ラミクタールと妊娠・出産 | kyupinの日記 気が向けば更新

ラミクタールと妊娠・出産

トピナ、ラミクタールはここ数年で発売された新しい抗てんかん薬であり、いずれも一風変わった気分安定化作用を持つ。今回はラミクタールと妊娠・出産について。

元々、ラミクタールは優れた抗てんかん薬で双極性障害にも有効性が認められている(本邦ではてんかんのみ)。双極性障害でも、より「うつ状態」に有効性を持つ。ラミクタールは極めて催奇形性が低い抗てんかん薬であり、他の向精神薬と比べても傑出している。

てんかんないし双極性障害の人はラミクタールのみ服用して妊娠・出産すれば、悔いがない催奇形対策と言える。(ただ、現在日本ではラミクタールの単剤処方ができない)

一般に、抗てんかん薬を服用していない非てんかん女性(コントロール)の催奇形率は3.27%ほどである。(海外。コントロールは108,000人程度の母集団)

以下は抗てんかん薬を服用している女性の催奇形率のデータである。(海外)

単剤療法の催奇形率
抗てんかん薬を服用していない非てんかん女性  3.27%
ラミクタール 2.91%
テグレトール 4.62%
フェノバール 4.91%
アレビアチン 7.36%
デパケン   10.73%


この中ではデパケンの催奇形率が特に高くなっている。この数値は3.27に比べ有意に高い。しかし、他の薬物は統計的には有意差がない。数字だけ見ると、何も飲まないよりラミクタールを服用して妊娠・出産した方が催奇形率が低いように見えるが、3.27と2.91には統計的には有意差がない。

面白いと思ったのは、他の文献でも健康女性よりラミクタール服用者の催奇形率の数値が低かったことである。(数字だけだが)。

上の抗てんかん薬の催奇形性率のデータは単剤療法によるものであるが、難治性の人は多剤療法になっていることも稀ではない。一般に多剤併用になると催奇形率が上昇する。

ラミクタール+1剤 5.59% 
テグレトール+1剤 7.10%
フェノバール+1剤 9.19%
アレビアチン+1剤 11.47%
デパケン+1剤   9.79%


2剤の場合、フェノバール+1剤以下の3剤が統計的に有意差をもって催奇形率が高くなっている。

デパケンは催奇形率が有意に高いだけでなく、大量処方では、出産した子供の3歳時点のIQをいくらか下げる有害作用を持っているようである。

子宮内で抗てんかん薬を暴露された幼児の3歳時における平均IQスコア(海外)
高用量のケース
433mg以上のラミクタール  100
750mg以上のテグレトール  97
398mg以上のアレビアチン  98
1000mg以上のデパケン   87


低用量のケース
433mg未満のラミクタール  102
750mg未満のテグレトール  100
398mg未満のアレビアチン  98
1000mg未満のデパケン   97


高用量の抗てんかん薬では、特にラミクタール433mgとアレビアチン398mgが物凄い量である。僕はアレビアチンの398mgは服用できない日本人の方が圧倒的に多いのではないかと思う。それに対し、1000mgのデパケンや750mgのテグレトールは用量としては日本人でもしばしば処方される量である。海外では日本人の感覚を超えた用量を良く目撃するが、忍容性の差が相当にあると言わざるを得ない。

上の表では、ラミクタールは高用量、低用量とも3歳時の幼児のIQに影響を及ぼしていないことがわかる。一方、デパケンは1000mg程度ですら、幼児のIQに悪影響を及ぼしている(有意差あり)。また、この1000mgの数字は西欧人と日本人の忍容性の差からもう少し低い量でも影響があるかもしれない。

デパケンの場合、1日の中で高い血中濃度を来たさない服薬が推奨されており、数回の分服やデパケンRなどの徐放剤は推奨される。上の表でも、1000mg未満のデパケンでは影響がほとんどない。

挙子希望のてんかんの女性では、「特発性全般てんかん」および「症候性部分てんかん」いずれの人でもラミクタールが第一選択として推奨されている。

以上のことから、てんかん、双極性障害いずれも、将来、出産する予定の人ではラミクタール単剤で治療可能かどうかの検証が重要になってくるであろう。ラミクタールが最も催奇形性、幼児のIQという点で安全性が高いからである。

おそらく、ラミクタールはいずれ国に働きかけがあり、双極性障害やてんかんへの単剤治療が可能になるような気がする。

民主党も、このようなことも事業仕分けしてほしいものだ。なぜなら海外に比べ認可が遅すぎるからである。

参考
ラミクタールのテーマ
向精神薬と妊娠、授乳のテーマ
薬物治療と寛解のレベルについて