新患の難民 | kyupinの日記 気が向けば更新

新患の難民

流行っているクリニックは新患をその日に診てくれないことが多い。何日後に予約と言われても、その時に何とかしてほしいほど悪いなら、非常に困る。そんな時は、新患を受けてくれる一般の精神科病院を探すか、救急もやっている総合病院の精神科に受診するしかない。

一般の単科精神科病院でも、最近は新患だとその日に受け付けてくれないところもあるらしく、新患の人がすぐに受診できる精神科病院やクリニックが減少している。

このようになった理由だが、患者さんの総数が増加していることが大きい。特にうつ状態圏の。

そういうわけで、難民のような新患の人々が一度に訪れることがある。最近、ほんの1時間半の間に、4人の新患が来院されたことがあった。診る方も大変である。

診察する方から言うと、このように立て続けに新患があると、その間に挟まる再診の人の診察が困る。だから事情を話して、新患の人に1~2名待ってもらう事がある。(そうしないと、再診の人がかなり待つようになるからである)

僕の場合、新患だからといって、そんなに長時間、診察にかけたりしない。そんなことをしたら、待っている人が絶句すると言うか、待ちきれない人が多いからである。それに、単科精神科なのに凄く待つようになったら、かえって評判が下がることもある。(あの病院に行くと、いつも2時間は待つね~なんて状態になると、通院が辛くなる。大学病院じゃあるまいし。僕は長時間、診察するくらいなら3日ごとに来てもらう。その方がずっと良くなるからである)

基本的に、野戦病院向けの精神科医なのである。

最近は一般病院では、精神保健指定医が相対的に不足している。これには2つ理由があり、1つは、ある時期、国が医学部の定員を絞っていた時期があり、ある年代の医師が不足していること。またこの時期に卒業した女医さんの一部が主婦をしていたりすることがある。(なぜか、この定員を絞っていた時期に女子医学生が多かった。今も、僕の卒業した時期よりは女子医学生が多い)

また、ある程度、経験のある精神保健指定医の人たちがクリニックを開業したことも大きい。不思議なことに、ずっと以前の方がクリニックは流行っていなかった。

クリニックの総数が、今よりずっと少なかったのにもかかわらずである。

当時、クリニックを開業しても、そうそうは患者さんは訪れず、週に1日ほど単科精神科に勤めている医師も多かった。経営が危ういからである。

クリニックは自分でやったことがないので良くわからない面もあるが、相当に大変だと想像する。あの単調なペースに耐えられそうにない。なんだかんだ言って、僕は入院患者さん向けの精神科医だと思う。(ヘビーな患者さん向けと言う意味)

外来も診て、入院患者も診て、リエゾンもする。


そういうメリハリがあるので、かえって体を壊さずやっていけていると思う。特に入院患者さんの診察は自分の健康にも有用と思う。特に統合失調症の患者さんである。

統合失調症の患者さんとのコミュニケーションには不思議なパワーが存在しており、単に僕が健康を維持するだけでなく、例えば境界型人格障害や広汎性発達障害の若い患者さんらにも好影響を与えている。

過去ログで、境界型人格障害の人は大学病院などより、単科精神科病院の慢性期の統合失調症の患者さん達と一緒に治療している方がずっと良くなるという話をアップしている。この意味は、つまりそういうことであろう。

ただ問題なのは、力量のある統合失調症の患者さんが歳をとり過ぎていて、次第に人材不足になっていること。

これも時代の流れであろう。

参考
精神科と心療内科は
病院、クリニックの良し悪しについて
精神科受診マニュアル(初級編)