンを使うとあら不思議。ぴったりだったりする。

リリカとガバペンの共通の副作用のうち、主なものは認知障害とふらつき、眠さ、肥満である。中毒疹もあるが、ラミクタールやテグレトールなどに比べかなり少ない。それでもリボトリールなどのベンゾジアゼピンよりずっと多い印象。

ガバペンの良い点は、リリカに比べ全般、切れないことである。

実際、リリカが使えないがガバペンは大丈夫と言う人は、その逆よりはるかに多い。切れない分、たぶん副作用も少ないのである。

良く考えると、リリカは最高量は450㎎までだが、ガバペンは2400㎎まで使える。一般に向精神薬では㎎数が少ない薬ほど力価は高いため、これはセオリー通りである。

ガバペンのプロドラック、レグナイトと言う向精神薬が発売されているが、これは、レストレスレッグ症候群(むずむず足症候群)の適応のみ持っている。レストレスレッグ症候群には、ガバペンももちろん有効である。

基本的に、レストレスレッグ症候群にはガバペン3兄弟、ガバペン、レグナイト、リリカ、いずれも効くので、副作用と薬価を考慮して選ぶのが良いと思う。無駄に国費を使うのは悪である。

精神科での忍容性の低い人たちには、ガバペンの低用量の剤型、200㎎錠は非常に有用と考えられる。(ガバペンの200㎎錠は40円程度)

参考
リリカ
リリカの効能・効果の変遷
交通事故後に生じた遷延する疼痛、うつ状態
維筋痛症とパニック②