困難な状況で躁転する | kyupinの日記 気が向けば更新

困難な状況で躁転する

一般の人は、双極性障害では、何からのきっかけで悲しい時にうつ状態になり、楽しい時に躁状態になると思うかもしれないが、それは違う。

双極性障害のうつ状態は、それらしい事件に沿って生じるように見えることも多い。例えば、失恋、受験・就職の失敗、大金を失った時などである。双極性障害のうつ状態が状況に応じて出現するように見えるのは、頻度的に躁状態よりうつ状態の方がずっと多いことも関係があるように思う。しかし、双極性障害のうつは特に誘因なく、ある日突然生じると思う人も多いはずである。

それに対し躁状態は奇妙な場面で出現しやすい。これこそ、躁うつ病の躁うつ病たる所以である。

例えば躁状態は親友や肉親が亡くなった際、爆発的に起こることがある。その結果、皆が喪に服している時に、それどころではないという事態になる。

いくらなんでも、こんな時に躁状態にならなくても良いだろう・・と言ったところである。大切な人の葬式にすら出席できない。このような躁転は1型も多く、肝心な時に保護室に収容されていることもある。

このタイプの躁転は奇妙だが、何らかの心理的原因で生じたようにも見える。事件と躁状態にあまり関係がないように見えるのが特徴である。(悲しむべき時に悲しめないところ)

典型的な双極2型の人では、日常生活とほぼ関係がないバイオリズムで、緩やかな躁うつの繰り返しがみられているが、何らかの抗うつ剤で、軽い躁転期間が延長しているように見えることがある。

双極性障害のバイオリズムは、精神科治療とは全く関係ないようには見えない。


例えば、この場面ではうつ転しては困るということがある。その時は薬物的に2型躁転をできるだけ延長させる。

自分の患者さんで、過去に入院中に精神保健福祉士の国家試験を受験し合格した人が3名いる。自分だけで3名もいるのだから、全国的にはもっと多いはずである。ということは、健康なのにあの国家試験で落ちるのは恥であり、気合が足りないと思う(精神保健福祉士の試験は易しくない。2013年の合格率は56%程度)

入院中、試験前にうつ転した場合、受験が困難になるので、軽い躁転状態を維持したまま試験に出席できるようにコントロールする。軽い躁転の場合、程度も重要だが試験勉強や受験も可能なことが多い。

双極性障害が治療でコントロールというか、流れを変えうる証明は、ECT1回で目が覚めた瞬間、躁転が生じることがある現象で十分である。これをECTの直後に偶然に躁転したとみなすのは、科学的にも無理がある。

2型躁転を認容できるかどうかは、その人の職業(職種及び地位)、収入、家族の状況なども勘案する。普通、2型躁転というのは入院はしないわけなので、何らかの薬物療法、主に気分安定化薬を平行して行い一般生活をしていることが多い。

入院はしなくても周囲が困ることが多い人は、判定で実は1型と考えて良いと思う。つまり、社会的なものも関与するのである。(サラリーマンなら入院だが、自営業なら入院しなくても済むと言うことが起こる)

タイトルに挙げた「困難な場面で躁転する」という理由だが、「非日常な状況」に突然、置かれることも関係がある。

非日常な状況は、災害、戦争も含め気分を高揚させるからである。だから、事件自体が、悲しい、あるいは楽しい出来事なのかはあまり関係ない。

双極性障害障害のバイオリズムは謎が多いが、脳内の神経伝達物質も全てではないにしろ、いくらか関与していると見るほうが合理的だと思う。

参考
精神疾患における非日常の考え方(12)
双極2型のうつ状態と抗うつ剤