ジプレキサ、躁状態の効能・効果追加 | kyupinの日記 気が向けば更新

ジプレキサ、躁状態の効能・効果追加

ジプレキサは2010年10月、双極性障害の躁状態の効能・効果が追加されるようである。

双極性障害の「躁状態」には一般には気分安定化薬(主にリーマスデパケンR、テグレトール)が処方されるが、実際には抗精神病薬が治療のために併用されることが多い。

その理由はいくつかあるが、例えばリーマスは非常に有効な抗躁病薬であるが、効果の発現に時間がかかることがある。一刻も早く寛解状態に至らせるため、躁状態に抗精神病薬が適応外で使われることが多いのである。

世界的にはジプレキサよりむしろセロクエルの方が双極性障害の治療薬として知られているが(特筆すべきはうつ状態への効果)、セロクエルは日本で双極性障害の効能・効果を追加するのを断念したようである。その大きな理由は、二重盲検の被験者を集めることが容易ではないことがある。アステラス製薬は二重盲検の治験を行なうことができなかったのである。

その点で、イーライリリーはなんとか被験者を集めたわけでガッツがあると思う。

二重盲検試験は被験者、投与する医師もともに被験薬であるか対照薬であるかを知らされていない。ここに日本的には大きな抵抗があると思う。

対照薬がプラセボ(実質的に薬効を持たない偽薬)であれば、もし治験に参加した場合、被験者は治療が本質的に実施されていない空白の期間ができる。そのため、悪い状態がより長く続くはずなのである。そういう無駄な期間が生じることになるので、被疑者の家族は歓迎しないと思う。

アメリカでは統合失調症の患者さんですら、このようなタイプの二重盲検試験が行なわれているので、日本よりずっとドライだと感じる。

なぜドライと思うかと言うと、統合失調症にせよ双極性障害にせよ、幻覚妄想の活発な時期や躁状態が長く続くことは脳にとって良いことではないから。

ジプレキサの双極性障害への効果の個人的意見は過去ログに詳しい。

個人的に躁状態にターゲットを絞ると、ジプレキサよりセレネース液の方がずっと効果的であるし、効果の発現も早く、妙な紛れが少ないと思う。(ただし、うつ状態にはセレネース液は効果がないどころかむしろ悪化させるので、躁状態のブレーキしかかけないタイプである)

参考
双極性障害適応状況(アメリカ)
ジプレキサのテーマ
セレネースのテーマ
セレネース液

注意
セロクエルと双極性うつ状態