精神医療における場所、空間、時間の考え方
精神医療、特に薬物療法は、処方するドクターが違うと、効きかたも異なるといったエントリを過去ログにアップしている。
良く言われるのは、内科医や外科医が向精神薬を使っても、精神科医のようには効果が出ないこと。
これはリエゾンをしていると、よくそれを感じる。逆に降圧剤や不整脈の薬などは専門の内科医が使った方が僕たちが処方するより効くのではないかと思う。
新薬の治験で往々にして良好な効果が発現せず、発売まで時間がかかったり、発売が見送られたりするのは、この「慣れない薬を治験する」ということに大きな問題がある。だから、治験は無駄とは言わないが、柔軟な判断が必要とされる。
精神医療は、特に薬物のように明確な薬理作用を背景とする治療ですら、理解できない部分が混入している。
ジェイゾロフトは治験で不調だったため、ファイザーはあまりに弱気に見える添付文書を発行していた。あのような文章だと、患者さんに推奨できないと精神科医から苦情が出たほどである。
しかし、今ではファイザー自身が驚くほど日本での売り上げが伸びている。効果においても世界的な評価が高い。これはクセがない薬だったことが、かえって治験時に災いしていたのかもしれない。
今回のエントリでは、同じ薬物を同じ精神科医が処方しても、効果が発現しやすい場所や空間、また時間が存在することの考察である。場所と空間は同じ意味ではないか?と思うかもしれない。僕も最初書きながらそう思った。実は「場所」と「空間」は微妙に意味が違う。(謎)
一般に、向精神薬は副交感神経優位の時の方が効果が出やすい。
特に温泉に浸かった後などは、交感神経を遮断する向精神薬は効きすぎることがある。また、安心できる場所、例えばゆったりと寛げる自宅などは向精神薬も効果が出やすいと言える。逆に、家庭内に嫌いな家族がいたり、ストレスフルの場所であれば、思ったほど効果が出ない。そういう人は入院して薬物療法を受けるか、単身で生活できる環境に移り治療を受けた方がずっと良い。
まず環境を整えることが重要である。
過去ログで、友人の治療の際、一時的にホテル住まいを勧めたり、マンスリーマンションを借りて住むことを勧めているエントリがある。今、彼女はあの助言を非常に感謝している。
あの試みがなかったら、今の彼女はないと言えるほどである。(本人もそう言っている)
結局、環境が良くないと思ったほど薬が効かないため、必要以上の薬を飲まなくてはならない面がある。そういう点で、人口の密集した東京や大阪などの大都市圏では、地方都市より必要な薬は多くなると思われる(過去ログでそういう内容を書いている)。
また経済状況も重要である。例えばうつ状態で、失業中の人と会社を年休を使いながら治療している人では、薬の効き方が違う。(もちろん後者が優れる)
また個人ではなく、社会全体でも、おそらく2004年~2006年頃より、現在の方が抗うつ剤を始めとして向精神薬がやや効きにくくなっているのではないかと思われる。当時より、経済状況が悪化しているからである。
ある時、その人に禁忌とされている薬を使っていて劇的に効いたことがあった。
その人はエビリファイは使ってはならなかったらしい。これは前医で病状が悪化したため、禁忌とされていただけで、相対的禁忌というか、いわゆるローカルな禁忌である。
しかし、その人はエビリファイのたった6㎎程度で寛解状態に至ったのである。これは非常に不安定な時期はエビリファイが失敗しやすいのではないか?という推測も成り立つ。
つまり、病期により、薬の効き方は刻々と変化しているのである。
精神科における「場所」「空間」「時間」は、薬物治療において非常に重要である。
(場所と空間がどう違うのか?という記事もあったのだが、長くなるのでやめた。)
参考
精神科医と薬、エイジング
素人の心療内科クリニック
良く言われるのは、内科医や外科医が向精神薬を使っても、精神科医のようには効果が出ないこと。
これはリエゾンをしていると、よくそれを感じる。逆に降圧剤や不整脈の薬などは専門の内科医が使った方が僕たちが処方するより効くのではないかと思う。
新薬の治験で往々にして良好な効果が発現せず、発売まで時間がかかったり、発売が見送られたりするのは、この「慣れない薬を治験する」ということに大きな問題がある。だから、治験は無駄とは言わないが、柔軟な判断が必要とされる。
精神医療は、特に薬物のように明確な薬理作用を背景とする治療ですら、理解できない部分が混入している。
ジェイゾロフトは治験で不調だったため、ファイザーはあまりに弱気に見える添付文書を発行していた。あのような文章だと、患者さんに推奨できないと精神科医から苦情が出たほどである。
しかし、今ではファイザー自身が驚くほど日本での売り上げが伸びている。効果においても世界的な評価が高い。これはクセがない薬だったことが、かえって治験時に災いしていたのかもしれない。
今回のエントリでは、同じ薬物を同じ精神科医が処方しても、効果が発現しやすい場所や空間、また時間が存在することの考察である。場所と空間は同じ意味ではないか?と思うかもしれない。僕も最初書きながらそう思った。実は「場所」と「空間」は微妙に意味が違う。(謎)
一般に、向精神薬は副交感神経優位の時の方が効果が出やすい。
特に温泉に浸かった後などは、交感神経を遮断する向精神薬は効きすぎることがある。また、安心できる場所、例えばゆったりと寛げる自宅などは向精神薬も効果が出やすいと言える。逆に、家庭内に嫌いな家族がいたり、ストレスフルの場所であれば、思ったほど効果が出ない。そういう人は入院して薬物療法を受けるか、単身で生活できる環境に移り治療を受けた方がずっと良い。
まず環境を整えることが重要である。
過去ログで、友人の治療の際、一時的にホテル住まいを勧めたり、マンスリーマンションを借りて住むことを勧めているエントリがある。今、彼女はあの助言を非常に感謝している。
あの試みがなかったら、今の彼女はないと言えるほどである。(本人もそう言っている)
結局、環境が良くないと思ったほど薬が効かないため、必要以上の薬を飲まなくてはならない面がある。そういう点で、人口の密集した東京や大阪などの大都市圏では、地方都市より必要な薬は多くなると思われる(過去ログでそういう内容を書いている)。
また経済状況も重要である。例えばうつ状態で、失業中の人と会社を年休を使いながら治療している人では、薬の効き方が違う。(もちろん後者が優れる)
また個人ではなく、社会全体でも、おそらく2004年~2006年頃より、現在の方が抗うつ剤を始めとして向精神薬がやや効きにくくなっているのではないかと思われる。当時より、経済状況が悪化しているからである。
ある時、その人に禁忌とされている薬を使っていて劇的に効いたことがあった。
その人はエビリファイは使ってはならなかったらしい。これは前医で病状が悪化したため、禁忌とされていただけで、相対的禁忌というか、いわゆるローカルな禁忌である。
しかし、その人はエビリファイのたった6㎎程度で寛解状態に至ったのである。これは非常に不安定な時期はエビリファイが失敗しやすいのではないか?という推測も成り立つ。
つまり、病期により、薬の効き方は刻々と変化しているのである。
精神科における「場所」「空間」「時間」は、薬物治療において非常に重要である。
(場所と空間がどう違うのか?という記事もあったのだが、長くなるのでやめた。)
参考
精神科医と薬、エイジング
素人の心療内科クリニック