トピナは精神療法をするのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

トピナは精神療法をするのか?

トピナは抗てんかん剤の1つで、海外ではかなりの売り上げがある薬物である。過去ログでは、リフレックスのエントリで触れているので再掲する。

リフレックスの5-HT3遮断作用」から

摂食障害で、特に過食、嘔吐系の人はコントミンをごく少量服用すると嘔吐の部分を改善する。だから、トピナ+少量コントミン(+抗てんかん薬)の組み合わせは悪くないのである。  

トピナ(トピラマート)は抗てんかん薬の中では世界1の売上高を誇る(処方件数ではない)。なんと世界で20億ドル以上売り上げる巨大商品なのである。アメリカでの商品名はトパマックスである。トピナのFDAによる催奇形性ランキングはC。トピナは薬価が高いこともあるが、ダイエット薬としても相当に処方されているような気がする。トピナは副作用を利用して過食を抑えているような感じだ。

トピナは電位依存性ナトリウムチャンネル阻害薬である。血中半減期は21時間。抗てんかん薬でありながら気分安定化作用がほとんどない。抗てんかん薬としても単剤では使えず、多剤併用を前提としている。(正式な適応はてんかんのみ)

あまり食事が摂れないような年配の人にトピナを処方すると、たちまち食欲が落ち衰弱することがある。また、トピナは腎結石を来たしやすいため、水分をよく摂るべきである。また腎障害のある人は注意を要する(腎臓病に禁忌というわけではない)

トピナが期待できる疾患として、てんかん以外では、

過食症
PTSD
アルコール依存症
境界例のリストカット
心因痛
偏頭痛(アメリカでは適応あり)


などが挙げられる。いずれも、たぶんエビデンスまではないものがほとんどと思われる。

副作用は、精神運動遅滞、発語、換語障害、傾眠、めまい、運動失調、知覚異常などがみられる。また量によると、疲労感、集中困難、味覚異常、抑うつ、不安、食欲不振、体重減少なども出現する。

トピナは精神症状への悪影響も結構あり、統合失調症の人に処方すると本来の症状を悪化させ続かないこともしばしばである。てんかんの人はけっこう痙攣発作にも有効であるが、すこしむかつきを訴える人もいた。

過食症の人でトピナを100㎎くらい飲んでケロリとしている人は、2ヶ月で8kgの減量を実現する人がいる(僕の患者さん)。だから、トピナの副作用は基礎疾患などにも関係する印象である。たぶん全然効かない人もいる。


上の抜粋ではトピナは抗てんかん薬として世界一の売り上げであるなどと書いているが、現在、ケプラに抜かれているという話もある。なぜケプラが売れるかと言うと、ラミクタールのように重い中毒疹が稀だからである。(安全性が高いので使いやすい。たぶん薬物の切れ自体は、ラミクタールが上回ると思われる)

ケプラは商品名であり、本名はレベチラセタムと呼ばれる。このケプラという薬は10年前から発売されており、ジェネリックも既にあるらしい。

ケプラはベルギーのUCBという製薬会社により開発されている。UCB社の本社はブリュッセルにある。ケプラは部分てんかんに適応があり、ラミクタール、ガバペン、トピナのように他の抗てんかん薬と併用が前提になると思われる。てんかんでは、テグレトールでは効きにくい人たちに恩恵があるかもしれない。

ケプラは今年10月頃、大塚製薬から発売されそうである。ただ、商品名がケプラになるのかどうかは不明である。大塚製薬はどうみてもバカヅキ状態である。もし大塚製薬株が上場されていたら、株価は数倍になっていたと思われる。(参考

さて、トピナ以外の話ばかりしているが、トピナの精神面の効果について触れたい。トピナは精神面に好影響を及ぼしているかどうか微妙に見える薬である。てんかんですら、精神症状を悪化させることがあるのには少しびっくりした。よく考えると、テグレトールもてんかん性精神病に必ずしも合わないケースもあるので当然であろう。

トピナを過食の人に使った場合、特に精神面の悪影響がなく、しかも過食にも効果的な場合、ほとんどのケースで精神症状が改善する。これは2つのことが関係していると思う。

過食の人にトピナが効果的な場合、「食べてもすぐに満腹感が出るので、そんなにたくさんは食べられない」といった話をする。それくらいの効果がある人は65kg程度の人でも60kgを切るのはあっという間である。

毎月ほぼ3~4kgのペースで減量し、3ヶ月後くらいには65kgが54kgくらいにはなる。この頃、

貴方はいったい何kgを目指しているんだ!

などと聞くと、「45~49kgくらいを目指している」などと言うので、ボディーイメージはそこまで障害されていないのかも・・と思ったりする。(古典的な拒食症の人に比べて)

だいたい、こういうタイプの人は、それまで薬物治療も通院も不規則なことが多いので、

トピナを服用し始めると、飲み忘れることがない。

ことも結構大きい(他の向精神薬の服薬状況も改善する)。また、規則的に通院するようになるのも非常に重要である。過去ログで、「通院すればするほど良くなる」と言った話をアップしている。ある患者さんは、トピナを服用し始めて、パニックのようなものがほとんどなくなり、情緒が安定したと言う。(個人的にパニックはてんかん的色彩の強い精神症状だと思う。)

体重が思うように減らなかったのが、そう苦痛もなく順調に減量できていることが、たぶん精神面に好影響を及ぼしているのである。

トピナは精神療法をしているのであった。

参考
貴方が来るのを待っていました
105kgから62kgまで減量した人